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操作の手間を省くと実用度は雲泥の差になる

生みの親が語るNetWalkerの正体

2010年06月07日 06時00分更新

文● 古田雄介

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開拓者のZ1に続くのは、可能性を広げるT1

 Z1の地ならしのあと、満を持してT1が登場した。T1は、12種類の辞書コンテンツと約100冊の電子ブックを標準で搭載しており、最初から多様な使い方ができるようにデザインされている。とくに辞書コンテンツは、T1のセールスポイントと密接に関係している。「T1の一番の特徴は手書きできることです。インターネットや社内資料で、読み方が分からない漢字が出てきても、その漢字を手書きして辞書が引けるんです。PDFにも上から書き込んですぐ返信できますし、そういうプラスアルファの具体的な使い方を提案していこうと考えました」ということで、MIDとして素に近いZ1と対照的に、T1は付加機能をふんだんに盛り込んだ端末に仕上げているという違いを打ち出した。

T1を操作してみせる笛田氏。「当初より、ザウルスでも手書き機能を搭載していたんですが、当時は3cm角に1文字が書けるかというくらいだったんです。それがT1なら8文字くらいいける。タッチパネルの技術も格段に進化しているんですよね」とも語っていた

 タッチパネル対応端末には、主に画面を押す物理的な力に反応する抵抗膜方式と、指先からの電気的な干渉に反応する静電容量方式がある。画面全体をスムーズにスライドさせるといった有機的な動きは静電容量方式が得意としており、iPhoneなどで採用されているが、T1はスタイラスペンなどで精密な線が引ける抵抗膜方式を選んでいる。加えて、5型ワイドの大きさながら1024×600ドットという、きめの細かい画面にすることで、文字入力の実用性を引き上げているのだ。「感性に働きかけるなら静電容量方式がいいんですが、実務に重きを置くために抵抗膜方式を選びました。お仕事系やステーショナリー系にコンセプトを振っているんですよね」

 この「実務向け」というキーワードはブランド全体にかかる。2機種ともにWindowsパソコンとは仕様が異なるものの、マイクロソフト オフィスと互換性のあるOpen Officeを搭載し、自宅や会社のパソコンと同じファイル形式のデータが扱える。USB端子やmicro SDHCカードなどを経由したファイルの持ち出しも簡単だ。

 そして、笛田氏の「普段慣れ親しんでいるパソコン環境がそのまま使えますというのが、普遍のコンセプトとしてあります。通勤電車やカフェ、さらには大きな工場を回っているときでも、メールに添付されたファイルをチェックしたり、ネットで拾った情報をメモしておいたりという、普段パソコンでやる操作が普通にできるというのを目指したんですよ」というコメントは、ビジネスシーンでの活用法におけるキーワードになる。

「じゃあ、パソコンやスマートフォンだったら仕事になるのか」を考えた

 コンシューマー向けでありながら、実務向きのMID(モバイル インターネット デバイス)という独自路線を打ち出したNetWalker。後編では、現実的な導入のメリットを整理しながら、突き詰めていきたい。

 ブランド全体の導入メリットを整理すると、大きくわけて2つの要素が挙げられる。ひとつは携帯性を含めた機能面だ。「どちらも立って操作できるので、場所を選ばす使えるのがメリットといえます。メールの返信やちょっとしたファイルの編集にはキーボードが使えるZ1が便利でしょう。会議の議事録や広告原稿などのPDF資料にパッと書き込んで送り返すという場合はT1ですね」

 ただ、これらの使い方はパソコンやスマートフォンでも製品によってはできなくもない。笛田氏もそれを認めつつ、「でも、『じゃあ、パソコンやスマートフォンだったら仕事になるのか』と考えたときに、そうじゃない場面はいっぱいあるんですよね。パソコンだったら座って起動をしばらく待って操作することになりますし、スマートフォンだったら扱えないファイルも多く、画面の広さから考えて手間もかかります。それがNetWalkerなら手間や制限を最小限にしてどこでも瞬時に操作できるんですよ」という。つまり、シーンに最適化することに新たな価値を作り出しているのだ。

T1の手書き入力機能は、紙にボールペンで書いているように違和感なく使える

 一方で、長文編集やマルチメディア操作、音声通話などははあえて切り捨てている。この割り切りがNetWalkerの独自路線を作り出しているわけだが、肝心のインターネット機能がIEEE 802.11b/g対応のみと平凡なのが気になることろ。いまなら、データ通信用の3Gアダプターを内蔵するといった対応もできたはずだ。しかし、「そこはお客さんに選択していただければと考えています。USB接続やWiFi変換で使うデータ端末もありますからね。どこかの会社さんのモジュールを組み込むと、どうしてもパイを狭めてしまいます。まだ、それをやって勝負できる状況ではないと考えています」とのことで、ここもあえて素に近い仕様を選んでいる。

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