このページの本文へ

まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第5回

書籍アプリはお茶濁しに過ぎない?

電子書籍三原則とフォーマットを整理する

2010年05月28日 09時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

次世代の読書体験と話題になったiPad版「不思議の国のアリス」だが……

「電子書籍」をひと括りに語るのは限界

 さて、その前提を頭に入れた上で、現状のデバイスとフォーマットを整理してみたい。その際、留意しておきたいのが、「電子書籍」とひと言にいってもその種別は様々であり、それぞれに適したデバイスとフォーマットがあるはず、という点だ。

 先ほど「電子書籍三原則」を挙げた。

 例えば、iPadの「不思議の国のアリス」は「所有」以外どれにも当てはまらない。

 では失格なのか、というわけではなく、これは「電子絵本」と呼ぶべき種類のものだと捉えたい。そういった具合に整理しないとこの後の分類、それに基づくプラットフォーム選択がうまく行なえないからだ。

 先に、いま「電子書籍」とひと括りに語られているものを分類したいと思う。


種別 ビジネスモデル 中核コンテンツ 所有意欲 検索意欲
電子書籍(いわゆる本) 代金収入 テキスト
電子コミック 代金収入
電子新聞 代金・広告収入・定額モデル有り テキストと写真(今後は映像も?)
電子雑誌 代金・広告収入・一部定額モデル有り テキストと写真(今後は映像も?)
電子絵本 代金収入 絵とテキスト

 もちろん、同一種別でも作品によってその特色は様々であるし、消費者のプロフィールによっても、そこに求めるものは異なってくるが、このように整理してみると、色々と見えてくることがあるのではないだろうか?

 例えば、日本の携帯電話プラットフォームでは、電子コミックだけが突出してその利用が広がったのはなぜか? 有料の貸本に、上の表でいうところの電子書籍があまりそぐわないのはなぜか? といった疑問の答えが見い出せるはずだ。

 すでに色々なところで指摘されていることであるが、現状の電子コミックは成人作品がその売上げの中心を占めている。結果として、ずっと手元に「所有」される必要がなく(むしろ用が済んだら消えてくれたほうが都合が良い)、当然「検索」による利便性が活かされることはほとんどないといった分析が可能だ。


あらためて各プレイヤーのデバイスとフォーマットを俯瞰する

 連載の第一回では以下のような表で、簡単ではあるが、現状の主要プレイヤーを整理した。


電子出版を巡る主要プレイヤーは海外勢
プレイヤー デバイス ビジネスモデル
Amazon Kindle Amazonでのリアル書籍の販売に加え、電子書籍をラインアップ。価格は9.99ドルを中心に設定
Apple iPad/iPhone 優れたユーザーエクスペリエンスとiTunes Storeとの統合を武器に参戦。価格はAmazon同様
Google 特に規定せず 書籍の内容も検索できるブックサーチを提供。権利者と広告レベニューシェアを行なう
Sony Reader ハードウェアの完成度の高さから北米ではKindle、iPadに次ぐ人気を誇る。日本では未発売

 この表に、その後5月に相次いで発表されたGoogleのAndroidを採用した端末の状況や、データフォーマット、流通プラットフォームを加味して再作成したものを次ページに示してみた。

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