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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第25回

初音ミクに見る音楽の世代観 小林オニキスさんが語る

2010年06月19日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「じゃあ昭和歌謡だろう」

―― そしてニコニコ動画への投稿第一作が「アンチェインド・メモリー」という、レトロな歌謡曲調の作品でしたよね。

小林 ぼく自身は当時、ニコニコ動画にある他の作品の傾向は見てはいなかったんです。ただインターネットで面白いことをやられている方は、年齢(とし)をとられている方が多い印象だったので。

―― うーん、あの頃はそうでしたかね。

小林 「じゃあ昭和歌謡だろう」と。

―― そこまでの年寄りは少ないと思うんですけど。



小林 まあそれでものの見事にコケました。

―― でも次が「サイハテ」ですよ。

小林 それをきっかけに音楽の仕事の話をいただいて、今に至るという感じですね。

―― あの再生数についてはどう自己分析されてますか?

小林 ニコニコ動画という動画配信サイトに最適化して作った、ということでしょうか。アニメーションを作ったのは初めてなんですが、あれも頑張って描きました。(PV内に)歌詞が出るメディアってあんまりなかったし、ボカロの声が聞きづらい欠点があるので、それは上手く作用したと思います。まあ完全にまぐれだったんですが。

―― あの曲は「死」がテーマという一般的な解釈は当たってますか?

小林 はい。あれは最後に映る扉と、その直後に一瞬暗転するんですが、曲、歌詞、それに準じたイラスト、それがラストに向けてただ突っ走るだけの構成なんです。

PVにはところどころに死をイメージさせる小道具が

―― 僕はつい最近まで死のテーマソングとして皆が聴いている理由が理解できなかったんです。曲だけを聴いていたので分からなかったんですね。

小林 曲だけだと、ただの別れの曲ですよね。あれは音楽作品というより、劇伴曲のつもりで作ったので。ボーカロイドが歌っているというアングルがどういう効果を持つか。そういうことを考えながら作りました。

―― 映像も含めて解釈のためのフレームを用意した作品ということですね?

小林 そうです。

―― 200本以上あると言われている、派生バージョンについては?

小林 単純に嬉しいですね。自分の曲だけではあそこまで行かなかったのは明白なので。気に入っていただいた方全員のおかげです。

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