ベータは取れたが、これで終わりではない
── 正式版となったBaidu Typeですが、やはりBaiduの日本市場に向けた戦略の中で、このツールがどういう位置付けとなるかが気になります。
岡部 「Baiduはサービスを3つの柱で捉えています。1つは“検索”、そして“ツール”、最後がそれらの利用を促進する“コミュニケーション”です。
今回、Baidu Typeは“ツール”の分野の大きな一歩として最優先で取り組んできました。検索の機能向上はもちろんですが、現在「コミュニケーション」についても鋭意開発を進めており、近々ご紹介することができるはずです。
検索サービスとしてのBaiduユーザーの検索クエリーを分析すると、芸能人の名前などエンターテインメント関連の検索をする方が多い傾向です。Baidu Typeもカジュアルユース中心という特徴がありますので、うまく相乗効果を生み出していきたいと考えています。
── Google 日本語入力もウェブのリソースを活用していますが、現在その多くはソーシャルなところから生まれています。であれば、確かに将来的にはIMEを通じたコミュニケーションという逆のアプローチもあり得るかも知れませんね。
岡部 アドオンの強化も図っていきますが、確かにほかのサービスとの連携というのも重要だと考えています。ユーザーのご意見も取り入れながら、更なる発展を図っていきたいですね。
IMEの更なる進化を示せるか?
中国最大の地位を誇るBaiduも日本ではチャレンジャーだ。
現在、電子書籍の分野でもたびたび指摘されるように、日本語の独自性は海外サービスの日本進出を阻む大きな要因にもなってきた。グーグルや百度といった海外大手が日本語入力に取り組む背景には、その障壁を何とか乗り越えたいという思いの表れと言える。
日本語と、日本人ユーザーを知ることで、ひいては日本市場を知る、といった狙いがそこには垣間見える。
日本語変換の歴史を築いてきたジャストシステムのATOK、世界最大のウェブサービス企業Googleが提供するGoogle 日本語入力、それぞれ強力なプレイヤーだが、その歴史の長さや抱えるユーザーボリュームゆえ逆に手を出しにくい領域もあるはずだ。
Baidu Typeがこれからも進化を続けるのであれば、ATOKやGoogle 日本語入力では実現できなかった思い切った機能(筆者はそれがコミュニケーションと関連するものであることを期待するが)が追加されるかも知れない。
ウェブサービスのソーシャル化がさらに進み、iPadのヒットに象徴されるようにコンピューティング手段も拡がるなか、Baidu TypeなどIMEサービスの動向にも注目しておく必要がありそうだ。
著者紹介――まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+Gmail」など。公式サイト 松本淳PM事務所[ampm]