アクセス解析のプロフェッショナルと現場担当者が一同に集う「アクセス解析サミット2010」(主催=アクセス解析イニシアチブ)が、5月25日、川崎市で開催された。
アクセス解析のセミナーは数多く開催されているが、丸1日がかりのイベントはめずらしい。当日は企業のアクセス解析担当者を中心に350名以上(主催者発表)が参加し、アクセス解析のさまざまなノウハウを共有した。
花王、ベネッセ、ユニクロがアクセス解析の現場を紹介
午後には、パネルディスカッション「Webマーケッター瞳が探る各社の成功事例と課題」が開催され、花王の広末守正氏、ベネッセコーポレーションの川崎 洋氏、ユニクロの高林千歌氏の3名が、それぞれの企業の取り組みを紹介した。モデレーターは、マンガ「Webマーケッター瞳」の原案者・ムラカミ カヨ氏。
メーカー、教育、小売と、業界も商材もまったく違う3社は、アクセス解析の目的や指標も三者三様だ。
花王にとってWebサイトは、広告宣伝ツールの1つとの位置付け。自身も宣伝部門に属する広末氏は、「店頭の売上アップにつなげることがWebの目的だが、最終的なコンバージョンは小売店の売り場。Webアクセス解析では何を指標として評価するかが非常に難しい」という。
現状は主にユニークユーザー数を見ているが、特定の検索キーワードを使った訪問者の増減などから、テレビCMなどの他の広告メディアの効果測定にも利用している。「リアル(売り場)にしかコンバージョンがないメーカーの場合、これまでWebに限らず、広告宣伝の効果をほとんど検証できていなかった。今後は、広告全体の最適化にアクセス解析を活用していきたい」(広末氏)。
一方、通信教育を展開するベネッセは、Webサイトを「顧客の問題解決の場」(川崎氏)と位置づける。何らかの課題を持ってサイトを訪れた顧客を、ベネッセのサービスや通信講座などの「解決策」へ誘導するのが目的だ。Web上で最終的なコンバージョンまで完結するため、「具体的な成果、Webサイトからの契約数をもっとも重要な指標として見ている」という。
多くの事業サイトやポータルサイトを抱えるベネッセでは、500名以上の“兼任アクセス解析担当者”がアクセス解析ツールを使う。そのため年に数回、勉強会を開くなど、社内教育に力を注いでいる。川崎氏は60ページ以上に上るオリジナルの研修教材や社内報告書のフォーマットを用意し、社内ユーザーを支援しているという。
「ECとプロモーションサイト」の2つの役割を兼ねるユニクロのWebサイトの場合、アクセス解析も“小売流”だ。「分析だけの人は要らないというのが当社の社風。少人数で、見ている指標もかなり少ない」と話す高林氏は、朝の30分間で、PDCAサイクルのC(Check)とA(Action)を毎日実施しているという。前日の売上、客単価、客数、売れ筋などのデータと、直近の気候変動、メディア露出などの情報をもとに、トップページなどで押し出す商品やコンテンツを編成。「早ければその日の午後にもサイトに反映させる」というスピード感は、小売店の売り場づくりを思わせる。
「アクセス解析は目的があって実施するもの。ユニクロの場合はお客様の動きを見て、PDCAを回すために活用している。Webと店舗を線引きせず、アクセス解析のデータを店舗にフィードバックすることで、ユニクロ全体の改善を目指して取り組んでいる」(高林氏)
◆
アクセス解析サミットではこのほか、楽天編成課の清水 誠氏による全社展開の事例、人気ブログ「リアルアクセス解析」の小川卓氏(リクルート)による社内浸透のTipsなど、計8セッションが開かれた。