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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第48回

NVIDIAチップセットの歴史 その3

nForce 700派生品が主流のAMD向けNVIDIAチップセット

2010年04月19日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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NVIDIAのAMD向けチップセットロードマップ

NVIDIAのAMD向けチップセットロードマップ

出荷時期が不明瞭なnForce 700シリーズの派生品たち

 さて、ここからが問題の派生型である。まず2008年8月登場の「nForce 740a SLI」であるが、こちらはnForce 750a SLIのサブセット版だ。違いは独立GPU用のPCIeレーンが2x8に固定(1x16は不可)された点と、Hybrid SLIが削除された点にある。

 前者はコストダウンのための差別化であろう。後者は、鳴り物入りで発表したHybrid SLIが、実際には対応するグラフィックスカードが非常に限られて、ほとんど使われないケースが非常に多いため、あっさり見限ったものと思われる。

 ちなみにSLIのない「nForce 740a」はかなり早い時期から噂されており、少なくとも2008年末にはこれを搭載した製品の出荷が確認されているので、リリース時期は2008年8月くらいと想像される。映像出力もないため、内蔵GPUそのものも省かれた(か、無効にされた)と思われる。

 その次が「nForce 720a」で、これはnForce 730aからPureVideo HDのサポートを抜いた廉価版である(PureVideoは搭載)。こちらも映像出力は省かれている。この製品、当初はnForce 730aと同時に発表のはずだったが、発表製品からは漏れていた。その割に、すぐに搭載製品が登場したことを考えると、恐らくは6月位にはリリースされていたのではないかと思われる。

 このnForce 720aから内蔵GPUを抜いたバリュー向けが、「nForce 720D」となる。SLI/Hybrid SLIにも当然対応しない。こちらはさらに登場時期が不明だが、搭載製品が2009年2月頃に登場していることを考慮すると、2008年中にリリースされたと思われる。

nForce 720D搭載マザーボードの例

nForce 720D搭載マザーボードの例

 一方GeForce 8200の後継としては、その後「GeForce 8300」と「GeForce 8100」がラインナップされている。詳細は一切未公開であるが、内部構成そのものはGeForce 8200と同一で、コア/シェーダーの動作周波数を上げたのものがGeForce 8300、下げたものがGeForce 8100であるとされている。特にGeForce 8300に関してはかなり早くから噂されており、リリース時期は恐らく2008年中旬、GeForce 8100は2008年末あたりではなかったかと思われる。

 さて、最後に残るは「nForce 980a SLI」だ。実はこの製品、構成的にはnForce 780a SLIとまったく同一である。最大、というより唯一の相違点は、Socket AM3への対応である。ただAMDのアーキテクチャーの場合、Socket AM2/AM2+/AM3で、チップセットが技術的に何か変わるというわけではないので、純粋に検証のみの問題である。nForce 740aとかnForce 720DがAM3対応をうたっているのも同じことだ。

 だからといって、同じ型番のままリリースしてもAMDの競合製品に見劣りするので、型番を変えてわかりにくくした、というあたりであろう。実のところ、スペック上はAMDの「890FX/GX」あたりとほぼ同等であり、SATA 3.0の6Gbps対応がない程度の差でしかないから、こういう対策を取るのもやむをえないだろう。


今後のAMD向けチップセットは白紙!?

 最後に今後の動向を簡単にまとめよう。短期的には、NVIDIAのAMD向けチップセットの今後のロードマップはほぼ白紙である。

 まず独立GPU向けは、当分今のラインナップのままで利用できる。必要ならばnForce 750a SLIにSocket AM3の検証を行なって別型番にするということもできるだろうが、すでにSocket AM3対応をうたうnForce 750a SLI搭載マザーボードが販売されている現状を考えると、その必要性があまりない。

 GeForce 8100/8200/8300の後継については、とにかく内蔵GPUをDirectX 11相当まで上げないとAMDの次世代チップセットと勝負にならない問題がある。つまり、GeForce 480/470相当の製品が安定して量産でき、かつエントリー向けのDirectX 11向けGPUが製造できるようになるまで、手が付けられない。

 さらに、AMDも2011年にはGPUをCPUコア側に統合し始めるので、グラフィック内蔵チップセットのニーズがどこまであるのかがそもそも明確ではない。一方で独立GPU向けの新チップセットを作ったところで、AMDからどれだけのシェアを奪えるか、それ以前にビジネスとして成立するかもクリアではない、といった状況にあるためだ。

 次回説明するとおり、NVIDIAはチップセットビジネスの方向性をやや変えてきており、2011年は(新製品を投入するかどうかはともかく)引き続き製品を供給すると思われるが、2012年以降はかなり怪しい。ということで、NVIDIA編の次回はインテル向けをご紹介したい。

今回のまとめ

・2006年末に登場した「nForce 680a SLI」は、Quad FX向けにOpteron用チップセットを流用したものだが、Quad FX自体が普及せず、後が続かなかった。

・2008年に投入された「nForce 700」シリーズは、派生品が現在まで続いている。GPU内蔵型は、G86コア世代のDirectX 10対応「GeForce 8200」が登場した。

・2008年後半には、細かく機能を削減、あるいは強化した派生品が5種類も登場する。しかし正式発表がなく、具体的にいつ登場したのかわからないチップセットも多い。

・AMDプラットフォーム向けのNVIDIAチップセットの今後は白紙の状態にある。内蔵GPUのDirectX 11対応がまだ先になるうえ、ビジネスとして不透明な状況にあるためだ。

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