このページの本文へ

松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第7回

これは生活へのモノリスだ!~iPadで気になる5つのこと

2010年05月06日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

iPadで気になること その3
家でだけ使う? それとも外に持ち出す?

 さて、外出先でのネット回線の確保の話を書いたが、そもそもiPadは家の中で使うデバイスなのだろうか、それとも外出先でも使えるものなのだろうか。

 iPadを発表時のジョブズは、ソファーに腰掛けて足を組み、iPadのデモを行なった。リビングで使われるデバイスとして定義していることがわかる。しかしこれは日本の住宅事情にフィットするのだろうか。日本の多くの家庭には専用の仕事部屋のような場所はなく、リビングの脇にPCが置かれているパターンが多い。そんな環境でPCとiPadが2台共存するだろうか。

iPad発表会での一コマ。リビングを意識してか、ソファに座って操作している

 もちろんPCの場合、起動するまでに時間がかかったり、さらにそこからブラウザを起動して、ようやくウェブを見ることができる。しかしiPadは、スリープから解除してSafariを立ち上げればすぐにスタートだ。環境にもよるが、5分以上iPadの方が目的のウェブサイトにたどり着く時間が早いと思わないだろうか。

iPhoneやiPod touchに慣れている人なら、すぐに使い始めることができるだろう。それだけでなく初めて見た子供であっても、画面に触ってすぐにアプリを立ち上げて使いだす。iPhoneのインターフェイスのスゴさは画面が大きくなってなお光る

台所でレシピのアプリを見ながら料理をする、といった今までパソコンが入り込まなかったところにまで持っていける。家の中であっても“モバイル”デバイスになったと言える

 これは外出先における、iPhoneをはじめとするスマートフォンでも同じことが言える。電車でのちょっとした時間に会社のメールをチェックできるかどうかといった部分について、スマートフォンのメリットがしばしば語られてきたが、iPadでは同じことが自宅の中にも持ち込まれることになる。

 もっとも外出先に持ち出すかどうかについてはなかなか微妙なところだ。Wi-Fiモデルの約680gは、ネットブックと比べてすごく軽いというわけではないのだ。しかし薄くてかさばらず、バッテリーライフの関係で、本当にiPad1枚を持ち歩けば済んでしまう。

 普段からPCを持ち歩いている僕にとっては、その日の出先での作業次第で、MacBook Air(実はiPadを手に入れたその日に壊れてしまったのだが)かiPadを選択するようになった。カバンは軽くなり、またカバン自体のチョイスも広がった。肩こりに悩まされる男性はもちろん、持ち物にこだわりたい女性にとっても邪魔にならない存在になってくれそうだ。

iPadで気になること その4
iPadは仕事に使えるのか?

 先に結論を言ってしまえば“Yes”だ。現にこの原稿は、iPadのソフトキーボードとPages(App Storeで販売されているアップル製のワープロソフト)のみで書いている。

アップルが提供するPages。ワードプロセッサとして、段組みや画像配置、回り込みなどのひととおりの機能が備わっている。100ページ単位のドキュメントを作らないのであれば、これで十分だ。キーボードDockやBluetoothキーボードも利用できる

 前述のようにiPadを手に入れた日にメインマシンのMacBook Airが壊れてしまい、iPadのみで1週間過ごすことを余儀なくされた。抱えていた原稿に加え、企業向けのプレゼンテーション、大学の授業、長崎への出張などのイベントが目白押しだった。しかし文章もプレゼンテーションも最初から作ることができた。

 Keynoteによるプレゼンテーション作成は、正直難しいのではないか、と思っていた。しかしキーワード、写真、グラフなどの要素を作り込んでいく作業は、Macで動くKeynoteやPowerPointよりも使いやすかった。

 iPadのKeynoteでは、操作したいオブジェクトを選ぶと、そのオブジェクトに対して操作できる機能が表示される仕掛けになっているのだ。メニューがダイナミックに変化し、もちろんそれらをタッチして操作する。この直感性は未来のアプリケーションの操作性を追求している、とハッキリ体感できるものだった。

一番感動したのがKeynote。Macにも同名のソフトがあるが、ゼロから使い始めるならば圧倒的にiPadの方が使いやすい。たとえばアニメーションを作る場合、オブジェクトをタッチして、表示されたポップアップから動作を選ぶといったUIは、なぜパソコンにこれがないのか疑問に感じるほどだ

 また通信が使えるのであればEvernoteは非常に戦力になる。iPadはEvernoteにもっともマッチするデバイスであると言っても過言ではないだろう。

iPadのキラーアプリとなるであろうEvernote。録音しながらメモがとれるデジタルノートとしての機能を、デバイスそのものやアプリの軽快さで実現できてしまう。iPadを手に入れたら、真っ先に導入したいアプリの1つだ

 軽くて持ち出すことができ、きちんとしたスピードでタイピングができ、さらにPDFなどの書類の閲覧や検索にも対応できる。そして、録音しながらメモを取る機能もiPadならではだ。ブリーフケースを持ち歩くようにiPadを1枚持っていれば、Evernoteにたまっているアイデアメモやキャプチャーした書類、雑誌などにすぐアクセスできる。

 iPadを導入することによって、よりクラウドへ、よりライトに、よりシンプルに、という方向へコンピュータの使い方がシフトしていくような感覚だ。それを促すほどのパワーがあるデバイスがiPadなのかもしれない。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン