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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第22回

ボカロで「自由」を手に入れた 佐久間正英が語る音楽の未来

2010年05月08日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「誰かに歌を頼むのも、ナニじゃない」

―― あの、佐久間さんは何でボーカロイドを使い始めたんですか?

佐久間 えっ! だって四本くんが「Macで使える」ってTwitterに書いてたからじゃない。それで「曲ができたら取材に来る」って言うからさ。

佐久間正英さん

―― あれっ、本当にそうだったんですか。知らないフリして話に乗っかってるのかと思っていました。

佐久間 もちろんボーカロイドは出た時から知っていて、ずっとやりたかったんだけどね。だけどWindowsが要るんじゃなあ、って

Mac使い : 佐久間さんは最初期からのMacユーザー。1984年発売のソロアルバム「LISA」は、Appleが発売した世界初のGUI環境搭載パソコンの名前に由来している

―― どうですか、使ってみて。

佐久間 やっぱり使いづらい、インターフェイスが。でも、一般の人には入りやすいかも知れないね。昔のWindowsのシーケンサーみたいだから。だけど細かい設定がやりにくいし、自由度低い。

―― でも、ソフトが届いたその日のうちに最初の曲を上げていたじゃないですか。

佐久間 だって簡単だから。

―― そうか。細かい設定はやりにくいけど、打ち込むのは簡単、ってことですよね。

佐久間 そうそう。せっかくあそこまでやったんだから、もったいないよね。もっとコントロールしやすくしてほしいな。他の会社が参入してきて、もっと磨き合わないとダメかも知れないけど。

―― だそうですよ、ヤマハの皆さん! 先日もクリプトンから「初音ミク Append」が出たりして、声の種類は増えてますけど。

初音ミク Append

佐久間 声の種類が選べてもしょうがないんだよね……。言ってしまえば、声は誰でもいいわけ。それより表現のさせ方。たとえば強い声と弱い声も、音量でしか表現できない。アタックの強さも、ビブラートもコントロールできないし。人の声って、ひとつの言葉でも表情があるでしょ。語尾を落としたいこともあれば、下から歌い出したいこともある。四本くんは、メロダインは知ってる?

初音ミクAppend : 2010年4月30日に発売された、クリプトン社の合成音声ソフト「初音ミク」の新バージョン。6種類の音声バリエーションを使いわけられる

メロダイン : 音声編集ソフト「MELODYNE」。音声データにピッチシフトやタイムストレッチといった効果をつけ、音楽をつくるように音声を編集できるのが特徴

―― はい、あれでピッチの操作をしている作家もいますよね。

佐久間 でしょ? あれが今のところ、一番合理的なインターフェイスかなと思うんだよね。僕は面倒くさいからやってないけど。

―― 毎晩上げる曲のことですからねえ。

佐久間 それ始めたら寝られなくなっちゃうからねえ。

―― とはいえ「ボカロは3曲で終わり」なんて最初は言ってたのに、どんどん上げてるじゃないですか。

佐久間 ちょっと面白くなってきちゃってさ。今までインストしか上げられなかったから。かと言って誰かに歌を頼むのも、ナニじゃない。僕は自分で歌えないから、これはいいものをゲットしたって感じ。

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