米AMDは2日、COMPUTEX TAIPEI 2010に合わせて開催した記者説明会にて、2011年に登場予定のGPU統合型CPU「Fusion APU」のデモを、世界で初披露した。AMDが以前から取り組んできたCPUとGPUの統合が、いよいよ現実味を帯びてきた。
Fusion APU(Accelerated Processing Unit)とは、現在は個別に存在するX86 CPUとGPUを、ひとつの半導体ダイ上で結合したプロセッサーである。Fusion APUでは同じダイ上にCPUとGPUを実装するだけでなく、将来的には両者が融合した新しいプロセッサーの実用化を目指したものだ(関連記事)。
インテルのCore i5/3プロセッサーもCPU内にGPUを内蔵しているが、こちらは別々の半導体ダイで作られたCPUとGPUを、ひとつのパッケージ上で結合しているだけにすぎない。2010年末に登場予定の次期CPU「Sandy Bridge」では、インテルもCPUとGPUを同じダイ上で結合するが、こちらのGPUの性能は、Fusionに対抗しうるレベルにはなさそうだ。
現代のGPUは単なる3Dグラフィックスアクセラレーターではなく、高速な並列演算が可能なもうひとつのプロセッサーとなっている。これをCPU内に統合することで、今まではCPUとGPUを結ぶバスやメモリーの帯域幅が大きな制約となっていたGPUコンピューティングの世界も、さらに進化することが期待される。将来的に密接な融合が実現されれば、プログラミングモデルも変化していくだろう。
今回の説明会では現在開発中のFusion APUとして、メインストリームデスクトップ/ノート向けの「Llano」(リャノ、ラノ)と、低消費電力なノートパソコン向けの「Ontario」の2種類の概要が示された。どちらも「2011年前半にサンプル出荷」と書かれていたので、実際の搭載製品が登場するのは、2011年後半くらいになりそうだ。
披露された動作デモは2種類。まずひとつはDirectX 11ベースのゲーム(Alien vs Predator)を動作させるデモで、Fusionの内蔵GPUがDirectX 11対応であることを示している。
もう1種類は、Internet Explorer 9によるGPUアクセラレーションに対応したデモ。CPUのみによる表示が一桁のフレームレートしかでないほど遅いのに対して、Fusionでは50~60フレーム/秒弱程度という圧倒的な速さを実現している。
また説明会では、Fusion対応のソフトウェア・ハードウェア開発を促進すべく、対応ソリューションを開発する企業に対して出資する「AMD Fusion Fund」プログラムも発表された。アプリケーションやツールといったソフトウェアだけでなく、周辺機器やそのほか革新的なアイデアにも投資するという。
AMDが将来の柱として精力を傾けてきたFusionだけに、その製品の登場が待ち遠しい。来年のCOMPUTEXあたりには、各社の搭載製品が見られるだろうか?
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