非実在青少年は、なぜ問題なのか?

文●高橋暁子

2010年06月10日 09時00分

 東京都青少年健全育成条例の改正が、「非実在青少年」という言葉と共に、ネットやメディア界隈を賑わしている。国ではなく都の条例改正がこれだけ注目されるのはなぜか。全3回にわたってその理由を解説していきたい。

「非実在青少年」とは?

 条例では「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」を「非実在青少年」としている。年齢設定が18歳未満である少年、少女のキャラクターの意であり、東京都の造語。


非実在青少年が話題になった経緯

改正案の内容の問題点を藤本由香里氏がTwitter上で広く訴えたことが、ネットを中心に反対の機運が高まるきっかけとなった

 そもそも、今年の2月24日に都議会が始まり、「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」が提出された頃はほとんど話題にならず、大手メディアでもまったく触れられていなかった。

 しかし、3月7日に明治大学国際日本学科准教授の藤本由香里氏がTwitter経由で、この話題を取り上げた自身のmixi日記(【重要】都条例「非実在青少年」の規制について)を公開したことで、問題の重要性が広く知られるところとなった。

 藤本氏のツイートはTwitterでRTされて広がり、「非実在青少年」という耳慣れない単語のインパクトも手伝って、ネットでも頻繁に取り上げられるようになった。そして永井豪、竹宮惠子ら著名な漫画家と弁護士などが改正案に反対する記者会見を開いた3月15日からはメディアでも報道されるようになり、日本出版労働連合会など各団体が意見書を提出するなど反対派の活動が盛り上がった。その結果、3月30日には都議会本会議で継続審議が決定、改正案の採決は6月の定例議会に先送りとなった。

パブコメの情報開示請求を行なった西沢けいた都議は、自身のホームページで、「必要な情報すら見せないで審議をしろという方がおかしい。都合の悪い情報を隠していると思われても仕方がないと私は考えています」とコメント

 その後も改正反対の活動は続き、民主党の西沢けいた都議は青少年問題協議会の答申案に対するパブリックコメント(パブコメ)を提出するよう情報公開請求していたが、都側は閲覧を拒否。開示日は結局、条例で定められている期限めいっぱいの60日間延長された。

 開示されたパブコメをチェックしたところ、全1581件中、答申案に賛成とみられる意見はわずか16件に過ぎず、後はほとんどが反対意見ばかりであり、パブコメの意見が改正案にまったく反映されていないことが判明。さらに開示されたパブコメには、個人情報部分のみとは判断しづらいほど膨大な黒塗りが施されていた。


行き過ぎた自主規制には前例が存在

 改正案がそのまま通った場合、青少年の性を肯定的に描いたさまざまな作品のすべてが規制対象となる可能性が出てしまう。これは決して杞憂ではない。

 1999年、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、通称「児童ポルノ法」が施行され、児童ポルノの販売が禁止された。その結果、紀伊國屋書店から井上雄彦作『バガボンド』や三浦建太郎作『ベルセルク』、小山ゆう作『あずみ』などの漫画が、性表現を含むという理由で一時的に撤去されている。

 今回も、同様の行き過ぎた自主規制により店頭から消える作品が現れるだけでなく、出版社も性表現を含む作品は出版を見合わせ、結果、作家もそのような作品を作れなくなる可能性が高い。つまりは、さまざまな表現やコンテンツ自体が消えたり、作れなくなってしまうかもしれないというわけだ。

 先送りにされた6月の再審議まであとわずか。本稿では「東京都青少年健全育成条例改正問題」について、その問題点と動向を追う。

6月の再審議を控え、関連報道もちょくちょく見かけるようになった(画像はTOKYO MXのYouTubeチャンネルから)

1.基礎知識

Q:東京都青少年健全育成条例って何?

A:東京都が18歳未満の青少年保護育成とその環境整備を目的として公布した条例。昭和39年に制定された。正式名称は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」。

 青少年の環境の整備を助長するとともに、青少年の福祉を阻害する恐れのある行為を防止し、青少年の健全な育成を図ることを目的としている。優良図書類等の推奨および表彰、有害図書類や有害玩具類の規制、青少年とのみだらな性交や性交類似行為の禁止、青少年の保護に関する都や保護者の責務などが規定されている。

 2005年に一度改正され、インターネット対策として、事業者・保護者らにフィルタリングソフトの利用を求める規定などが盛り込まれている。


Q:条例のどの部分が改正されるの?

