久々の会心作「Xperia X10」を出したSony Ericsson。Xperia X10ブームに乗って業績も上向きはじめた。4月16日に発表した2010年第1四半期(1~3月期)決算で同社は5四半期ぶりに黒字転換を果たし、景気回復期に向けて幸先のよいスタートを切った。
Sony Ericssonは日本のソニーと最大手通信機器メーカーのEricsson(スウェーデン)の合弁会社である。英国に籍を置き、成熟市場の欧州が主要な市場となる。世界シェアは第4位。日本ではこのところ、au向けのCDMA2000対応機が中心だったが、NTTドコモが4月1日にXperia X10の国内モデルである「Xperia(SO-01B)」を発売。ドコモ端末としては「SO906i」「SO706i」以来、約2年ぶりの登場となっただけではなく、Android OS搭載などの話題性もあって、好調な出だしを迎えたようだ。
AndroidらしくないUIが特徴的な「Xperia X10」
第1四半期の黒字転換の大きな要因は大規模なコスト対策だが、製品面で支えたのがXperia X10という。Sony EricssonがAndroid開発支援アライアンス「Open Handset Alliance」(OHA)に参加したのが2008年12月、その1年後に満を持して同社初のAndroid搭載機をリリースしたことになる。
X10は「Android OS 1.6」を搭載しながら、Sony Ericssonのこだわりを表現した。その結果、HTCやMotorolaなどがAndroid端末を投入する中で、Androidらしくない一台となった。独自のミドルウェア「User Experience Platform」(UXP)を導入し、ユーザーインターフェイスにはじまり、「Mediascape」「Timescape」などの独自機能を盛り込んだ。それでいてAndroidアプリマーケットの「Android Market」など、Android端末ならではの機能ももちろん利用できる。
もっともグローバルの視点で見ると、X10は「Xperia」ブランドでは4台目の端末でもある。2008年2月に発表した「Xperia X1」(OSは「Windows Mobile 6.1」)の売れ行きは振るわず、当初目指した“iPhoneキラー”には程遠かった。ハイエンドではSymbianを採用してきた同社がはじめて、Symbian以外の汎用OSを採用したのがX1だった。当時のCEOである小宮山英樹氏は経済紙の取材に対し、実験的だったとして販売台数からの失敗を認めている。
こうした経緯を経て登場したX10は、時間をかけて作りこんだ一台となる。今年2月にSony Ericssonの製品ポートフォリオ全体を統括する上級副社長兼チーフ・クリエーション・オフィサーの坂口立考氏に話を聞く機会があった。坂口氏はこのとき、「いつもブレークスルーがあるわけではない」とポツリと語った。そして「3年ぐらい前から取り組んできたことだが、(Androidの採用、UXPを載せるという作業などは)簡単なことではなかった」と産みの苦しみを語っている。

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