
Cross Shot 1.1.0
作者:RucKyGAMES
価格:115円
※以下、アプリ名のクリックでiTunes Storeが開きます。
昨年、電撃ゲームスという新しい総合誌を立ち上げるということが決まった時に、「iPhoneの連載もやろう! ゲーム総合誌なんだから、あるべきじゃん!」と考えました。
ただ正直、それほど強い思い入れや、知識があったわけではありません。たいていの場合、僕の企画は泥縄です。思い付いてから調べたり考えてますが、その前に書き出してしまっていることの方が多いです。
確か、そんな感じで始めた2号目、特集は無料アプリにしようと、これまた深い考えはなく決めました。無料でここまでのアプリが遊べるゲームプラットフォームは、iPhoneしかありません。それを2ページで50本つめこんだら、面白いんじゃないか? それくらいの発想でした。
そんな中の1本に、「リーゼント vs トロンボーン」がありました(関連記事)。そして僕は、そのアプリについて、書くことができませんでした。たった一言。たった一言のアプリ紹介を書こうとして、キーボードを叩く指が止まったのです。
過去、いろいろなゲームを書いてきました。特に「モンスターハンターポータブル 2nd」と「モンスターハンターポータブル 2nd G」に関しては、とんでもない量の文章を書き、2冊の本まで出させていただいています。老いたりとはいえ、決して、書くのは遅い方ではありません。
また過去、1999年の東京ゲームショウで配布されたPS2の公式パンフレットの文章も、僕が書いたものです。あの時、実際に何が起こったのかはアレなのですが、僕はあのパンフレットの原稿を一晩で丸ごとすべて書き上げました。
僕こそが現役最強のゲームライターである。あのときの僕の慢心っぷりは「いかがなものか」過ぎですが、題材を選ばず、ある一定以上のスピードで書くことができるライターだったことは間違いないでしょう。
しかし、何だ、これは、この画面は……。
あまり時間がありませんでした。あきらめた僕は、見たまんまを、そのまま書くことにしました。それは、文章を生業としている人間にとっては、明確な敗北でした。
「水滴を狙ってのびるトロンボーンを、リーゼントをのばして撃退しよう」。
これが、僕に生涯で最もワケのわからない文章を書かせた男、RucKyGAMES君と僕の出会いでした。
正統なコンシューマゲームの歴史の先端?
残念ながら僕も含めてということになるのでしょうが(笑)、RucKyGAMESファンにはゲーム業界の方が多いような気がします。俗に「玄人好み」と言われる傾向です。彼のタイトルすべてがそうだとは思わないのですが、かなりのものが、過去のコンシューマゲームの歴史を前提としている気がします。ゲームファンなら分かる感覚があると言い換えることもできるでしょう。
この点、誤解のないように願いたいのですが、決して古いという意味ではありません。ゲームファンなら思わず「分かる分かる」とうなづいてしまうものがある、というくらいの意味です。
編集部でも「リーゼント VS トロンボーン」のほか、「i刺身」(最近では「i肉饅」)、「Cross Shot」あたりを見せると、みんな、大笑いしながらも「あぁ、なるほどね」という顔をします。ゲーム雑誌編集部で通りがいいタイトルなのです。ちなみに、社外の女子にウケるのはスタジオルーペさんです(笑)。
もちろん、それだけだったら、僕は電撃ゲームスの1ページを割いて、彼のタイトルを紹介するなんてことはしなかったでしょう。ただ、その「何故?」を、僕はまだ説明したくない。正確に言えば、現時点で説明してしまうと、それはいずれ誤りになる可能性があるからです。
僕の中でRucKyGAMESは、正統なコンシューマゲームの歴史の先端に位置しています。そして、(ここが一番、言い切りにくいポイントなのですが)彼のゲームからは、その歴史を先に延ばす、延命させる可能性も感じています。別にホメてないです、可能性があると言っているだけです。
過去に、もう一人、似た才能のかたちと出会ったことがあります。その彼とRucKyGAMES君の最大の違いは、舞台がコンシューマであるか、iPhoneであるかということです。この違いは、予測していた以上に大きい。
と、なにを書いている分からなくなった(分からなくした)ところで、RucKyGAMESタイトルから、僕なりに1本を……ちょっとタバコ吸ってきます。やっぱり悩みますね、選ぶのは……はい、決めました。「Cross Shot」です。
理由は簡単、RucKyGAMESの最新作だから(笑)。そして、あまりゲームをやらない僕の娘(13歳)が、友だちへのメールを打つ手を止めてまでプレイして(勧めたわけじゃないのに)、僕と同じくらいのステージまで進んだから。歴史の先端にいるとは、そういうことなのだと思います。
お、何かいいこと書いた。よし、ここで止めておこう。
筆者紹介──倉西誠一
石川県金沢市出身の元・電撃PlayStation編集長。著書は「モンスターハンター」シリーズのプレイログである「狩られ道」「狩られ道豪黒毛」(いずれもアスキー・メディアワークス)だが、最近はすっかりiPhoneゲーマー。Twitterアカウントはkararemichi。
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