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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第25回

初音ミクに見る音楽の世代観 小林オニキスさんが語る

2010年06月19日 12時00分更新

文● 四本淑三

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音楽ビジネスは権利を預けることで成り立っている

―― 派生バージョンの中で、メジャーなものにはフルカワミキさんのカバーという「派生」もあるわけですが、あれはフルカワさん側からのアプローチだったんですか?

小林 そうですね。ご本人やスタッフの方のアンテナの高さがすごかったんですね。もしかしたら、若干早すぎたくらいの。

―― JASRACに登録しないで出すというジャッジは?

小林 僕です。ニコ動だけでやる分にはJASRACで問題ないんですけど、ニコ動の外で二次創作が多かったので。そもそも僕一人の力でああなったわけではないですから。

―― フルカワさん側の理解は?

小林 フルカワさん自身すごく頭のいい人で、ニコニコ動画やボカロの状況について、すべて理解した上で話を持ってきていただきました。だから何の問題もなく。ただレコード会社を移籍して第一弾だったので、そうすることは英断だったと思うんですよ。

―― タイアップが取れないですしね。

小林 そうですね。それは百も承知の上で。プロモーションの手段が減ると言うことは、単純に機会損失になってしまうので。

―― 二次創作を前提としてJASRACに登録しないという方法は、Livetuneから始まったわけですが、最近「JASRAC使うとお金になるよ」というムードもあります。

小林 良いところと悪いところがあるんですよ。良く言われるカラオケの件についても、あれでお金が入らないのは気の毒だと思いますし。

―― 確かにJOYSOUNDのランキングを見ていると、上位はボカロ曲ばっかりですしね。

小林 まず確認しておくと、音楽ビジネスというのは、権利を預けることによって成り立っているので、預けることが当たり前なんですよね。ボカロのコンピCDなんかにしても、原盤権は保有したままという契約を通しているケースが多いはずですが、それは特殊なことなんです。ボーカロイドで音楽の世界に入った人は、それが普通だと思っているかも知れないけど。

カラオケの上位10曲はほとんど初音ミクで埋まる

―― 音楽ビジネスは著作権ビジネスですからね。

小林 あらゆる業務フローがそういう風にでき上がっていますね。そこから外れたことをするのはすごく面倒臭いんですよ。そのせいで「ボーカロイドを放送業務に使うのは止めよう」とか、そんな風に嫌われていくと怖いかな……というような考えが「サイハテ」の時には頭をよぎったりして。

―― 非JASRAC曲をかけるのは面倒という局側の話もあるみたいですが、実際はかかってませんか?

小林 かかってますよね。局の方は普通にJASRACで管理されているものと思ってるので。僕の場合は、NHKの「サラリーマンNEO」でlivetuneさんバージョンの「サイハテ」が使われていたらしいです。使用楽曲のところに僕の名前があったので(公式サイト)。

サラリーマンNEO。確かに 「『サイハテ』 by 小林オニキス」とある

―― 報告はして欲しいと思いますか?

小林 いや、それは端から無理なものと考えて登録しなかったわけで。個人で金銭のやりとりを管理したり、自分で権利の運用をするのは無理があると思います。それに僕は全部自分で作っているのでいいんですが、共作の場合はモメるでしょうね。

―― 作詞・曲が分かれている場合ですね。ところで新しい曲を出すときはどうします? また「サイハテ」みたいなケースが出てきた場合。

小林 うーん。状況を見てみないと分からないです。あれはフルカワミキさんだったからできた話でもあったと思いますし。ただ、いろんな事がこれからちょっとづつ変わっていくんです。権利者はじぶんで勉強して自衛していかないと。うまいこと言われて権利をサラッと持っていかれる状況はあるでしょうね。



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