A:条例案で改正されているポイントは複数ある。大きいのは、「非実在青少年」規制と児童ポルノ問題だろう。しかし、あまり注目はされていないが、それ以外の部分にも評価の分かれる部分が非常に多く、ともに検討していく必要がある。具体的には以下の箇所だ。

○携帯電話端末等の推奨(第五条の二)…未成年が利用する携帯電話端末等の推奨制度

○図書類等の販売等及び興業の自主規制(第七条)、不健全な図書類等の指定(第八条二)、表示図書類の販売等の制限(第九条)…青少年に対する悪書の販売等の規制

 ※そのうち「非実在青少年」の規制は第七条二、第九条の二

○児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた気運の醸成及び環境の整備(第三章の三)…児童ポルノ抑制と単純所持の規制

 ※そのうち「児童ポルノ単純所持の規制」は第十八条の六の四

○インターネット利用環境の整備(第三章の四)…情報教育の内容・方法の基準規定、フィルタリング解除手続きの厳格化、フィルタリングの水準に関する規定の創設、公的機関に対する問題情報の提供要請等

改正案の原文などは東京都青少年・治安対策本部の「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案について」(http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/08_jyoureikaisei.html)からダウンロードできる

Q:どのポイントが問題とされているの?

A:改正されるポイントごとに、問題点を見ていこう。

○携帯電話端末等の推奨(第五条の二)…未成年が利用する携帯電話端末等の推奨制度

→平成20年6月18日に、正式名称「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」、通称「青少年ネット規制法」または「青少年インターネット環境整備法」が、青少年が安全に安心してインターネットを利用できることを目的として制定されている。そこでは、保護者の自由な意志による選択が可能になっているが、都の条例改正案は保護者の意志を制限している。

行政が特定の携帯電話を推奨することは、表現や経済の自由、携帯電話事業者の営業の自由に対する介入・制約に当たる。


○インターネット利用環境の整備(第三章の四)…情報教育の内容・方法の基準規定、フィルタリング解除手続きの厳格化、フィルタリングの水準に関する規定の創設、公的機関に対する問題情報の提供要請等

→青少年インターネット環境整備法の第3条では、「民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重する」と規定されている。フィルタリングに関しても、附帯決議に、「事業者等が行う有害情報の判断、フィルタリングの基準設定等に干渉することがないようにすること」と規定してあり、条例改正案は法の趣旨に反している。

→青少年インターネット環境整備法では、保護者の自由な意志による選択が可能になっているが、一方都の条例改正案は保護者の意志を制限している。

→フィルタリングの解除制限は、青少年の表現の自由、知る権利、自己決定権、青少年の成長発達権、保護者の監督権に反する。

→行政が自主規制機関のフィルタリングの基準に介入することは、青少年の表現の自由、知る権利、自己決定権、成長発達権を侵害し、憲法上保障されている表現や営業の自由を制約する。

→答申から、EMA(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)などの民間団体の活動を否定するととらえられかねない内容であり、民間団体の活動を後退させかねない。


 次の2点に関しては、次ページで詳しく解説する。

○図書類等の販売等及び興業の自主規制(第七条)、不健全な図書類等の指定(第八条二)、表示図書類の販売等の制限(第九条)…青少年に対する悪書の販売等の規制

 ※そのうち「非実在青少年」の規制は第七条二、第九条の二

第七条二

 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。

第九条の二

 第八条第一項第二号の東京都規則で定める基準 非実在青少年を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。


○児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた気運の醸成及び環境の整備(第三章の三)…児童ポルノ抑制と単純所持の規制

※そのうち「児童ポルノ単純所持の規制」は第十八条の六の四

第十八条の六の四(児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた都民等の責務)

