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アクセス解析もユニクロ流、毎朝30分で回すPDCA

2010年05月28日 10時00分更新

文●小橋川誠己/Web Professional編集部

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 アクセス解析のプロフェッショナルと現場担当者が一同に集うアクセス解析サミット2010(主催=アクセス解析イニシアチブ)が、5月25日、川崎市で開催された。

 アクセス解析のセミナーは数多く開催されているが、丸1日がかりのイベントはめずらしい。当日は企業のアクセス解析担当者を中心に350名以上(主催者発表)が参加し、アクセス解析のさまざまなノウハウを共有した。

アクセス解析サミット

多数のアクセス解析担当者が参加した「アクセス解析サミット」。写真は登壇者が集まった閉会のあいさつの様子


花王、ベネッセ、ユニクロがアクセス解析の現場を紹介

 午後には、パネルディスカッション「Webマーケッター瞳が探る各社の成功事例と課題」が開催され、花王の広末守正氏、ベネッセコーポレーションの川崎 洋氏、ユニクロの高林千歌氏の3名が、それぞれの企業の取り組みを紹介した。モデレーターは、マンガ「Webマーケッター瞳」の原案者・ムラカミ カヨ氏。

 メーカー、教育、小売と、業界も商材もまったく違う3社は、アクセス解析の目的や指標も三者三様だ。

 花王にとってWebサイトは、広告宣伝ツールの1つとの位置付け。自身も宣伝部門に属する広末氏は、「店頭の売上アップにつなげることがWebの目的だが、最終的なコンバージョンは小売店の売り場。Webアクセス解析では何を指標として評価するかが非常に難しい」という。

 現状は主にユニークユーザー数を見ているが、特定の検索キーワードを使った訪問者の増減などから、テレビCMなどの他の広告メディアの効果測定にも利用している。「リアル(売り場)にしかコンバージョンがないメーカーの場合、これまでWebに限らず、広告宣伝の効果をほとんど検証できていなかった。今後は、広告全体の最適化にアクセス解析を活用していきたい」(広末氏)。

アクセス解析サミット

左から瞳ことムラカミ カヨ氏、花王の広末守正氏、ユニクロの高林千歌氏、ベネッセコーポレーションの川崎 洋氏。ユニクロのアクセス解析ツールは非公表だが、某無料ツールを使用しているとのこと


 一方、通信教育を展開するベネッセは、Webサイトを「顧客の問題解決の場」(川崎氏)と位置づける。何らかの課題を持ってサイトを訪れた顧客を、ベネッセのサービスや通信講座などの「解決策」へ誘導するのが目的だ。Web上で最終的なコンバージョンまで完結するため、「具体的な成果、Webサイトからの契約数をもっとも重要な指標として見ている」という。

 多くの事業サイトやポータルサイトを抱えるベネッセでは、500名以上の“兼任アクセス解析担当者”がアクセス解析ツールを使う。そのため年に数回、勉強会を開くなど、社内教育に力を注いでいる。川崎氏は60ページ以上に上るオリジナルの研修教材や社内報告書のフォーマットを用意し、社内ユーザーを支援しているという。

 「ECとプロモーションサイト」の2つの役割を兼ねるユニクロのWebサイトの場合、アクセス解析も“小売流”だ。「分析だけの人は要らないというのが当社の社風。少人数で、見ている指標もかなり少ない」と話す高林氏は、朝の30分間で、PDCAサイクルのC(Check)とA(Action)を毎日実施しているという。前日の売上、客単価、客数、売れ筋などのデータと、直近の気候変動、メディア露出などの情報をもとに、トップページなどで押し出す商品やコンテンツを編成。「早ければその日の午後にもサイトに反映させる」というスピード感は、小売店の売り場づくりを思わせる。

 「アクセス解析は目的があって実施するもの。ユニクロの場合はお客様の動きを見て、PDCAを回すために活用している。Webと店舗を線引きせず、アクセス解析のデータを店舗にフィードバックすることで、ユニクロ全体の改善を目指して取り組んでいる」(高林氏)

 アクセス解析サミットではこのほか、楽天編成課の清水 誠氏による全社展開の事例、人気ブログ「リアルアクセス解析」の小川卓氏(リクルート)による社内浸透のTipsなど、計8セッションが開かれた。

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