「マルコ」と「山田井ユウキ」ふたつの名前を持つ理由
―― 山田井さんがライターになったきっかけも、武田さんと同じように、編集者から声をかけられてという感じですか?
山田井 そうですね。2007年頃ですが、「映画のレビューを書いてくれないか」と声をかけていただいたのが始まりです。すでにサイトには映画レビューがほとんどなくて、漫画とボーイズラブ系が中心だったんですよ。でも、昔書いた映画レビューが好きだと言ってくださる方も結構いて。それでお仕事につながるというのは本当に嬉しかったですね。だから、いま表には出していませんけど、過去にやったことも無駄ではなかったと思います。
―― 初めて商業誌にライターとして書くときはどんな感じだったんでしょう。私は以前、編集プロダクションというライターの事務所みたいなところで働いていたんですけど、そこではゼロの状態から先輩ライターの下について色々学んで、上達したらようやく記事を書ける、というプロセスがありました。それでいざ自分が書くとなったとき、「自分の責任で書くのは怖い」といって辞めていった後輩が数人いたんですよ。そういう怖さみたなものはありましたか?
山田井 怖さというのはなかったですけど、自分の記事が公のメディアに載るという感慨深さと緊張はありました。こんなことを言ってはアレなんですが、特にインタビューは緊張しましたね。編集者の方もぼくが慣れていないと分かっているから、最初は一緒についてきてくれるんですよ。でも、しばらくすると完全に一人で取材することになる。そのときはもう……。武田さんも、そういうことありませんでした?
武田 ありましたね。勝手が分からないので、最初は編集者さんの見よう見まねという感じで。でも、ぼくも怖さみたいなものはなかったです。やっぱり自分のサイトで何かしら発表して、色々反応をもらっていたという経験があったのが大きいかなと思います。
―― 山田井さんのライターとしての記事は、ニンテンドーDSで通信して「すれ違う」ユーザーの属性を集計したり(マイコミジャーナルの記事)と、サイトとは別のジャンルのものも増えていますよね。
山田井 ある意味、意図的にやっています。編集者の方からは、カフェオレ・ライターのテイストやジャンルを求められていると思うんですけど、ぼくとしてはニーズのある範囲で可能性を色々と試してみたいというのがあるんですよね。ニンテンドーDSの記事に関しては、文章の書き方も多少変えています。ただ、根底にあるのは、自分が面白いと感じるもの。そういうネタを媒体のカラーや読者層を想像しながら出して、編集者さんのオーケーが出たら記事にするという感じです。
―― すると、将来はカフェオレ・ライターの「マルコ」と、ライター「山田井ユウキ」を切り離していくことになりますか?
山田井 結果的にそうなるかもしれません。いや、実は最初にライターの仕事をもらったときは、マルコのままでいいかなと思っていたんですよ。でも、編集者の方と打ち合わせしているうちに「ぼくを知らない読者がイタリア人と勘違いするかも」みたいな話になって(笑)。別の名前を作ったほうがいいとなったんですよ。取材先にも「マルコと申します」と連絡するのもあれですし(笑)。
ただ、ぼくとしてはどちらの名前で活動してもいいんですけど、読者からすると混乱のもとになるかなという気持ちは今もあります。もしかしたら、サイトのほうも山田井名義に変えることもあるかもしれません。
武田 そうなんですよね。ぼくも昔は「スマイル」というハンドルネームで活動していましたけど、今はどちらも「武田タケ」にしています。でも、ライターとしての活動を考えると、もっと日本人的な名前のほうが都合がいいんですよね。サイト上なら別に不都合はないんですけど、取材などで自分の口から「スマイルです」というのは、なかなか……(笑)。
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