 何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。

2.問題点

 では、前ページの第七条二、第九条の二にある「非実在青少年」、そして第十八条の六の四の「児童ポルノ単純所持禁止」が反対派から問題とされる理由は何だろうか。

規制する根拠が曖昧

→児童ポルノ、児童ポルノ漫画と性犯罪等の関係を示すデータが示されていず、規制の効果が不明。

→近年、青少年の性犯罪及び犯罪被害は減少している。


効果が不明確

→明らかな犯罪や不健全図書などに対しては既に規制・処罰する法律があり、新たに条例を改正する意味がない。


反対意見を無視した決定

→東京都青少年問題協議会メンバーは規制賛成派ばかりで占められ、規制反対派の意見を聞かず、十分話し合わずに議論が進められた。

→東京都青少年問題協議会答申素案に寄せられたパブリックコメント1600通あまりのうち、規制賛成はわずか16通ほどであり、反対意見が多いにも関わらず意見が反映されていない。


表現の自由、知る権利を侵害する

→「まん延抑止に向けた気運の醸成及び環境の整備に努める」とは、青少年のみならず成人に対しても規制するものであり、成人の知る権利を侵害する。

→不健全とされる漫画等は現行の法律(第八条第一項の「著しく性的感情を刺激する」など)で十分に規制を受けており、さらに規制が入ることで、コンテンツ産業やクリエイターなどが萎縮することが考えられる。

ジャーナリスト時代から青少年問題を追い続けてきた元衆議院議員の保坂展人氏も条例改正案の危険性を訴える


国の法律などに違反する恐れ

→憲法の保障する表現の自由、通信の秘密を侵害する恐れがある。都が条例で規制するのは違憲の可能性がある。

→国が定めた青少年インターネット環境整備法と齟齬する部分がある。

→児童ポルノの単純所持については国でも議論中。


影響の大きさ

→出版社やメディア、コンテンツ業者などは、過去の例から見ても条例が改正されると自粛することが考えられる(前述の紀伊国屋で漫画本が撤去された事例など)。ほとんどのメディアが東京に集中していることを考えると、規制の影響は都だけに止まらない。

→東京で条例が成立すると他の自治体も追随する可能性が高い(実際、条例改正の動きを受けて大阪府は同様の規制を検討した結果、BL雑誌の規制を決定した)。


規制の範囲が曖昧かつ、恣意的に規制可能であること

→「非実在青少年」は18歳未満のキャラクターすべてに当てはまり、「性交類似行為」の定義が曖昧かつ18際未満の定義も曖昧なため、いくらでも恣意的に表現を規制される可能性が高い。

 ※改正案の原文「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」


条文が拡大解釈が可能なものとなっている

→法で重要なのは条文だが、東京都青少年・治安対策本部からの説明は条文に書いていないことばかりであり、解釈は担当者によって変わる可能性があるため、いくらでも恣意的に解釈しうる。都の担当者と反対派の弁護士で解釈が大きく食い違ってしまうような条文は、そもそも条文として欠陥品であるといえる。


 つまり――

■規制する根拠が曖昧であり効果も明らかではない

■一般市民等の反対意見を無視した決定

■表現の自由に対する重大な侵害

■青少年だけではなく大人の思想・表現・言論・出版等の活動を制約する

■コンテンツ業界、クリエイターなどの表現や活動を萎縮させる

■国の法律に反しており、違憲の可能性が高い

■規制の影響が東京都では止まらない

■規制の範囲が曖昧であり、恣意的に規制可能

 以上が問題とされているわけだ。

 規制反対派だからといって、児童ポルノなどを擁護しているわけでは決してない。児童ポルノ規制や非実在青少年の名の下に、表現の自由や知る自由などが制限されることに対して異議を唱えているというわけなのだ。

 反対派が声を上げ始めてから、東京都青少年・治安対策本部から「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案 質問回答集」が出た。

 しかし、そもそも質問回答集には何の拘束力もないため意味がない。その上、担当者の説明は条文にないことばかりであり、説明が条文と食い違っていることも多い(「明確に描写」「悪質な」「不当に誇張・賛美」などの限定が条文には存在しない)ことを考えると、この説明自体が条文が恣意的に解釈しうることの証明となってしまっていると言えるだろう。

結果的に、東京都青少年・治安対策本部が発表した質問回答集は、改正案の条文が恣意的に解釈しうることのわかりやすい証明となっている


Q:改正を阻止するために今からできることは?

