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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第113回

iPadで始まる「モバイル・クラウド」の世界

2010年04月14日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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クラウドに無線ブロードバンドは不可欠だ

 iPadの実機を見て驚いたのは、イーサネットの端子がないことだ。これは普通のPCとしては考えられないが、無線LANが標準装備だから「これから通信はすべて無線で」という割り切りなのだろう。かつてiMacが出たとき、フロッピーディスク・ドライブがないことに多くの人が驚いたが、ほどなくフロッピーはなくなった。ジョブズが今回も正しいとすれば、通信機能もすべて無線になるのだろうか。

 しかし現状ではこれはまだわからない。ほとんどのアプリケーションは無線LAN(10Mbps以上)では軽快に動作するが、3Gのデータ通信(数Mbps程度)では動画はスムーズに動かない。屋外ではHDTVや多人数ゲームなどの複雑なアプリケーションは無理だろう。

Ajaxで実装されており、一般的なウェブブラウザだけで読むことができる、アゴラブックスの電子ブックリーダー

 実は同じ問題が読書でも起こりうる。アゴラブックスが開発したAJAXビューワーは、文書ファイルをサーバに置いてページをめくるごとに端末からアクセスする「クラウド型」だが、これがスムーズに見えるのも数Mbps以上で、iPhone3Gではページとページの間に空白ができる。グーグルがまもなく発表するシステムも、こうしたクラウド型だといわれているので、同じような問題が起こるだろう。

 クラウド・コンピューティングは、ファイルの複製を作らないため効率的で、違法コピーの問題も避けられるが、アクセスが膨大になるため、ネットワークに大きな負荷がかかる。数十Mbps以上のネットワークに常時つながっていないと、こうしたモバイル・クラウドは機能しないだろう。ソフトバンクは「フェムト・セル」を無料で配るなど、無線ブロードバンド環境をつくろうとしているが、今の数十MHzの周波数では限界がある。

 こうした状況を踏まえて、FCC(米連邦通信委員会)は今後10年で500MHzの周波数を開放するという「全米ブローバンド計画」を発表し、日本でも原口一博総務相は4月9日の記者会見で「細分化されて非効率に使われている電波を再編して、モバイル・ブロードバンドに開放する」という方針を表明した。地上デジタル放送が浪費している300MHzだけでも再編してモバイル・クラウドに使えれば、日本は無線ブロードバンドで世界のトップに立てるだろう。

筆者紹介──池田信夫


1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退社後、学術博士(慶應義塾大学)。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラブックス代表取締役、上武大学経営情報学部教授。著書に『使える経済書100冊』『希望を捨てる勇気』など。「池田信夫blog」のほか、言論サイト「アゴラ」を主宰。

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