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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第72回

犬がしゃべる料理動画「COOKING with DOG」大人気の秘密

2010年05月25日 12時00分更新

文● 古田雄介

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5分の動画をつくるため、あれやこれやで20時間

―― 犬のフランシスが料理を解説するというスタイルは、数ある料理動画のなかで個性を出すという意味で効果的ですよね。最初からかなり綿密に計算された印象があります。

プロデューサー そういう面はありますね。YouTubeでも、かわいい女の子が何かするとそれだけでものすごい再生数になったりするじゃないですか。でも、まあ、あの……シェフは、そういう方向では争えないかなというのが(笑)。

シェフ あはは。でも、最初は私が提案したんですよ。私は素人なのに顔を出さなきゃいけないという話だったから、そのリスクを分散させたいという意味合いがあったんです。私だけが出演してお料理するよりも、近くに誰か出演者がいてくれたほうがやりやすいんです。それで、私の身近な存在がフランシスだったから。

プロデューサー あー、確かにそうでしたね。幸運なことに料理を得意なシェフを知っていて、シェフといっしょに暮らしているフランシスもセットでついてくるということになって。お金をかけずにできる範囲でベストの手を一個ずつ打っていこうという当初の考えのなかで、最善の環境が揃ったんですよね。

フランシス(近影)


―― そばにある素材を最大限に活用するという感じですね。そうして2ヵ月後に第一回の「すき焼き」をアップされたわけですが、反響はどうでしたか?

プロデューサー 最初はちょっと期待していたんですが、ダメでしたね。1週間で10回再生されるくらいでした。まあ、こういうコンテンツはある程度続けていかないと結果が出せないというのは分かっていたので、特にショックだったというわけではないですけど。


―― その後も基本的に3週間に1回ペースで更新を続けていますが、このペースにはどんな理由があるんでしょう?

プロデューサー 時間がそれしかとれないってことですね。理想は今の段階でも2週間に1回アップなんですよ。まだYouTubeだけで食べていけるわけではないので、普段は会社員をやってます。仕事の時間と、収録や編集にかかる時間のバランスを考えると、どうしても3週間に1回ペースになってしまうんですよ。

シェフ 収録だけでも、1回で7~8時間はかかっているかもしれませんね。

プロデューサー 現段階だと、シェフに同じ料理を2回作ってもらっているんですね。カメラマンが私一人しかいないので、クローズアップとワイドを2回撮影するんです。その間にも絵をちょっとずらしたり、色取りを変えてみたりと色々やっていると、本当に時間がかかるんですよ。

 それから編集作業に移るんですが、これも10時間かそれ以上はかかりますね。どこでワイドとクローズアップを切り替えるかというところで私なりのスタイルがあって、数コマ単位でやっていると本当に……。たとえば普通にたたずんでいるときに切り替えるんじゃなくて、鍋を持ち上げるときなら動きが連続して見えるとか。編集によって動画の印象が変わりますからね。

プロデューサーとシェフの間柄は「謎のままでいかせてください」(プロデューサー)という。画像はYouTube 5周年イベントでCWDが表彰された際の動画だが、ここでもシェフとの関係や名前は明かさなかった


―― 5分の動画に20時間以上もかけてるんですか! テレビや映画の編集でもそういうものなんですか?

シェフ いえ、分業できないから時間がかかっているというのが大きいと思いますよ。私はお料理だけしているんですが、撮影や編集は彼が一人でやっていますから。

プロデューサー あとはコンテンツのスタイルによりますね。テレビの場合は、そんな頻繁にカメラを切り替えないと思います。出演している方もプロなので、ワイドでずっと写していても絵になりますよね。長さも15分や30分とれたりします。

 でも、シェフは人前で何かしゃべるという訓練をしているわけではないですし、インターネットで配信する以上、あまり長い動画にすることはできないという面があります。たとえばCWDが15分の動画だったら、今より見てくれる人は減ると思います。5分という短めの時間だからこそ見てくれる。だから、5分間で料理の流れを分かりやすく短縮して、かつ、見ている人が飽きないような作りにしないといけないんですよ。

 まあ、ミュージックビデオや映画だったら1コマ単位の編集がザラにあります。それで編集に数ヵ月費やすんですよ。さすがに私一人でそれは無理ですけど、5分間の短い動画ならこだわり抜いた編集ができるかなというのもあります。

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