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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第51回

VIAチップセットの歴史 その2

ライバルの台頭で失速したVIAのAMD向けチップセット

2010年05月17日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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VIAの自社CPU向けチップセットロードマップ

VIAの自社CPU向けチップセットロードマップ

インテル互換バスからスタート
VIAの組み込み向けチップセットとその将来

 さて、最後が自社CPU向けである。連載10回でも説明したように、VIAは2001年からMini-ITXフォームファクタを武器に、組み込み向けCPUに本格的に舵を切り始めた。当初の「VIA C3」などは、Socket 370と同じバスインターフェースを利用していたから、チップセットもこれと共通であった。

 そうは言っても、Mini-ITXという特徴を生かすためには、通常のチップセットよりもやや集積度を上げる必要がある。そうした特長を持たせたのが、まず2002年6月に発表された「CLE266」である。構造的には、前回で触れた「Apollo Pro 266」にUniChrome Proを統合したような構造であるが、液晶ディスプレー用やテレビ用の出力を備えたり、MPEG-2デコーダーを強化するなど、やや方向性が変わってきている。

CLE266搭載マザーボードの例

CLE266搭載マザーボードの例

 これに続き、FSBの強化やチップセット更新などを施されたのが、2004年3月にリリースされた「CN400」である。VIAの場合、「N」はノート向けの製品で低消費電力品が用意されるが、これをそのまま組み込み向けに転用した形だ。

 2005年12月には、「V4 Bus」に対応した初のチップセットである「CN700」がリリースされる。V4 Busとは、当初は「Banias Bus」と呼ばれており、ようするに「Pentium M」との互換性があるものだったが、前回取り上げた訴訟和解の条件として、若干プロトコルを変更して、一応は互換性をなくしたものである。

 当初この詳細を聞いたときには「例えば組み込み向けではマルチプロセッサーは必要ないのに、Banias BusはP4バスとプロトコル上は共通性があるので、無駄にマルチプロセッサーがサポートされていた。そのため、こうした機能をプロトコルから省いた」などと説明を受けたものだ。しかしその後、マルチプロセッサーで利用するデモが披露されたこともあるなど、マルチプロセッサーを全面的に省いたというわけではなかったようだ。

 CN700は先述のCN400をベースに、V4 Bus対応やDDR2メモリー対応を加えたものだ。このCN700をワンチップ化したのが、2006年9月にリリースされた「CX700M」。グラフィックス機能を若干強化した反面、パッケージのピン数の制約が厳しかったのか、I/Oは若干省略されている。なお、CX700MにMacroVision対応を施した「CX700M2」も、同時に発表されている。

CX700M2

CX700M2

 2006年11月には、PCI Expressに対応した「CN800」がリリースされ、翌2007年2月にはこれを若干強化した「CN896」がリリースされる。このCN896の最大のポイントは、DirextX 9に対応したChrome 9を統合したことだろう。

 実は2005年6月のプレスカンファレンスでは、「CN900」というチップセットが、それも2005年第4四半期にはサンプル出荷が始まる、といった予定が掲げられていた。だが、その後CN900がロードマップから消えているあたり、いろいろな問題があってキャンセルされたらしい。

 当時はまだCN800の計画はなく、CN900そのものも、おおむねCN800相当のスペックに近かったようだ。そのため、CN800のPCI Express対応版をCN900にすると、社内的に誤解を招きやすいというあたりが理由だったのではないかと思う。

 このCN800をベースにワンチップ化されたのが、2008年4月登場の「VX800」と、2009年3月にリリースされる「VX855」である。この頃はまだ、周辺機器もPCIで接続するものが多かったためか、VX855ではわざわざPCI Expressレーンを減らしているのがちょっと興味深い。

VX800を搭載するMini-ITXマザーボードの例

VX800を搭載するMini-ITXマザーボードの例

 これとは別に、DDR3 SDRAM対応や「Chrome 520」GPUを統合したのが、2009年12月にリリースされた「VN1000」だ。2010年3月には、これのワンチップ版である「VX900」もリリースされている。

 2005年以降のVIAの動向をみると、製品展開が極めてゆっくりになっている。これは組み込み向けでは当然のことで、むしろPC並に次々に製品を投入したら、顧客が困ってしまうだろう。

 2008年にチップセットの開発部隊は、CPUの開発チームに吸収されており、それまで同部隊を率いていたリーダー以下のコアメンバーは、ASUSTeK傘下のASMedia Technology社に移動したなんて話も聞こえてきていた。その意味では、VIAは今後、自社CPU向け以外のチップセットは手がけないだろうことが明白だ。

 すでに同社のチップセットのページを見ると、CN700以前の製品についてはすべて「VIA no longer sells some or all of these chipsets」となっていることからも、これは明らかだ。これはこれで十分健全なビジネスである、とは言えそうだが。

今回のまとめ

・VIAのAMD CPU向けチップセットは、K7用として1999年11月に登場した「KX133」に始まる。その後はより高速なメモリー、FSBに対応すべく強化されていったが、400MHz FSBへの対応で出遅れるうちに、K7の市場自体が収束してしまった。

・K8用のチップセットは、2003年4月にアナウンスされた「K8T800」から始まるが、NVIDIAのnForce 3に後れを取る。その後もハイエンドではNVIDIAの後塵を拝し、ローエンドやGPU内蔵型ではATIがライバルとして台頭するなど、苦戦のうちにAMD向けビジネスから撤退する。

・自社製CPU向けチップセットは、インテルCPUと共用のSocket 370用からスタートした。その後はPentium Mバス互換のV4 Busを採用し、新しいメモリーやGPU内蔵、1チップ化など組み込み用途向けに発展を続けている。

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