デジタルテレビの信号を無線LANで送るのは…大変
デジタルテレビ放送が今のように本格化する以前、アナログ放送の映像をデジタル信号に変換し、無線LANを経由させて家中どこでもテレビを見られるようにした製品があった。「きれいな映像でテレビは見たいが、アンテナ配線がわずらわしい」と感じるユーザーが多かったからだろう。デジタルテレビでもそれは同じ。地上波デジタル放送に加え、BS/110度CSデジタル放送も受信しようとすると広帯域対応の太いアンテナ線が2本も必要になる。
アンテナ線不要で、無線LANの電波が届く範囲なら家中どこでも高精細のテレビを見られる。それを実現したのがNECのワイヤレスTVデジタルだ。機器の外観は、NECアクセステクニカの無線LAN製品のデザインを踏襲する、ちょっと大きめの無線LANルーターといった感じだ。
背面にはB-CASカードスロットと地デジおよびBS/110度CSデジタル放送用のアンテナ入力端子を備える。受信した放送信号は無線LANパケットに乗せて伝送、受信側パソコンで放送信号をデコードして、映像を表示する。
地上波デジタル放送の帯域は最大約17Mbps、BSデジタル放送では最大約24Mbpsもある。デジタル放送を無線LAN経由で伝送するなら、これ以上の実効データ転送速度が必要だ。一方、無線LANでは信号とデータ部の比率はほぼ半分。接続速度が40Mbpsあれば、実効データ転送速度は20Mbps程度と見積もることができる。無線LANで伝送するといっても、デジタル放送の場合は著作権保護機構が必須であり、無線伝送信号中のデータ比率はさらに低下する。
そのためワイヤレスTVデジタルでは、無線LANの接続速度が100Mbpsの時にフルハイビジョンの映像を伝送する「通常モード」とし、接続速度が40~100Mbpsの時には「データ量制限モード」にして、一部機能を制限した表示となる。また接続速度が40Mbpsになるとテレビ信号の伝送は中止され、表示(録画)も中断。テレビ視聴ソフト「SmartVision」そのものが終了してしまう。
上記の伝送帯域の件と、B-CASカードを用いた受信認証、および設定時にノート本体とワイヤレスTVデジタルのヒモ付けがなされることもあって、1台のワイヤレスTVデジタルでテレビ放送を表示できるパソコンは1台だけだ。そのためか、ワイヤレスTVデジタルは単体で購入することができず、店頭で買えるのは今回のLaVie Mか、大型ノート「LaVie L」の同梱モデル(LL870/AS)のみとなっている。ワイヤレスTVデジタルを体感したければ、最初から同梱モデルとなっているLM370/AS6を選ぶのが手っ取り早い方法と言える。
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