このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第22回

ボカロで「自由」を手に入れた 佐久間正英が語る音楽の未来

2010年05月08日 12時00分更新

文● 四本淑三

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「僕がやんないで誰がやるの?」

―― 今日久しぶりにお会いして、佐久間さんも僕らと似た考えなんだと知って、ちょっと驚きでした。

佐久間 いや、でも最近はみんな思いはじめているんじゃないかな。どこかで変だとずっと思ってきたことが、ネット社会になって気づかされる感じはあるよ。

―― でも佐久間さんはプロデューサーとして仕事してきたわけじゃないですか。いくつやったか覚えてます?

佐久間 憶えてないけど、うーん、140回くらい?

―― その立場で言って、今の状況はどうなんですか? 制作から配信まで何でも一人でやれると、プロデューサーは要らない、なんて方向に行きかねない。

佐久間 ううん、別にいいよ。

―― あら、あっさり。

佐久間 プロデューサーなんていないに越したことないよ。いなくてできるんだったら、より自分たちの好きなことをやりたいようにできるじゃない。ミュージシャンが伸びていく過程で、その方法論が分からないから、プロデューサーみたいな人が必要なだけで。

―― 逆にボカロの世界って作詞、作曲、演奏、動画やマスタリングに到るまで分業化が進んでいるんです。そこに專門のプロデューサーがいても面白い状況かな、と。

佐久間 それ面白いね。

―― もし頼まれたらやります?

佐久間 うん。理解できるものならやるよ。

―― またそんな安請け合いして。

佐久間 ま、面白いことってお金にならないよね。僕だって、毎晩音楽を上げてるけど。でも少なくとも、自分のためにはいいよ。あれを聴いて、いい曲だと思ってくれた人がいたら、その人のためにいいだろうし。それに、この先の予感みたいなものもある。

―― 予感って?

佐久間 自分の周りの動きを見ていても、なにか流れが急激に変わっているように感じるね。転機がやってきてる気がする。そういうのって一度に来るじゃん?

―― その辺り、昔から敏感ですよね。

佐久間 新しいもの好きだからね。だって四人囃子なんかやってるのに、プラスチックスやっちゃうんだよ。普通やんないよね。

―― 四人囃子みたいにテクニカルなバンドをやっておきながら、そこはバッサリ捨てちゃって。

佐久間 あんな下手な人たちとねえ。「ドラマーなんて要らないから、リズムボックスにしちゃえ」って僕が言ったんだけど。それがテクノの時代の先駆けになるわけだけど。そういう人だから、そりゃやるよ、ボーカロイドも。

―― 「ボカロなんか使って」って、周囲から言われてないですか?

佐久間 いや、知らない。でも言われたとしたって、僕、テクノの人だし。僕がやんないで誰がやるの?


著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

■Amazon.co.jpで購入

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン