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山谷剛史の「中国IT小話」 第69回

中国では早くも話題になり、転売されるiPad

2010年04月20日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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中国向け製品より海外輸入版のほうが売れる!?

 中国の省都クラスの大都市の中心地では、続々と高級ショッピングセンターが建っているが、そこにApple特約店がルイヴィトンやスワロフスキーと並んでテナントに入りショップを構えるわけだ。「Macはステータスが高い人のための高級ブランドPC」と認知されるきらいがあるのも仕方のないところだ。

ここ1~2年で大都市の繁華街で増えているApple特約店

ここ1~2年で大都市の繁華街で増えているApple特約店

巨大なiPhone3Gの広告

巨大なiPhone3Gの広告

 数店のAppleの特約店を見る限りでは、今のところiPadの広告を掲載していた店はなく、iPhone 3Gをいの一番にプッシュし、次にMacという感じである。

 中国では中国向けiPhone 3GやiPod touchが販売される一方で、中国向け製品発売前からiPad同様に海外先行版製品がよく売れる。さらに中国向け製品が発売された後も値段が安いという理由で(中国語メニュー化された)これらの製品がよく売れているようである。

iPadの正規版ソフトを買いますか?

「iPadの正規版ソフトを買いますか?」という中国ニュースサイト読者アンケート結果。88%超が「買わない」とのこと

海賊版ソフトが詰まったDVDが付録の中国のiPhoneムック

海賊版ソフトが詰まったDVDが付録の中国のiPhoneムック

 Apple製品は高級品というポジションだが、App Storeでソフトを購入するユーザーは少なく(いないわけではない)、多くのユーザーは特殊な方法を使って海賊版をインストールしている。例えばポータルサイト「網易」(NetEase)が4月2日から9日までの1週間に行なった「正規版のiPad用ソフトを買いますか?」という質問に「いいえ」という回答が9割弱を占めている。


やっぱりYouTubeとGoogle Mapのアイコンなし

Appleの中国語サイトのiPadのページ。YouTubeやGoogleMapがない

Appleの中国語サイトのiPadのページ。YouTubeやGoogleMapがない

 さて、個人的に気になるのが中国の国情にあったスペックに変更されるか否かということ。中国版iPadも同社中国語ページを見る限り、Wi-Fiモデルと、3GプラスWi-Fiモデルを用意している。しかしここから中国の国情とやらで、YouTubeとGoogle Mapがない。

「中国版iPhoneを買いますか?」という中国ニュースサイト読者アンケートに「絶対買わない」が55%、「安ければ」が35%、「はい」は僅か1割弱

「中国版iPhoneを買いますか?」という中国ニュースサイト読者アンケートに「絶対買わない」が55%、「安ければ」が35%、「はい」は僅か1割弱

「輸入版iPhoneを買ったことがありますか?」という中国ニュースサイト読者アンケートに「はい」が7割弱

「輸入版iPhoneを買ったことがありますか?」という中国ニュースサイト読者アンケートに「はい」が7割弱

 中国向けの過去の製品を振り返ると、通信キャリアの「中国聯通」(China Unicom)による中国版iPhone 3Gは外国転売版より値段が高いばかりか、Wi-Fi が利用できず、メニューにYouTubeアイコンはなく(中国からはYouTubeに普通の方法ではアクセスができない)消費者は正規版に消極的だ。

iPhone3G中国版に入っているソフト(左)と日本版に入っているソフト(右)

iPhone3G中国版登場時にそれでGoogle Mapを利用してみたという 記事。確かに当時はGoogle Mapが入っていた

iPhone3G中国版登場時にそれでGoogle Mapを利用してみたという 記事。確かに当時はGoogle Mapが入っていた

 Google Mapはもともとあったはずだが、この記事を書くにあたり確認したらなくなっていた。中国からGoogle Mapへのアクセスは可能だが、今年の年初からの中国政府とgoogleとのゴタゴタが原因だろう。iPhoneでは中国独自の無線LANセキュリティ規格「WAPI」の存在があるためWi-Fiが使えないという噂もあるが、一方でiPod touchだとWAPIでなくWi-Fiが入っている。iPadはiPhone 3Gのようにはならず、3GモデルにWi-Fiもしっかり搭載されればいいのだが。


早くも「iPadもどき」も登場!?

山寨機のiPadが作られたことをトップで紹介するIT新聞

山寨機のiPadが作られたことをトップで紹介するIT系新聞

 iPadの記事は市場レポート記事と紹介レポート記事がほとんどを占める一方、記事数としては少数派ながら、「iPadもどき」こと「山寨機」を紹介する記事も登場している。

 例えば山寨機の聖地こと「深セン」(関連記事)で、iPadもどきを60日で作り上げたというニュースである。その正体は見かけはiPad、中身はWindows搭載のUMPCというシロモノ。

 iPadを「平板電脳」と紹介した通りに、また誰もがすぐ使えるようにWindows PCとしたのだろうが、iPhoneの山寨機同様、売れるとは思わない。

 が、部品を組み立てることによってMP3プレーヤーや携帯電話といった山寨機を生み出してきた有象無象の無名工場が、UMPCまでも作れるようになったというのは評価すべきだろうし、注意すべきだろう。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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