モラル意識が低い中高年の来場多数
それはそれで面白い!?
振り返るに北京五輪のときには、開会式を筆頭に中国国内の盛り上がりはもの凄いものがあった。聖火リレーのときの世界各地での反中国的抗議運動には、世界中の留学生をはじめとした在外中国人が一致団結して立ち上がり、ネット上でもアンチ中国な外国人に対抗しようというムーブメントがおき、専用サイトが立ち上がるわ、愛中国シンボル画像が大流行するわと、ネット世代の若者の団結っぷりを嫌と言うほど感じたものだ。
しかし上海万博は北京五輪と対極にあまりに冷ややかだ。これはもちろん北京五輪で全世界的イベントを経験してしまったから、というのはあるだろう。北京五輪では先進国各国聖火リレーの行く先々で「フリーチベット」を訴えられ「愛中国」で団結したのに対し、上海万博は主に中国国内で、中国人も悪いとわかっていて止められない「パクリ」や「低いモラル」といったボロが次々と出た(ついでに日本を筆頭に外国メディアがそれに便乗した)ため、ただただ自国民を嘆くほかないというのも理由の主たるところを占めている。
注目を浴びたリハーサル初日の写真を見るに、中高年の参加者が殆どを占めている。これはその日(20日)が火曜日であり、平日であったからだ。
中国駐在が長い日本人なら共感できると思うが、35歳以下のネット世代と、それ以上のネットを利用しない中高年世代(特に老年世代)では、モラルが随分と異なる。日本人から見れば若者も老人も五十歩百歩かもしれないが、中高年は激変する都市環境に対応できず、痰吐き、ゴミのポイ捨て、行列への割り込み、幼児の路上での用足しなど昔ながらの習慣を変えようとはしない。
中国人は老人を敬うことが大前提にあり、中高年のモラルの低さに対する不満は多くの若者は表向きには出さないが、しかしリハーサル初日のレポートの中では、モラル無き中高年を軽く非難するコメントも見受けられた。
おそらく明日の上海万博開幕からしばらくは、ネットで団結する若者たちは生暖かく万博の行く末を見守り、時間と金が余る上海や上海周辺に住む中高年の人々が中心となってこの国際的大イベントに大挙して訪れる。ゴールデンウイークに限れば、5月1日から3日までが中国でも「労働節」(メーデー)のため連休となり、中国中から中高年を中心に大勢の人々が訪れる。そのカオスぶりは想像を絶しよう。大柄で屈強なガードマン(警察・軍隊)の大量投入により不自然なまでの整然っぷりとなるかもしれない。
開幕からしばらく経てば、是が非でも見たいという上海およびその周辺から集まった中高年の入場ラッシュは収束する。収まった後は若きネット世代の人々が徐々に上海に訪れるだろう。彼らがブログや掲示板で報告すればそれが呼び水となり、さらに中国中の都市の若者を会場に呼び寄せる。中高年よりはモラルがある若者が多く来場するため、そのときにはリハーサル初日よりもずっと快適に会場内を巡ることができるだろう。
開幕直後のゴールデンウイークに上海万博を体感するならば覚悟したほうがいい。しかし万博会場に体を張って訪れることで、公式展示以外の様々なネタが収穫できることは間違いない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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