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マイクロソフトのWeb開発ツールで中身も見た目もクールに 第5回

ダメダメWebアプリからの脱却を目指せ

PHP on Windowsで速攻Web開発を実現

2010年06月17日 09時00分更新

文● 小野雄太郎、TECH.ASCII.jp イラスト●野崎昌子

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Webアプリケーションの開発環境に自由を

 PHPの開発環境はどうだろう。現状ではWindows上にEclipse PDTをインストールして、PHPアプリケーションのコードを書いている方も多いのではないだろうか。しかし、クライアントオペレーティングシステムにも対応しているWeb PIを利用すれば、開発環境のためのPHPインストールも簡単に行なうことができるのだ。

 Web PIを使ってWebアプリケーションの開発に必要な実行環境を用意すれば、アプリケーションのコードのデバッグも手元のPCで簡単に行なうことができる。クライアントオペレーティングシステムを使えるということは、ノートPCにもPHPの実行環境を簡単にインストール可能だということだ。Web PIで簡単にPHP開発環境をノートPCに用意して、デスクトップでもモバイル環境でもPHPアプリケーションの開発やテストを行なえるようになる。難しいインストールと設定をすべてWeb PIにまかせ、そのままPHPアプリケーションの実行環境を手に入れることが可能なのだ。

PHPをさらに加速させる
キャッシュエクステンション

 PHPをWindows上のIISで実行するメリットは、十分にご理解いただけたと思う。しかし、実際にPHP WebアプリケーションをIISで実行して、期待に応えてくれるパフォーマンスが発揮されるのかどうかは、やはり多くの方が心配しているのではないかと思う。多くの実績があるLAMPでのチューニング経験が使えるのかなど、アクセス数の多いWebアプリケーションを展開する前には、心配が尽きない。

 こうしたパフォーマンスに関する懸念を払拭し、IISでのPHPの実行速度をさらに加速させるアクセラレータとして、Windows Cache Extension for PHPというツールが用意されている。これはその名のとおり、PHPの性能をさらに向上させるためのアクセラレータであり、さまざまな仕組みでキャッシュを有効利用して、PHPアプリケーションを変更することなく実行速度を高速化させることができるのである。

IISでのPHPの実行速度を加速させるWindows Cache Extension for PHP

 仕組みとしては、PHPの実行時に利用されるバイトコードやファイルなどをこのアクセラレータがキャッシュし、そのPHPアプリケーションによるアクセス時には、自動的にキャッシュが参照されるようにシステム側が構成されることで、実行速度を向上させるようになっている。

 また、このWindows Cache Extension for PHPも、Web PIで統合インストールされるようになっており、すぐにこのアクセラレータの恩恵に預かることができる。

クラウド時代も見据えたプラットフォーム選択

 今までは自らのサイトでWebサーバーを運用するのがこれまでの通例であったが、これからは「クラウド」というプラットフォームをうまく利用していくことも大変重要だ。ではPHPで作ったWebアプリケーションはクラウド時代に対応できるのだろうか。

 これに関して、マイクロソフトのWebテクノロジーではWindows AzureでPHPを使えるようにして答えている。Windows AzureでもfastCGIが有効になっており、PHPアプリケーションを高速に実行することが可能である。Windows Azure SDKを使うことで、ローカルマシン上にクラウド環境と同じように動作するテスト環境も準備できる。またWindows Azureが提供するクラウド上のリソースに、PHPからアクセスするためのツールとしてPHP SDK for Windows Azureも提供されている。既存のPHPアプリケーションを動かす基盤も、クラウドアプリケーションとしてPHPアプリケーションを構築する基盤も、どちらも用意されているのである。

Windows Azure SDK for PHPのサイト

 そしていったんPHPアプリケーションをWindows Azure上に展開すれば、クラウドコンピューティングのメリットである負荷にあわせてインスタンス数を動的に増やし、スケールアウトさせることが可能になる。キャンペーンサイトなど、一時的に負荷が大きく変動するようなサイトをクラウド上で提供すれば、必要に応じた規模に随時変更してリクエストに対応することができるのだ。

今回のポイント

  • ・Web PIでサーバーも開発環境も簡単に用意ができる
  • ・アプリケーションプールやキャッシュエクステンションで、旧来のWebアプリケーションから新しいPHPアプリケーションまで、1台のIISで幅広く対応することができる
  • ・オンプレミスもクラウドも、ニーズに合わせて選択可能

 次回はマイクロソフトのWebテクノロジーを使いこなす企業に話を伺いたい。

すべらないWebアプリ開発はASP.NETから!by 坂本

ということで、ASP.NETやVisual Studio 2010に興味を持ったユーザーは、さっそく以下のドキュメントを一読してみよう。最新のWebアプリケーション開発のノウハウや、マイクロソフトのソフトウェア開発のネタがギッチリ詰まっているぞ。

Microsoft Web 開発 ガイドライン ~ ASP.NET プログラミング エッセンシャル~

http://msdn.microsoft.com/ja-jp/asp.net/ff602016.aspx

ASP.NET 開発者向け技術情報

http://msdn.microsoft.com/ja-jp/asp.net/default.aspx

PHP on IIS

http://technet.microsoft.com/ja-jp/iis/ee794964.aspx

IIS TechCenter

http://technet.microsoft.com/ja-jp/iis/default.aspx#tab=1

筆者紹介:小野雄太郎

慶應義塾大学SFC研究所 所員(訪問) Microsoft MVP for Data Center Management - Management Infrastructure, Jan 2010 - Dec 2010.


慶應義塾大学SFC研究所にて、Agri-Informaticsという農業とIT技術を組み合わせたプラットフォームの研究を行っている。またフリーのエンジニアとして、レイヤー2からレイヤー7までの幅広く対応しながら、Microsoft Technologyを中心としたエンタープライズ環境を得意として、活動している。そのほか、IIS User GroupやVisual Studio User Group の運営にも関わり、コミュニティでの講演なども数多く行っており、米国Microsoft社より Microsoft Most Valuable Professional アワードも受賞している。


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