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Citrix Synergy 2010レポート

デスクトップ仮想化もシトリックス風の味付けで

2010年05月14日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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クライアントPC仮想化の詳細

 同氏がクライアントPCの仮想化の最新技術として紹介したのが、「Citrix XenClient」だ。これは以前から開発中であることは公表されていたが、今回のCitrix Synergy 2010のタイミングでRC(リリース候補)版のダウンロード提供開始がアナウンスされた。まだ最終的な完成バージョンではないが、無償で評価可能だ。

 XenClientの中核コンポーネントはクライアントPC上で動作する「ベアメタルハイパーバイザ」で、要はホストOS上に構築するバーチャルPC型ではなく、ハードウェア上で直接動作するハイパーバイザを利用した仮想化技術ということになる。

 ただし、クライアントPCで仮想化を利用する、ということ自体に関しては特段新しい技術とまではいえないだろう。XenClientのポイントは、ベアメタルハイパーバイザに加えて同社がこれまでXenAppで培ってきた技術である「レシーバー」と「シンクロナイザー」を組み合わせている点にある。単にクライアントPC上で仮想化された別OSを利用できるというだけなら、Windows 7の機能として用意されたXPモードとさして変わらないという見方もできるのだが、レシーバーとシンクロナイザーによって、サーバ側から仮想マシンの管理や制御が可能になり、企業ITシステムの運用管理体制の中にクライアント上の仮想マシンを完全に含めることが可能になる。

XenClientのシステム・イメージ。シトリックスならではコンポーネントとしてレシーバーとシンクロナイザーが加わる

 クライアントPCの仮想化によって、あるクライアントPC上に、ユーザーが個人的に利用する「プライベート」環境と、業務のために利用する「ワーク」環境を構築し、必要に応じて使い分けることが可能になる。それぞれに異なるアプリケーションをセットアップし、異なるセキュリティポリシーを適用できる。そのため、日本でも時々報道されるような、「業務上必要なデータがP2Pソフトウェア経由で流出/漏えいしてしまった」といったアクシデントの防止には効果的だが、これは別にXenClientに限らず、仮想化を適切に運用すればすぐにでも得られるメリットだ。

 これに対してXenClientでは、サーバ側のXenDesktopのサーバと通信するためのレシーバーとデータ同期を実現するためのシンクロナイザーがあるため、仮想マシン環境を常時サーバー側でバックアップすることも可能だ。仮想マシンのイメージをデータとして常時リモートでレプリケーションしている状況だと考えればよいだろう。この状況では、たとえばあるユーザーが作業を中断して別の場所に移動し、そこに設置してある別のPCで作業を再開する、という場合に中断した時点のイメージを新しいPC上に呼び出すといった使い方が可能になる。

 仮想化技術を活用すれば物理的なハードウェアとソフトウェア的な環境を分離して相互に独立に運用/管理することができるのだが、機能的には実現していても現実世界で活用するのは難しい面がある。たとえば、クライアントPCの場合だと、仮想化された環境自体が内蔵のHDD上に保存されることで物理的な特定のPCに密接に結びついてしまっていたりする。単に仮想イメージファイルをコピーして持ち出せば済む話ではあるが、その作業をユーザーに任せてしまうと、逆にユーザーの作業負担を増やしてしまう結果になりかねない。

シトリックスの仮想化デスクトップは、XenClientが加わって4種類の技術を自在に組み合わせることができるようになった

 運用管理負担の軽減まで視野に入れ、エンタープライズ環境で現実的なソリューションとしてクライアント仮想化技術を運用するのであればまさに不可欠といえる要素に対して、Citrixがもっとも強みを持つ技術を活かして組み合わせた結果がXenClientになったと考えるのが分かりやすいだろう。

 なお、別途担当者に尋ねたところ、XenClientで利用されるベアメタルハイパーバイザはXenServerのハイパーバイザがベースとなっているが、グラフィックスの扱いや周辺デバイスへの対応など、クライアントPCで重視される部分の機能強化を行なったり、オーバーヘッドを減らすためのチューニングを行なったりといった独自の変更を加えたものだという。

 こうしたクライアントPCの機能を活かすための開発には、インテルとのパートナーシップが活かされており、両社の密接な協力関係によって実現されたという。従来の仮想化製品では、PCに実装されたグラフィックアクセラレータの機能が活用できないなど、本来のパフォーマンスを活かせない状況が多々あった。しかし、XenClientでは高精細ビデオの再生や3Dゲームなど、従来仮想化環境には不向きとされてきた作業もネイティブ環境と比べて遜色ないレベルで実行できることがデモで示され、会場からは賞賛の声が上がっていた。

(次ページ、関連するさまざまな新発表)


 

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