A:都議会議員に規制反対という意見を明記した手紙やメールなどを実名で送付し、意見を表明し続けること(都議会公式サイト内の議員リスト)。なお、業務妨害になるのでFAXの利用は避けたい。

 また、山口貴士弁護士による東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案に反対する請願署名も行なわれている。

山口貴士弁護士のブログから署名用紙のダウンロードが可能

当然のことながら都知事、副都知事共に改正案賛成派だ

3.賛成派、反対派

 今回の都条例改正に賛否を表明している団体・個人をまとめてみた。賛成派は都議会周りが中核、反対派はコンテンツ産業とクリエイターが主体とみてよいだろう。


賛成派

石原慎太郎都知事:3月2日の代表質問において、「児童ポルノや子どもへの強姦などを描いた漫画の蔓延を、見て楽しむだけなら個人の自由である、いかなる内容であっても表現の自由であると許容することは、これらの自由の履き違えでまさにありまして、青少年を守り育てる大人としての責任と自覚を欠いた未成熟な人間の自己保身にほかならない」と答弁。

猪瀬直樹副知事:自身のブログにて、「エロ規制はあったが、ロリ規制がなかった」という題で、「エロ規制はあったが、ロリ規制がなかった。不健全図書(成人向け図書の棚に置く)に指定されてきたのはエロ規制で、ロリ規制ではなない。新たにロリ規制をもうけただけの話。その場合、近親相姦や強姦などを肯定的に繰り返すものに限定して不健全図書に指定され、書店の棚を18歳未満でないところにする。それだけのこと」と記述している。

社団法人東京都小学校PTA協議会:青少年健全育成条例改正案の成立に関する緊急要望書

 そのほか、自民党と公明党からは早急に改正案を成立させるべきとの意見が出た一方、民主党と生活者ネットワークが継続審議を求め、共産党は反対の立場を貫いたという。


反対派

日本ペンクラブ:声明「東京都青少年条例改定による表現規制強化に反対する」

京都精華大学マンガ学部・国際マンガ研究センター:東京都青少年健全育成条例改正案に関する意見書について

EMA(一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構):東京都の青少年健全育成条例改正案に対する意見

MIAU(一般社団法人インターネットユーザー協会):「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案についての意見書

JAniCA(日本アニメーター演出協会):東京都の青少年健全育成条例改正案に対する意見

社団法人日本図書館協会:「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」について(要請)

東京工芸大学マンガ学科教員一同:東京都青少年健全育成条例案に対する東京工芸大学マンガ学科教員一同の意見書

出版労連(日本出版労働組合連合会):青少年健全育成条例の改定案に反対する要請書

流通対策協議会:東京都青少年育成条例の改定に反対する声明

出版倫理協議会(日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会で構成):「東京都青少年条例改正案」に対する緊急反対表明

全国同人誌即売会連絡会:「東京都青少年健全育成条例」の改定案について

ネットビジネスイノベーション研究コンソーシアム(ディー・エヌ・エー、グーグル、マイクロソフト、ヤフー、楽天などが参加):「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正に関する意見

日本新聞協会:「青少年のインターネット利用制限の動き」に関する日本新聞協会メディア開発委員会の意見

東京弁護士会:東京都青少年健全育成条例「改正」案についての意見

そのほか、東京都地域婦人団体連盟、電気通信事業者協会、日本インターネットプロバイダー協会、モバイル・コンテンツ・フォーラム、コミック10社会(秋田書店・角川書店・講談社・集英社・小学館・少年画報社・新潮社・白泉社・双葉社・リイド社の10社によって構成)などの諸団体、そして藤子不二雄A、さいとう・たかを、あだち充、高橋留美子、萩尾望都、本宮ひろ志、ちばてつや、かわぐちかいじ、弘兼憲史などをはじめとする漫画家からも反対の声が挙がった。太田出版が集めたクリエイターの反対署名は920名に上っている。

