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人はなぜ歌声に涙するのか 初音ミクを使いこなす「神」に聞く

2010年06月12日 12時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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時間が経つと失われていくものに、人は感動している

―― なるほどー。こうして調整をつづけてくると、「音」と「声」の境目というのを感じませんか。「声っぽいもの」というのは一体何なんだろうと。

ドッP そうですね、そこ大事ですよね。ボーカロイドの場合、言葉が連なっていれば声として聞こえないということはないと思いますが、ひとつの音が鳴りつづけていると、人の声として聞こえなくなることはあります。テクノではあえて曲に使ったりしますけど。

―― あー。ゲシュタルト崩壊みたいなものですね。1つの文字を見つづけていると意味がわからなくなってくる。

ドッP だから歌詞なりなんなりにあわせて、なんらか変化していくことが、声っぽい、生っぽい。そういうことなんじゃないかと思います。

―― たしかに。ぼくたちは生き物なんだから息もつづかないですしね。なるほど、それが声らしさのもとなんだ。

ドッP ソワカちゃんをファミコン音源でむりやりカバーした曲があるんですけど、ファミコンの音に入ってるノイズを生かし、あとの音色を徐々に変えていくことで、そこからも声っぽいものはできるんですよ。



―― あ、チップチューンのChibi-Techさんがやってるものですね! 「おにいちゃ~ん」とか聞こえる、あれ。

ドッP あとはポルタメントですね。音と音のつなぎ目が、人の声の場合は「口」があるのでなめらかにつながる。ファミコン音源で文章っぽいものを言わせる場合もやっぱり同じ。たぶんボーカロイドの調整でキモになるのはその2つなんですよね。

「昨日と」という歌詞は「きのおと」と入力してから、「お」と「と」の音程に変化をつけている

―― 時間が経つと変わってしまうもの、口の形で変わってしまうもの。本来的に考えれば、2つとも失われていくもの、ノイジーな情報ですよね。

ドッP ですね。ただ波形を切り貼りするだけだと、作るのは難しいと思います。

ソワカちゃん : アングラ系ネットアニメ「護法少女ソワカちゃん」シリーズ。スーパーキッチュな演出は中毒性が高く、ファンは多い。作者はkihirohitoさん(インタビュー記事

Chibi-Tech : チップチューンを使うサブカルチャー・アーティスト。カリフォルニア州在住。ファミコンのノイズから「おにいちゃんならいいよ」という声をつくって曲に取り入れるなどの奇手で、カルト的な人気を集める。チップではなくFM音源を使った楽曲も多い

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