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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第53回

SiSチップセットの歴史 その2

ハイエンド路線には乗れず バリュー向けで終わったSiS

2010年05月31日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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Pentium 4~Core 2世代のSiSチップセットロードマップ

Pentium 4~Core 2世代のSiSチップセットロードマップ

SiS648でハイエンド市場を狙うも、その後は
ライセンスとDirect RDRAMの失速で立ち消えに

 2チップ化にまつわる裏話はともかく、SiS645はそれなりにマーケットを掴むことに成功する。2001年9月には、GPUの「SiS315」(後にReal256と改称)コアを統合した「SiS650」をリリース。続く2002年には、533MHz FSBに対応した「SiS645DX」と「SiS651」をそれぞれリリースする。

SiS650

SiS650

 2002年9月には、SDRAMのサポートを省いてAGP 8Xに対応するとともに、USB 2.0対応を実現したサウスブリッジ「SiS963」を組み合わせた「SiS648」がリリースされる。さらに、このSiS648をベースに、デュアルチャンネルメモリー構成としたのが、2002年11月に登場した「SiS655」である。これは一時的とはいえ、Intel 845PEなどを上回るスペックを備えており、ハイエンド向けへの意欲を感じさせるものだった。

SiS655

SiS655

 これに留まらずさらに上を狙ったのが、同じく2002年11月に発表された「SiS R658」である。基本的にはSiS655と同一スペックながら、DDR-SDRAMの代わりにデュアルチャンネルのDirect RDRAMに対応するという構成で、明らかにFSBの必要とする帯域を大幅に上回る構成だった。これを搭載した「ABIT SI7」というマザーボード製品も、翌2003年1月には発表される。

 さらに2003年中には、Direct RDRAMを4チャンネル構成とし、さらに1200MHz駆動までサポートする「SiS R659」をリリースし、台湾ASUSTeK Computer社が搭載製品を発表することまでアナウンスされた。だが、ABIT SI7は発売後数ヵ月もたたずに受注終了/生産中止。SiS R659もついにデモの公開さえ一度も行なわれずに消えてしまった。

 このあたりの事情は、前回説明したとおりである。R659のメモリー帯域は、当時のシングルCPUで利用するには明らかに過剰で、実際にはR659で、ワークステーション向けに2プロセッサー構成を利用できるようにすることも考えていたらしい。当時SiSのエンジニアは、「技術的には可能だが、問題はライセンス」と語っていたが、実際にインテルからは2プロセッサー構成のライセンスが取得できないままとなる。またDirect RDRAMそのものが、インテルの目論見が外れて主流にはならなかったので、仮にライセンス取得に成功したとしても、どこまで利用されたかは非常に疑わしい。

 それはともかく、SiSは引き続き、製品ラインナップを厚くすることに奔走する。SiS655をベースに、800MHz FSBやDDR400に対応した「SiS655FX」を、2003年7月にまず発表。2003年11月には、これに「HyperStreaming Technology」と呼ばれるメモリーアクセスの最適化技法を導入した「SiS655TX」を発表する。

 これと並行して2003年5月には、SiS648のまま(つまりメモリーは1チャンネル)800MHz FSBとDDR400に対応した「SiS648FX」をリリース。これをベースに、「Real256E」グラフィックスコアを統合した「SiS661FX」を、同じ2003年7月。さらに、バリュー向けに800MHz FSBを省いた(DDR400対応はそのまま)「SiS661GX」を、恐らく2003年末あたりにそれぞれ発表する。

SiS648FX搭載マザーボードの例

SiS648FX搭載マザーボードの例


UMCへの吸収合併で企業としての目的も変化

 2004年には、PCI Express対応の動きが始まる、。まずはハイエンド向けに「SiS656」がリリースされ、さらに1066MHz FSBに対応した「SiS656FX」も、翌2005年6月にリリースされる。ただし、ハイエンド向けチップセットはSiS656FXで終わる。2004年3月というのは、SiSがUMCの傘下に入った時期であり、これによりSiSの目的は、チップセットベンダーとして自立することから、UMCの子会社として先端製品の開発を行なうとともに、季節変動などによるUMCの需要の波を吸収するような商品構成を用意する、という方向性に移り始める。

 「先端」という意味では、チップセットそのものが先端製品であり、何もハイエンド製品を作らなくてもいいことになる。2001年までのSiSは、メインストリームとバリュー向けを狙った製品展開をしてきたが、2002~2004年はハイエンドからバリュー向けまで全方位戦略をとっていた。ところが2004年からは再びメインストリーム/バリュー向けに軸足を戻す形になる。ハイエンド向け製品はこのあおりを受けて、消えるはめになった。

 SiS656FXは、SiS656のマイナーチェンジであって、特に新機能などはなく(サウスブリッジの更新による機能追加程度)、これに続く製品展開も皆無だった。一方で、SiS656のメモリーを1チャンネル化した「SiS649」が2004年8月にリリースされ、これを1066MHz FSBに対応させた「SiS649FX」も2005年6月にリリースされた。これらもマイナーチェンジである。

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