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人はなぜ歌声に涙するのか 初音ミクを使いこなす「神」に聞く

2010年06月12日 12時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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ほんとはゲームがつくりたかったんですけど

―― まずは音楽歴からお願いします。

ドッP 実は音楽よりもゲームがつくりたかったんですね、小学生のころから。「デザエモン」とかありましたよね、シューティングゲームをつくるソフト。あれが好きで。

―― 「RPGツクール」とか?

ドッP そうです! ある日、父がパソコンを買ってきたんです。「PC-98」の互換機を。それで(パソコン用の)「ツクール」シリーズを始めて。MMLを書いてFM音源を鳴らせるしくみもあったんですけど、そのときは音楽だけがうまくいかなくて。ドット絵はまあいいんじゃね、というところまで来たんですけど。

ドッPさん

PC-98 : NECのパソコン「PC-9800」シリーズのこと。シリーズ初代の「PC-9801」は1982年に発売

ツクールシリーズ : アスキー(当時)が発売していたゲームシリーズ。ゲームを作る「RPGツクール」や、音楽を作る「かなでーる」など

MML : ミュージック・マクロ・ランゲージ。コード譜や音楽記号などをコンピューター上で再現するための言語

FM音源 : 2つの振幅(音のゆれ)をもとに自然音を作り出す方式。カラオケのような音と想像するといい。ヤマハはこの合成音声をシンセサイザーに応用し、大量生産に成功した

―― ではそのまま中学、高校と進んで、大学へ?

ドッP ゲームがつくりたかったので、理工系の大学に行こうと思って。高校生の終わり、90年代の終わりくらいだと思うんですけど、ゲームに本物のテクノが入りはじめたんですね。ケミカル・ブラザーズとか、プロディジーとか。

―― ちょうど「ビートマニア」が出てきたころですか。

ドッP ですね。で、そのちょっと前くらいから「メガデモ」(MEGADEMO)というものが流行していて。

―― メガデモ?

ドッP パソコン上でポリゴンの映像を流しつつ、同時に音楽も流す。それを1枚のフロッピーにおさめる、というものですね。海外だとその音楽やデータをダウンロードできるようになっていたりして。

―― へー! 面白いですね。動画サイトの草分けのような。

ドッP そこで使ってた曲がテクノというか、打ち込み系だったんですよ。それからテクノを聴きはじめて。ハードミニマル系の、サージョンとか、ブリティッシュ・マーダー・ボーイズとかが好きになって。同時に色んな曲を聴きはじめて、クラムボンとか、フィッシュマンズも知った感じですね。それまではゲーム音楽ばっかり聴いてたんですけど。

―― じゃあ、そのときに曲をつくりはじめた?

ドッP いやー、これがまたうまくいかないんですよ。

―― あらま。難しいんですか?

ドッP 「ModPlug Tracker」(MOD)という、メガデモ用の音楽をつくるためのソフトを使ってたんですけどね。サンプラーみたいな。波形データをいくつか用意して、その音程を変えて並べることで曲にするという。

ModPlug Tracker

―― それは今やっているような「歌」ではないですよね。

ドッP うーん。テクノもどきみたいな感じでしたね。

―― そのころは音楽をメインにやっていたわけではないんですか。

ドッP むしろ学生のころは映像ばっかりやってたんです。その縁でクラブの方とも知り合い、フライヤーのデザインをさせていただいたり。大学を出て、プログラム系の仕事をはじめてからはずっと、サイト上でゲームを発表するようになって(公式サイト)。

ゲームを発表しているサイト「negoto front」。マウス操作でテルミンっぽい音を出せる、楽器系ソフトなどもつくっている

―― おー。でもゲームとなると、そこに音楽もつけますよね。

ドッP そうなんですよね。そこでMODでオリジナル曲をつくって、ゲームにつけた。それが作曲の初めだったのかな、という気がします。なんか「1週間でゲームをつくれ!」みたいな遊びを2ちゃんねるでやっていたりして。

―― 1週間で?!

ドッP まあ、ひっそりしたスレッドでしたけどねえ。

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