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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」第24回

理屈にあわない楽しさを求めて 電子楽器をつくる人の哲学

2010年05月29日 12時00分更新

文● 四本淑三

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理屈にあわない設計をする「モーグの理論」

―― 例えばギター小僧がジェフ・ベックをコピーするみたいに、moogの回路を丸ごとコピーしたりはしないんですか?

武田 当然する。けど……。

gan まったく同じ音が出ないんです。その理由が分からない。だからすごい必死で考えるんですよ。アナログの音って結構ひずんでるんですよね。それが音作りの中で重要なんですけど、ここの部分でひずませてるんだろうと思っていじったら、全然違うところだったり。そういう勘違いがよくあるんです。

―― 回路は楽譜みたいなもので、演奏者で違うとか?

gan それはその通りですね。

―― じゃあ音楽と同じで理論もあるわけですよね?

gan 理論にのっとって作ってあるんだけど、時々くずしてある。moogの一番特徴的な回路はフィルターなんですけど、そこの一部が理屈に合わない設計になってるんです。それで本来正しいとされている設計のフィルターを作って聴きくらべてみると全然違う。そのときに、モーグ先生のそうした意図を想像するのが楽しいですね。生きていれば直接色々聞けたんですけど。

武田 たしかモーグ先生、メール書くと結構返事くれるって話だったよ。海外のメーリングリストで「何々の回路図が欲しい」っていう投稿の返事が「ASK BOB」(ボブに聞け)ってやつなの。

―― 本人に聞けって?

武田 そう言われた方は困ってるんだけど「いや、メール出せば返事くれるから」って、皆でフォローしたりね。

―― ただ一般的にアナログシンセは古い技術で、大きなメーカーは作らなくなった、一度は終わったものです。

gan と思っている人が多いですよね。でも、まだ40年ですよ。テルミンも一時期忘れ去られていて、楽器としては終わったと思われていた時期もありましたよね。

―― 楽器の歴史というスケールで見ればまだ若いと。

gan 楽器としてはまだ発展途上にあると思っているんです。たとえばSX-150が出てくるまでは、あんな変なシンセはなかった。そしてmonotronが出てきて、手のひらで指で鳴らすシンセが普通になった。シンセはまだ育ち続けていると思うんです。

―― じゃあganさんは一生シンセ作っていくんですね。一緒に育っていくというか。

gan そんな気がしますね。これから、どんなことが起きるのかワクワクする。たとえばウダーみたいなものが出てきたら、それにぴったりな音源ってどんなものだろうと考えたり。そういう楽しいことが、まだまだ起きるはずですよ。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。


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