SiSチップセットの歴史 その1
台湾御三家のSiS、ファブレス脱皮を目指して迷走す
2010年05月24日 12時00分更新
このSiS5581/82をベースに、さらにグラフィックス機能まで統合したのが、1997年後半(8月頃?)に発表された、「SiS5597/5598」である。チップセットに統合されたのは「SiS6205」という64bitグラフィックスコアなのだが、3Dアクセラレーションは持たない単なる2Dグラフィックである。もっとも、「Windows 95/98がそこそこに動けばいい」という当時のニーズからすれば、これでも十分だったのであろう。
一方で、SiS5581/5582を83MHz FSB対応に強化したのが「SiS5591/92」である。正確に言えば、当初は「FSB 100MHz対応」として発売されたものの、実際には「アタリ」個体でないと100MHzで動かない(ハズレの場合は75MHzでも怪しいなんて話すらあった)ということで、公式には83MHzまでの対応と、発売後に変更された。AGPを最初に搭載したのもこの製品である。
これをベースに、きちんと100MHz FSBへの対応したのが、1998年後半にリリースされた「SiS530」である。またSiS530では、Ultra ATA/66にも対応している。「サウスブリッジがSiS5591/92と同じなのに?」と思われるかも知れない。実はSiSの場合、IDEインターフェースがノースブリッジ側に置かれており、サウスブリッジは単にPCI-ISAブリッジとUSB、キーボードコントローラーなどが集約されているだけなので、こんなことになるわけだ。
ちなみに、統合されているグラフィックスコアは「SiS6326」。基本はSiS5597に統合されているSiS6205と同じだが、外部メモリーにSGRAMを利用でき、やや高解像度で利用できるようになったという程度のものだ。また、外部AGPポートは廃されてしまった。
続く「SiS540」が、Socket 7向けとしては最後の製品となる。「Super 7 2D/3D Ultra-AGP Single Chipset」なる仰々しいキャッチフレーズがついたが、ようするにDirectX 6.1に対応した「SiS 300」をグラフィックス機能に搭載したというものだ。「Ultra-AGP」とは、当時はまだAGP 2Xまでの規格しか制定されていなかったのに、これを勝手に4X相当で駆動するというもの。とはいえ内蔵グラフィックスだけの話で、外部AGPポートは廃されたままであった。
ちなみにこのSiS540から、ちょっと構成が変わっている。これまではノースブリッジからPCIバスが出て、その下にPCI-ISAブリッジチップがぶら下がっていたが、この頃から業界全体でISAバスを廃止する動きが活発になっていた。そのため、SiS540もPCIとLPCのみが出ており、これと組み合わせるサウスブリッジの「SiS950」は、フロッピーやCOMポート、ハードウェアモニターなどのみをつなぐ構成になった。ISAバスが必要なら、LPCの先にLPC-ISAブリッジを用意する構造になっている。
ロードマップ末尾にある「SiS550」は、SiS540に旧RiSEのm6P CPUを内蔵したSoCである。SiS550がベースモデルで、「SiS551」がSiS550にメモリースティック/SmartCardインターフェースを追加したものだ。「SiS552」はさらに、ビデオデコーダーやデジタルオーディオインターフェース、それとDVDアクセラレーターまで集約したものである。当初は200MHz駆動の製品がリリースされ、266MHz品の計画なども明らかにされていたが、最終的にリリースされたかどうかは明確ではない。
今回のまとめ
・台湾のチップセットベンダー大手SiSは、1987年創設という古株のメーカー。ISAベースのIntel 486用チップセットからその歴史は始まる。しかし、2000年以降自社製造路線を目指したことにより、台湾UMCと対立。最終的に吸収合併されてしまう。
・1992年頃、SiSは初のSocket 5用チップセット「SiS500」シリーズをリリースする。競合のVIA同様、当初は4つものチップを必要とした。ノースブリッジが1チップ化されたのは、1996年に登場したSocket 7対応の「SiS5596」になる。
・1997年には、同社初のグラフィックス内蔵型「SiS5597/5598」をリリース。1999年に登場する「SiS540」では、3Dグラフィックスのほか独自のAGP拡張も導入した。
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