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iPadは、アメリカのメディアや社会を変えるのか?(後編)

2010年05月07日 13時30分更新

文● 飯吉透

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欧米メディアの迅速な電子化への対応

 電子書籍販売サービスとしては、アップルの「iBooks」と、米アマゾンが無料配布しているiPad用の「Kindle」アプリが2大勢力だ(App Storeで見る)。両者を比較すると、購入できる電子書籍の数ではAmazonが圧倒的に多い。

 ビューアーについても、iBooksの方はページめくりのアニメーションなど、細部のルック&フィールにこだわりが感じられるものの、付箋やメモなどを付けられるという実用的な便利さという点では、Kindleアプリのほうに軍配が上がる。この辺りは、今後の競争を通して、双方ともよりすぐれたビューアーに進化していくだろう。

 メディア側の対応を見てみると、新聞や雑誌、報道などについては、各ウェブサイトがiPadに対応しつつあるのはもちろんだが、専用のビューアーアプリを用意することで、サービスの差別化を図るという動きも見られる。

 例えば、ニューヨーク・タイムズ紙は編集局によって厳選されたニュースコンテンツを配信する「NYT Editors’ Choice」というアプリを、USA Today誌は新聞の紙面をイメージした専用ビューアー「USA Today for iPad」をそれぞれ提供している。この辺りは、早期に利用者を「囲い込む」ことによって、来るべき有料サービスへの移行に備えている様子がうかがえて興味深い。

NYT Editors’ Choice。価格は無料

 米三大ネットワーク局の一つであるABCやアメリカの公共放送局NPR、イギリスの国営放送局BBCなども、放送番組やニュース映像などを中心とした情報を提供する専門ビューアーを提供している。営利/非営利を問わず、iPadの登場に合わせた欧米のメディアの迅速な電子配信への対応の素早さは、非常に印象的だ。

NPR for iPad。価格は無料


教育向けの分野でも注目を集める

 iPadは、ハードやソフトという点からみれば、単なる画面の大きいiPhoneやiPod touchに見えるかもしれない。ただ、その画面の大きさと携帯性によって、iPhoneやiPod touchなどとは異なるまったく新しい使われ方の可能性が広がるということは、実物をしばらく使ってみないとなかなか実感できない。

 例えば「The Elements」は、インタラクティブな「元素表」から美しいアニメーションやシミュレーション付きの解説で各元素について学べる秀逸な教育ソフトで、本格的な電子教材時代の到来を予感させる。

The Elements。価格は1600円

 米ワイアード誌によれば、すでにアメリカにおけるいくつかの大学で、iPadを本格的に導入する動きが早くも出てきているという。ペンシルベニア州にあるシートン・ヒル大学では、2010年の新年度が始まる9月から、2300人以上の学生と教員にiPadを配布する予定だ。同大学は、iPadによる電子教科書の普及を推進することで「学生の教科書代を大幅に下げられ、さらに教員もより多くの種類の教科書を使えることになる」と、大きな期待を寄せている。

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