4.年表

 最後に、今回の都条例改正に関しての経緯を簡単な年表にしてみた。

2008年

12月24日 第28期東京都青少年問題協議会第一回総会開催


2009年

11月24日 「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について 答申(素案)」公開

11月26日~12月10日 答申素案に対するパブリックコメント募集。「『第28期東京都青少年問題協議会答申素案及び都民意見の募集について』の結果概要」によると、パブコメは1581通寄せられた

12月10日 日本書籍出版協会、日本雑誌協会連名で「第28期東京都青少年問題協議会答申素案『メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について』への意見」公開


2010年

1月14日 「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について 答申」が出される

2月24日 「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」が都議会に提出される

3月10日 全国同人誌即売会連絡会「『東京都青少年健全育成条例』の改定案について」公表

3月12日 東京都地域婦人団体連盟(東京地婦連)、東京大学大学院 教授 長谷部恭男氏、ネット教育アナリストの尾花紀子氏、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)、ECネットワーク、電気通信事業者協会(TCA)、テレコムサービス協会(テレサ協)、日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)、CANVASが条例改正案に対し反対表明

3月12日 日本出版労働連合会「東京都の青少年健全育成条例の改訂に反対する要請」公開/ネットビジネスイノベーション研究コンソーシアム「『東京都青少年の健全な育成に関する条例』の改正に関する反対意見」公開

3月15日 東京都議会内で、藤本由香里(明治大学准教授)、ちばてつや、永井豪、竹宮惠子、里中満智子、山口貴士(弁護士)、日本マンガ学会会長呉智英(評論家)等、漫画家と弁護士など専門家らが改正案に反対する記者会見を開く/楽天が反対意見表明

3月15日の記者会見はUSTREAMでの中継も行なわれた。アーカイブはこちら→http://www.ustream.tv/recorded/5465844

3月16日 京都精華大学、国際マンガ研究センターがそれぞれ反対表明

3月17日 日本図書館協会、日本アニメーター・演出家協会、出版倫理協議会、白泉社が反対表明/「東京都青少年健全育成条例改正案について」とされる、都議会で審議中の東京都青少年健全育成条例改正案に係る様々な指摘に対する都の見解が出される

3月18日 日本ペンクラブ反対表明/改正案が都議会総務委で審議。19日に同委で採決、30日に本会議で採決が行なわれる予定とされた

3月19日 都議会総務委員会で継続審議が決定。最大会派の民主党などが「議論が十分ではない」と継続審議を求め、改正案に賛成する自民・公明も同意、改正案は6月の定例議会に先送りとなった/大阪府の橋下徹知事、東京都青少年健全育成条例の動きを受け、府でも同様の対応を検討する考えを明らかに

3月30日 都議会本会議での採決により、継続審議を全会一致で可決

4月16日 子供に対する強姦シーン等を描いた漫画を子供に見せない・売らないための条例改正とする「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案のポイント」が出された

4月26日 青少年健全育成条例の改正案について掲載されている「都への提言、要望等の状況」月例報告(3月分)発表。都青少年健全育成条例に関することは1153件/東京都青少年健全育成条例改正案のうち特に問い合わせが多かった子供に対する強姦シーン等を描いた漫画などを子供に売らない取組について、『「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案 質問回答集」の作成について』という質問回答集公開

4月26日 大阪府は、大阪府青少年健全育成条例第13条第1項の規定により、ボーイズラブ(BL)を扱った漫画が掲載された8雑誌を含む計11誌を有害図書に指定し、18歳未満への販売や閲覧を禁止することを決定

4月27日 東京都青少年の健全な育成に関する条例新旧対照表公開

5月25日 東京都議会民主党は東京都青少年健全育成条例改正案に反対する方針を決定

6月の定例議会で再審議の予定


 以上、駆け足となってしまったが、東京都青少年健全育成条例の論点をひととおり紹介できたと思う。デジタル化とブロードバンド化によって一億総クリエイター時代とも言われる昨今、今回の盛り上がりは表現を考える上で貴重な機会だといえるのではないだろうか。

 次回は、『非実在青少年読本』を緊急出版した徳間書店の「COMICリュウ」編集長 大野修一氏に、出版社という当事者の立場から条例改正案についてお話を伺う。


■関連サイト