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iPadが変える電子書籍の未来

どうなる、デジタル教科書――学習における学校図書館活用を

2010年05月08日 09時00分更新

文● 高橋暁子

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学校図書館を学習に活用せよ

 このほか講座では「学校図書館と教員養成」をテーマに、付属図書館長・理事・副学長(研究・付属学校等担当)の長谷川正氏が、「文章が正しく読めないことは学力低下につながる」と指摘。「文章を正しく読める生徒を育てるためには、学校図書館を利用できる教員を養成することが重要」とする講演があった。

付属図書館長・理事・副学長(研究・付属学校等担当)の長谷川正氏

 全国学校図書館協議会理事長の森田盛行氏は、「学校図書館によって変わりつつある近年の教育現場」というテーマで語った。学校図書館は、読書センターのほかに、学習センター・情報センター・教員支援センターとしての役割を持つ。ただし、「公立学校への司書教諭や学校司書の配置率はまだ低く、学校図書館を活用するためには、管理職の関心と理解が必要」とした。

 このほか、東京学芸大学側からは、成田喜一郎氏(教職大学院教授)、対崎奈美子氏(非常勤講師)、森本康彦氏(情報処理センター准教授)のほか、中山美由紀氏ら附属学校司書8名が登壇して大いに会場を盛り上げた。

会場に掲示された付属学校図書館の活動風景

 また、会場にはこの日のために、幼稚園から高等学校まで全13校の学校図書館から紹介ポスターと副校長先生の応援メッセージが寄せられ、さまざまな種類の学校に向けた人材を輩出し、かつ附属学校も多い、東京学芸大学ならではの総合力がアピールされていた。


「角川つばさ文庫」で小中学生に読む楽しみを

 角川書店は、2009年3月に同社初の児童向けレーベル「角川つばさ文庫」を創刊した。2008年に角川文庫が創刊60周年となったのを期に10代を対象に調査したところ、小中学生に角川グループの様々なジャンルの文庫が読まれていることが判明。それをヒントに、文庫を読む前の小中学生に向けて読書の楽しさを体験してもらうために創刊を決めたものだ。

角川書店編集局局次長の堀内大示氏などによる角川つばさ文庫の紹介

実務作業を担当した角川つばさ文庫編集長の松山加珠子氏

 角川書店は現在、東京学芸大学と学校図書館の稼働率をいかに上げるか、そしてどんな本が学校図書館に必要とされているかなどを研究して発表していく共同研究プロジェクト「つばさ図書委員会」を進めており、学生による活動報告も行われた。

 コンセプトは、「“現在の学校図書館にある本の8割はほとんど読まれてない”という指摘も一部にある昨今。こうした状況を改善し、より貸し出される本を作るにはどうすべきか、より図書館を活性化するためには何ができるのか、出版社や大学の立場から探っていこう」というもの。

 図書館に活気を取り戻せる企画を提案したいと、学校図書館を国語・社会・理科などの学習に活用できる授業案を企画検討中だという。

 「出版社として児童書に疎かったので、子どもの情報を得るためには、図書館の現状を知ることが肝要。子供たちのあいだでどのように口コミが広がっていくかも知りたい」と考えたからだ。「本屋には週末しか行かないが、学校には毎日行き、学校には必ず学校図書館がある。学校図書館は小学校中学校の合計で本屋より数で上回る」(角川つばさ文庫 松山編集長)。

 角川つばさ文庫には、オリジナル作品のほか、宗田理「ぼくらの七日間戦争」、筒井康隆「時をかける少女」、ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」などのベストセラーにイラストを入れた形で刊行。エンターテインメントとしての読書を推進するため、あえてイラストをできるだけ入れた体裁にしている。

 「20年前のベストセラーでも、カバーを変えるだけで今の物語としてよみがえることもある」。

学生によるつばさ図書委員会の活動報告の様子

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