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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第74回

「理想の社会」って何それ? スタンダード反社会学な考え方

2010年06月22日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「批判するよりは批判されるような事を書くべきだ」

―― その流れで、スタンダード反社会学講座のスタンスについてお聞きます。反「社会学」ということで、社会学に対するアンチテーゼが根本にあるんですか?

パオロ 社会学全体に対するアンチというわけではないですね。個々の具体的な研究には面白いと思うものもあって、参考にさせていただく場合もあります。ただ、社会論みたいなもの。「社会はこうあるべきだ」「今の社会はここが問題だ」みたいな思想的な要素が入ってくると、途端につまらなくなるんですよ。そういう抽象的な学者の考えみたいなものが、具体的な社会や人間の要素をどんどん薄めていってしまう。それが嫌いというだけですね。

―― 啓蒙、啓発的なにおいですかね。そういったものの中には、自説に都合のいい統計データを作為的に取り出して「だから、私の仮説は正しい!」とやる本もあったります。それに対して「違うよ」と言っているように感じました。

パオロ そうですね。ただ、「誰々という学者がこんな偏ったことを言っていた」とまじめに反論したところで、そんなもん誰も読まないわけですよ。ごく一部の学者や研究者は読むかもしれないけど、面白くないから世間一般には広まらない。むしろ「最近の日本はヤバい」とか、わかりやすく断言しちゃっている本のほうが直感的だから広まりやすいのが現実です。結局、反論や批判というのは、そんなに力がないんじゃないかと思うんですよ。

 だから私は、「つっこみ力」と呼んでいるんですけど、そういう変な本や通説に対し、面白おかしくツッコんで笑いにしようと考えたんです。当然、ツッコまれた学者や研究者の一部からは批判を受けることになりますけど、別にいいんですよ。批判なんて力がないんだから。そういう意味で、サイトの根本には「批判するよりは批判されるような事を書くべきだ」というのがありますね。

筑摩書房のちくま新書から2007年に発行された「つっこみ力」。多くの人に興味を持ってもらうためには、おもしろい演出が必要だと説いている

―― そのツッコミなんですが、単なるちゃかしでなく、反論の根拠になるデータをしっかり調べているところに気合いを感じます。それも、けっこう色んな角度から事実を検証されてますよね。

パオロ ひとつのデータで何かを断じずに色々な方向から検証していくというのは、昔から学問の世界にあるわけですよ。ただ、実践している人がどれだけいるのかというと、そこは疑問なんですよね。

 世間一般で考えたとき、たとえば「最近は子供の犯罪が凶悪化している」という説を聞いたとして、「本当かよ?」と思う人はけっこういると思うんですね。でも、そこから過去の年代別犯罪件数や人口分布、その時代の背景まで調べてる人がどれだけいるかというと、ほとんどいないわけですよ。本職の学者だって自分の専門のところに凝り固まってしまって、他の視点から見ようとしないっていうのはよくあることで。

―― 恣意的でないデータでちゃかそうとすると、相当手間がかかりますよね。だいたいどれくらい調査にあてていますか。

パオロ 本業になってからは、週に何度か図書館に半日こもって、家に帰って執筆するという生活です。大変っちゃ大変ですけど、やっぱり調べるのは楽しいですからね。調べ方というのも、ある程度コツがあって、そういうノウハウがあるのも大きいですけど。

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