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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第10回

国内電機メーカー決算出揃う

2010年06月02日 09時00分更新

文● 大河原克行

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環境・社会システムでVI戦略とAD戦略を掲げる

 三菱電機は、売上高が9%減の3兆3532億円、営業利益が32%減の943億円。

 同社では、営業利益5%以上、ROE10%以上、借入金比率15%の3項目を経営指標に設定しているが、2009年度実績では営業利益率2.8%、ROE3.1%、借入金比率は16.7%となった。

三菱電機の山西健一郎社長

 三菱電機の山西健一郎社長は、「2010年度は新たな成長に向けた再チャレンジする年になる」と位置づけ、その柱のひとつに、環境関連事業/社会インフラシステム事業の強化を掲げ、この分野ではスマートグリッド事業など8つの事業に重点的に取り組む姿勢を示した。

 2010年度の連結業績予想は、売上高が前年比4%増の3兆4800億円、営業利益が49%増の1400億円、税引前純利益は71%増の1100億円、当期純利益は約2.5倍の700億円を見込んでおり、「社内的には2011年度に営業利益率5%以上の達成を目標に取り組んでいる。2007年度に6.5%という営業利益率を達成したことを考えれば、そのポテンシャルがある」とした。

 また、社会インフラシステム事業の戦略的強化や、海外売上高比率40%に向けた施策を強化。「グローバル戦略なくして、大きな成長をは見込めない。景気回復期の業績拡大を加速する」と成長戦略に取り組む姿勢を強調した。

 交通システム、電力システム、パワー半導体、空調・住設機器などの同社が得意とする事業をより強くする「VI戦略」と、スマートグリッドやデジタルサイネージ、トータルセキュリティソリューションといった強い事業を核にしたソリューション事業の強化を図る「AD戦略」が柱となる。


エコ・健康関連製品が好調だが、赤字のテレビ事業に競争力を

 シャープは、2009年度の売上高が前年比4%減の2億7559億円、営業利益は1073億円改善して519億円と黒字化、経常利益は309億円、当期純利益は43億円と、いずれも前年度の赤字から黒字転換した。セグメント別では全部門で黒字転換したという。

シャープ・片山幹雄社長

 片山幹雄社長は、「市場価格の下落、円高の影響など厳しい経営環境にあったものの、総経費で年間2000億円削減を目標とした計画に対して、それを上回る2138億円の削減となり、これが黒字化に寄与した」とする。さらに、国内におけるエコポイント制度による液晶テレビの販売増加、プラズマクラスターイオン搭載製品や太陽電池などの健康・環境関連製品が好調に推移した。為替の影響を除けば、売上高はほぼ前年並みの実績になるという。

 だが、液晶テレビ事業は赤字のまま。「米州および欧州では、円高、ウォン安という為替環境のなかで、韓国メーカーに比べてコスト競争力が確保できなかった」とコメント。2010年度は、UV2Aおよび4原色技術という競争力を持つ液晶パネルの生産が、グリーンフロント堺で開始されていることから、世界的に旺盛なテレビ需要に対応することで黒字化を見込む。年間出荷計画は2009年度実績が2%増の1018万台に留まったが、2010年度計画では47%増の1500万台を計画している。

 2010年度には売上高で13%増の3兆1000億円、営業利益で131%増の1200億円を見込み、「早期に金融危機前の業績への回復を目指す」とした。

 海外事業体制を5本部制として、地域ごとの自立性を高め、欧米での事業拡大や新興国におけるビジネスを加速。プラズマクラスターイオンを搭載したボリュームゾーン製品を、中国、アジアを中心に推進するほか、UV2A技術と4原色技術を組み合わせた「クアトロン」パネルによって、LEDテレビの販売伸張、3Dテレビの需要拡大に対応していくという。さらに、携帯電話では、マイクロソフトと共同開発したスマートフォンのKINによる欧米への展開強化や、中国市場において年間35機種をラインアップするなどの取り組みを行うという。

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