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人はなぜ歌声に涙するのか 初音ミクを使いこなす「神」に聞く

2010年06月12日 12時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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シンセもない DAWもない でも自分の曲はできた

―― ドッPさんのすごいところは「懐かしいね」で終わらず、新しい価値を作れていることなんです。「しろいそら」はある種、ミニマルテクノっぽくもあります。でも、それ以前に上げた曲はみんな80年代のアイドルカバーじゃないですか。その感覚が不思議なんですよ。

ドッP うーん……。実はなにが80年代で、90年代で、というのがよくわからないんです。切り分けがないんですよね。記憶力が悪いのか、ものの順序というのがおぼえられなくて。すべてあとから教えてもらって知ったことなので。好きってことは同じなんですけど。ゲーム、アニメ、テクノ、ポップス、アイドル。それもあまり分けて考えてないんです。

―― そうか、「あの時代は良かった」って意識がもとからないんですね。ところでヤボなこと聴きますけど、お金をかせぐつもりってあります?

ドッP 本業もありますから、音楽でお金をかせぐ必要はあんまりないです。まだKaren-Tレーベルで売っているのも1曲だけですね(レーベルのページ)。

はつゆきリマインド

 価格 150円
 購入 iTunes StoreTSUTAYA DISCASListen Japan

 ボーカロイドソフト「MEIKO」と、nanoloopを使ったラブソング。オリジナルソングはこちら(ニコニコ動画)。ドット絵を使ったビデオアートも「かわいい」と好評だ。

―― なにか出さないんですか? ジャケットとかデザインしたりして。

ドッP どうせつくるなら、ネット上で渡せるものだったらあんまり意味がないという感じがするんですよね。CDだって、ジャケットはプリントアウトすればいいし、音はCD-Rに焼きつければいい。そうじゃないものがほしいんですよ。再現できないもの……実物じゃないと意味がないものをつくりたいと思うんですよね。そういうのを思いつけたら、やりたいと思うんですけど。

―― そしたらドッPさんはこれから何をしていきたいですか。

ドッP いやー、難しいですね。言っちゃうと、言ったことで満足しちゃいそうで。

―― まあこんな機会ですし、言っちゃいましょうよ。

ドッP 迷ってるんですよね。ツール的なものを作るのもいいかなと思っています。今ならケータイ向けにアプリを作れる環境があるわけですよね。そこで音楽をつくれたり、ドット絵を描けたりするソフトがあると、ゲームボーイみたいな体験ができるのかなと。

―― なるほど。nanoloopでゲームボーイを楽器として使ったみたいに、ソフトを使ってケータイを楽器にするって発想ですね。

ドッP 直接回路を鳴らすのは難しそうなので、ソフトから波形を作るようになるかと思うんですけど。ただ、そうするとパソコンでやるのとあまり変わらない気がしていて。

―― あ、そういえば聞き忘れてました。negotoさんという名義はどこから来てるんですか。ドッPよりもnegotoが先だったんですよね。

ドッP 前にも先にも、ずっと自分のやりたいことをやってるだけなんですよ。それって人から見たら、寝言を言っているようなものだよな、という意味です。

―― そんなドッPさん、negotoさんはどうして曲を作りつづけるんでしょうね。

ドッP 作曲といっても、自分では楽器がまったくできないんですよ。かといってDAWを使った打ち込みができるわけでもない。演奏できるのは「ゲームボーイ」。そんな自分でも曲を作れるし、ていねいに調整すれば合成音声も歌ってくれる。やりたいことができるんですよ。だからつづけているんだと思います。


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