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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第55回

ALi/ULiチップセットの歴史 その1

今は亡き? ALi/ULiのチップセットビジネスを振り返る

2010年06月14日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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ALiチップセットロードマップ

Socket 7/Super 7時代までののALiチップセットロードマップ

Socket 5のALADDiN IIIで名を上げるALi

 ALi/ULiチップセットのロードマップであるが、なにせULiがNVIDIAに買収されてしまい、すでに同社のホームページも消えてしまったのでほとんど資料がない(Archive.orgには残ってるのが幸いだ)。どうにかまともな資料があるのは「FINALi」以降といった感じなので、初期の製品にかんしてはざっと流す程度になるのはご容赦いただきたい。

 ALiが最初にリリースしたチップセットは、1987年の「M1101」である。これはPC/XT互換マシンをワンチップで構成できる、というものである。その翌年には、9チップ構成でPS/2互換マシンを構成するチップセットをリリースしている。恐らくMCAバス周りの構成に、これだけの数のチップが必要だったのではないか? と思われる。

 PS/2対応製品はどうもこれで終わりのようで、以後はPC/AT互換にシフトしたようだ。1990年か1991年に、まず80286をベースにしたAT互換機のチップセットをリリースし、続いて1991年には80386SXに対応した「M1217」がリリースされる。さらに1992年には486DX/SXに対応した「M1492+M1431」、1994年にはPCIバスに対応した486用チップセット「M1439+M1445」がリリースされる。

 これらに続き、1995年2月にリリースされたのが、「FINALi」なるシリーズ名を持つ「M1489+M1478」である。このチップセットでは、インテルの486DXやIntel DX2/DX4、TI版の486DX2/DX4、Cyrix DX2/DX4/5x86、AMD DX2/DX4/5x86などのサポートが掲げられていた。

 さて、ここからがSocket 5/7の世代となる。日付が確認できなかったが、恐らく1996年中にまずリリースされたのが「ALADDiN III」である。基本的な構成はFINALiとよく似ているが、Socket 5対応となるとともに、一部のグラフィックスカード用にUMAの機能を搭載していた。主記憶の一部(最大4MB)を、PCIバス経由でグラフィックスカードのメモリー専用に割り当てる、という機能でVESAの仕様を先取りしたものだった。しかし、残念ながらこれを採用したグラフィックスカードはほとんどないままに消える。

 このALADDiN-IIIは国内パソコンメーカーとか、変わったところではIBMの「ThinkPad 310」にも採用されていたりしたりして、案外広く利用された製品である。出荷数量という意味では、VIA TechnologiesやSiSにはついに及ばず万年3位のポジションにあったALiであるが、このALADDiN IIIによって日本国内における知名度はかなり上がったと記憶している。ちなみに「なぜIIIで始まったのか?」(言い換えればALADDiN IとかIIがあったのか?)に関しては、今回調べた限りでは確認できなかった。

 これに続き、1997年4月に「ALADDiN IV」が出荷される。こちらはALADDiN IIIの機能強化型で、当時の資料を読むとパフォーマンス最適化として「Deep Buffer」(ノースブリッジの内部バッファを深くすることで、同時処理性能を引き上げる)とか「Concurrent PCI」といった項目が挙がっており、見かけの機能よりも内部の性能向上に特化したモデルのようだ。

 サウスブリッジは当初、「M1533」が利用された(M1531と同じタイミングで出荷された)。その約半年後に機能を若干向上させた「M1543」がリリースされたので、これとノースブリッジの「M1531」を組み合わせた構成が「ALADDiN IV+」として出荷される。型番からわかるとおり、M1543は本来次に登場する「M1541」と対になって出荷されるはずのものだったが、こちらがやや先行した形だ。

 見かけ上の機能は、USB 1.1が3ポートになり、ATA33がATA66対応になったこと、それとSuper I/Oの機能を統合した程度でしかない。内部的には、こちらもDeep Bufferの搭載のほか、省電力化が図られている。ただ残念なことに、このM1543は若干不具合などの問題もあった。こうした問題を解決したのは1998年7月に量産出荷が始まった「M1543C」となる。

 ノースブリッジの方はというと、1998年に入って100MHz FSBとAGP 2Xに対応した「M1541」がリリースされた。これにより、「AMD K6」などのSuper 7対応CPUにも完全対応した形だ。このM1541と前述のM1543Cを組み合わせたのが「ALADDiN V」となる。しかし、M1541が1998年4月に量産を開始したのに対し、M1543Cは7月から量産となった。

 そのため、当初はM1543CのES(Engineering Sample)品が搭載されたり、M1543が利用されたケースもあったようだ。この翌年となる1999年3月に、Socket 7向けとしては最終の「ALADDiN V+」がリリースされる。ノースブリッジは引き続きM1541のままだが、サウスブリッジがM1535Dに更新されたものである。

 M1535Dは、この後も広く利用された定番サウスブリッジであるが、まずはモバイル向けの「M1535」、続いてデスクトップ向けの「M1535D」がリリースされた。主な相違点は、ATA66への対応とサウンドを搭載したことだが、このサウンドがCreative Labsのサウンドカード「SoundBlaster 16」互換というところがちょっと独特である。もちろん当時のWindowsで一般的なAC'97 Audioとしても動作した。

 ALiのロードマップによれば、この後さらにサウスブリッジに「M1563」を使った構成の計画も(1999年当時は)存在した。しかしこの時期から、Socket 7/Super 7のマーケットは急速に縮小してゆく。インテルはとっくにPentium II/IIIに移行していたし、AMDもAthlonを1997年6月にリリースする。まだ当時はAMDだけでなく、CyrixやIDTも一応Socket 7対応CPUをリリースしていたが、どちらかというとバリューセグメント向けであり、将来性は見込めない。

 こうしたこともあり、M1563を組み合わせる計画はキャンセルとなり、またM1563自身も構成が変わることになった。次回はこのあたりの話から始めたい。

今回のまとめ

・AcerのICデザイン部門から独立して始まったALi。2002年にはチップセット部門をULiとして分社化する。ULiはその後NVIDIAに買収され、ALi自身もMediaTekに事実上買収されており、独立したチップセットメーカーとしては残っていない。

・ALiのチップセットビジネスの歴史は古く、1987年にさかのぼる。Socket 5世代の「ALADDiN III」は、日本のパソコンメーカーにも採用されるなど、台湾御三家の一角として知名度を高めた。

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