クラウドって実はグリッド2.0?
編集S:ということで、Eucalyptusについて「どういうものなのか」を語って頂ければ。できるだけ分かりやすいの希望。
瀬尾浩史:まず簡単なところから行くペン。
やまね:ふむ。じゃあ最初に、「Eucalyptus」ってコアラが食べるユーカリのことだと思うんだけど、なんでユーカリ?
瀬尾浩史:コアラ好きな人でもいるペン?
hito:Eucalyptusはまあなんというか……。
前佛:えっと、「Elastic Utility Computing Architecture for Linking Your Programs To Useful Systems」の略です。……と開発元では主張しています!
あわしろいくや:非常に無茶なネーミングですなあ。
編集S:和訳すると、「プログラムと使い勝手の良いシステムをリンクするための(for Linking Your Programs To Useful Systems)、 弾力性を持つ、ユーティリティ・コンピューティングのためのアーキテクチャ(Elastic Utility Computing Architecture)」と。
前佛:どうみても強引なこじつけです。本当にありがとうございました。
小林:これは……英語としてもなんだか微妙ですし、とにかく「Eucalyptus」という名前にしたかっただけですね。
やまね:UCSB産なんだっけ?
前佛:そうですね。カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のとある研究プロジェクトの産物です。
あわしろいくや:「とある」と聞くと……。
前佛:AIMバーストとか、レベルアッパーとか思い浮かべますが。
やまね:さくらインターネットのことかぁー!
前佛:……あ、いや、今は関係無いですね。
ミズノ:ハリセン怖いですもんね!
編集S:いや待て、さすがにゲストの方にまでハリセンぺぐぅはしないぞ。たぶん。
小林:「たぶん」なんですね……。
あわしろいくや:話を戻すと……。UCSBのって、どんな研究プロジェクトなんですか?
前佛:データセンターを「様々なユーザー」に使ってもらうための研究、ですね。
やまね:あれ? UCSBって、青色ダイオードで有名な中村さんがいるとこだっけ?
hito:そうですね。UCSBはいろんな事情で、アメリカでも随一の理系大学にのし上がったところです。理論と実践とビジネス化の全部が強い。
前佛:UCSBはいろいろな理系の研究者がいて、大学内で使われるコンピュータ環境にはいろいろなリクエストがあった、と。
hito:UCSBの開発者のコメントをみると、「ユーザーからの多様な要求に対応するにはクラウド的なコンピュータ基盤を作るしかない」とか書いてありますね。たぶん、「これからこういう計算するから、300台ほど一週間ぐらい貸してー。OSこれこれで、その上に○○と●●と△△がインストールしてあるとうれしい」みたいな要求が延々と届き続けてたんじゃないかと。
ミズノ:イヤすぎますねそれ!
小林:いちいちインストールすると大変そうですね。
hito:で、それならデータセンターそのものを仮想化してやる! でもそのインターフェースが独自のものになったらメンドくさいから、現状でもっとも流行ってるEC2/S3をパクってやる! みたいな。で、ユーザーは自分たちが使いたい仮想マシンのイメージ登録しておいて、必要に応じて起動しろ、というのがプライベートクラウドの基本。
ミズノ:独自のインターフェース作るとたいてい失敗しますからねー。パクリは正義。
前佛:ですね。パクリもなにも、目指してたものがAmazonのソレですからねえ。結局、自分たちで作ったのがEucalyptusだった訳でして。
hito:まあAzureがもっと早期に立ち上がってたらAzure互換になったかもしれないわけです。
前佛:その可能性はあり得ます。って、なんでもいいんですが、Azureは一部で「あずにゃん」と呼ばれていますね。
あわしろいくや:それは他社のだッ! っと、編集Sさんの代理をしてみました。
編集S:出番をとーるーなー。
やまね:他社ネタはいいのか……。
前佛:このあたりの「使えるものがないから自分で作ってやる。ついでにビジネスにしてやる」という発想が実にアメリカ的ですね。流石アメリカの大学っ、俺たちに出来ないことをやってくれる、そこにシビレるあこが(以下略)。
瀬尾浩史:ゲストさんがネタを自主規制したペン。
hito:で、そのままEucalyptusを作った人達は会社を興して、そのまま現在もビジネスとして進めている、と。まあUCSBだし。あそこおかしいし。
やまね:UNIXに対するGNUみたいなかんじ?
前佛:うーん、GNUと違って、Eucaに思想的なものはないみたいです。開発者のコメントでは、Amazonだと遅延や大学間のデータ取り扱いに問題がある。そしてなにより、膨大なデータを送ると「 お 金 が か か る 」と。だったら自分たちで作るわ的な発想が、とてもアメリカの大学的ですよね。
小林:なるほど……。
前佛:AmazonEC2の技術は、仮想化のXenがベースです。なので、Xenを使えば、同じものが出来るはずだと。
hito:で、インターフェースのデザインはEC2とS3そっくりそのまま持ってきて、中身だけ独自に実装しました、というのがEucalyptusです。なので操作性はほとんど同じ。
前佛:あとはユーザーの皆さん、コンピュータ資源は自由に使えますので、がんばって使ってください、という感じですね。
ミズノ:なんかちょっと前にごく一部で流行った「グリッドコンピューティング」とそっくりに見えますね。「インターネットの彼方にある、すごいこんぴうた軍団にジョブを投げます→すごいこんぴうた軍団さんが処理して返してくれます」みたいな。
瀬尾浩史:いつでもどこでもスーパーコンピュータが使えます、みたいな感じですね。
やまね:グリッド2.0がクラウド?
hito:そんな感じかなぁと。言ってることもやってることもそっくりです。まあ、Eucaの論文とかあさってると「●●というグリッド用ソフトウェアは失敗だった。専用インターフェースとか頭悪いだろそれ。我々はそのような失敗をしないためにAmazon EC2互換にし、可能な限りインターフェースの独自性による問題が起きないようにした」とか書いてあったりしますが。
前佛:学術的にはグリッドコンピューティングないしユーティリティコンピューティングと呼ばれたものが、いつのまにかクラウドな訳ですね。
やまね:死屍累々なところで仕切り直した、と。
hito:ビジネス的にはまるっきり鳴かず飛ばずで終わったグリッドとちがって、クラウドはビジネス的に大人気なのでいいことかと思います。
瀬尾浩史:ううむ。EC2互換な理由はよく分かったペン。次のページで「プライベートクラウドってどう使うの?」という話題をするペン。
(次ページへ続く)
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