極限まで無駄をそぎ落とした究極の69キー
Happy Hacking Keyboard Professional JP
PFUの「Happy Hacking Keyboard Professional JP」(以下HHKPJ)は、その姿からして異彩を放っている。キー数はなんと69個。ボディーサイズ幅294×奥行き110×高さ39.9mmで、重さ520gと超コンパクトだが、キーピッチは19.05mm確保している。コンパクトな上に、ケーブルの脱着ができるので、バッグに入れて持ち出すこともできる。外出先でネットブックにつないで利用したい。キーストロークは45gで、荷重は45gだ。
キーレイアウトは非常に特殊だ。米Sunの「Sun Type3」キー配列にならったUNIX配列で、「A」キーの真横に大きめの「Ctrl」キー、「1」の隣に「Esc」キーを備えている。ファンクションキーや「Home」「Down」「Del」キーなどは「Fn」キーを使う2ストローク操作になる。
このキーボードには、無理矢理慣れるしかない。集中しても数日は違和感を感じる。保存するショートカットの「Ctrl+S」やファンクションキーを使った日本語変換を無意識にできるようになれば、快適に入力できるだろう。
高級キーボードの代名詞でもある、「静電容量無接点方式」を採用しているだけあり、ほどよい押し心地でタイプ音は静かだ。押し込んだキーを離すときに少し音がするが、低い音でチープさはない。金属音でもないので耳にも付かず、静かなキーボードと言っていい。底まで押し込まなくても入力されるので、スケートのリンクを滑るような高速タイピングが可能。このタイプ感はスペックでは言い表せない快感だ。
標準モデルには英字のみがプリントされているが、何も書いていない無刻印モデルもある。寂れた喫茶店で無刻印モデルを物静かに打って原稿を書く・・・・・・なんとモチベーションの上がることか! 有線好きの筆者だが、この製品だけはぜひBluetooth版を出していただきたい。iPadやiPhone OS4.0では、Bluetoothのキーボードに対応するとのこと。この組み合わせはきっと最強だ。実現すれば、筆者の用途ではノートパソコンを持ち歩かずに済む。
HHKPJの直販価格は2万4990円。耐久性が高く、3000万回のキー寿命を持つので長く使える。量販店のサンプルを人差し指で軽くタイプしただけではわからないかもしれないが、目をつぶりながら1分間両手でいじって見てほしい。究極のキーボードが語りかけてくるはず。そうなったら、日々の飲み代を減らしてでも欲しくなることだろう。
お詫びと訂正:掲載当初、Happy Hacking Keyboard Professional 2と記載していましたが、正しくはHappy Hacking Keyboard Professional JPでした。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2010年5月6日)
ピアニストのようにタイプできる、絹のように滑らかな至高の91キー
Realforce91U
東プレの「Realforce91U」は、前出のHHKPJと同様に静電容量無接点方式を採用したキーボードだ。テンキー単体から、テンキー付きのフルサイズまでラインナップが複数用意されているが、購入したのはテンキーレスの91キーモデル。筆者はブラックが好きなのだが、秋葉原で数店回って在庫がなかったので、ホワイトを買った。
キー配列は日本語で、サイズはW366×D168.5×H38mm、重量は1.2kg。キーストロークは4mmで、荷重は30g/45g/55gの3段階になっている。カスタマイズはできないものの、人差し指で押すキーや「Space」キーは重く、「A」や「Enter」などは軽くなっている。Nキーロールオーバーに対応しているので、高速入力による同時押しでも認識する。
タイプ感は滑らか。クリック感はなく、すーっと押し込める。クリック音はあるが、チープな感じはしない。「Space」や「Enter」キーのタイプ音はややメタリックだが、耳に付くということもない。列ごとに指に合わせて傾斜がつけられており、自然な指運びになる。
キー配列が一般的で慣れていることもあるが、明らかにタイピング速度が向上する。打っていても気持ちがよく、音楽を奏でているようだ。吸い込まれるように指が動き、文章が綴られていく。まさに「至高のキーボード」。デザインには少し言いたいことはあるが、入力デバイスとしては完成品だ。Realforce91Uの実売価格は1万9500円。このタイプ感でこの値段は激安である。
ちなみに、飲み物をこぼしてしまい、キーが反応しなくなってしまったらオーバーホールが必要になる。東プレでの費用は8400円、高級キーボードの上で飲食は避けたい。とはいえ、自分で購入すれば、自然ときれいに使うものだが。
たくさん文章を書くなら
高くても絶対に後悔しない高級キーボードを!
高級キーボードには、文具としての万年筆のような側面がある。安い製品が何十個も買える金額を出して、ひとつの製品を購入するのだ。すると愛着がわき、機会ががあれば常に使いたくなる。もちろん出来もよいので、長時間の利用でも問題ない。あるいは自転車のような側面もある。乗り換えれば、それだけ速く打てるのだ。耐久性も高い。
しかし、万年筆や高級な自転車と同様、万人にお勧めの製品ではない。予算があって単にかっこいい製品を探しているだけなら、もっと安く、もっとデザイン性に優れる(HHKPJには及ばないが)キーボードもあるので、そちらを選べばよいだろう。高級キーボードは、たくさん文章やプログラムを書く人のためのアイテムだ。
筆者の場合、気持ちがいいので10%はキーボードに向かう負担が減り、作業時間が延びる。HHKPJなら外出先で原稿を書く機会が増える。Realforce91Uなら、入力速度が物理的に向上する。1万円から2万5000円近くする高級キーボードだが、元は取れると思っている。
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筆者紹介─柳谷智宣

1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。現在使っているノートパソコンは、東芝のSS RXとMac。とはいえ、1年以上前の製品なので、買い換えを思案中。日経パソコンオンラインで「ビジネスパソコンテストルーム」、週刊SPA!で「デジペディア」を連載するほか、パソコンやIT関連の特集や連載、単行本を多数手がける。近著に「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)、「PDFビジネス徹底活用技」(技術評論社)。

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