祝帰還!「はやぶさ」7年50億kmのミッション完全解説【その3】
ついにたどり着いた小惑星イトカワが「ラッコ」だった件について
2010年06月14日 12時00分更新
2年20億kmの旅の果て「イトカワ」に接近――2005年夏
2005年夏、いよいよイトカワが迫ってきた。7月~8月にかけては、搭載機器のひとつ「星姿勢計(スタートラッカ)」を使い、天体の画像をもとに姿勢を修正する動作にも成功。言うまでもなく、こうしたミッションのすべての段階が、先進的な試みだった。
7月末には、3基の姿勢制御装置(リアクションホイール)のうち、X軸の一基が故障する。このときは、残り2基で機能は維持できていた。
8月末、「はやぶさ」のイオンエンジンは往路の予定動作時間を達成。イトカワへ4800kmの位置へ迫る。9月からは本格的な理学観測もスタートし、プロジェクトメンバーは徐々に大きくなるイトカワの画像に見入ることとなる。
イトカワの第一印象は?
吉川 ちっちゃい点だったイトカワが、だんだん大きくなってきたときが最初の興奮でしたね。徐々に細かいところが見えてきて、じゃあどこに着陸しようかとか、本当に議論だらけでした。
藤原 実物を見たとき、僕が一番びっくりしたのは、「小さいくせに丸っこい形してる」ということ。それから、密度が低い。1.9g/cm3(立方センチメートル)かな。普通の石なら2.5~3.6g/cm3くらい。また、クレーターは見かけも少ないし、その縁もはっきりしていない。そのあたりが予想とちょっと違ったところでありました。
齋藤 イトカワのゲートポジション到着が9月12日で、その数日前からだんだん大きく見えてきたわけですけど、私の第一印象は「箱庭」。小さいところにさまざまなバリエーションがあって、見ていて飽きなかったです。小惑星にあれほど複雑な地形があるなんて想像外でした。非常に面白かったです。
「はやぶさ」の目が捕らえたイトカワ
そして9月10日、イトカワまで30kmの距離から撮影した画像。後日、「ラッコ」の愛称で親しまれることとなる一枚だった。
ラッコの落書きには意外な効用が
藤原 「Science」の論文には、ちゃんとSea otter、ラッコって書きました。これはお遊び一辺倒というわけじゃなくて、場所を示す場合に便利なんですよね。「ちょうど首のあたりに~」といった按配で説明できる。
齋藤 目鼻を付けたバージョンを作ったのは誰だったかなあ。メーカーの方、それとも、今は会津大学にいる平田君かな。誰ともなしにラッコって言い出したんですよねえ。ラッコだったらヒゲ書いちゃえ、おなかの上に貝置いちゃえって。
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