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AR~拡張現実~人間の“現実感”を高めるテクノロジー 第5回

本当の「AR」とは? ARの歴史と未来の姿を追う!

2010年04月20日 12時00分更新

文● 丸子かおり

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初のARゲーム「THE EYE OF JUDGMENT」

 暦本さんの研究室をうかがったところ、まず見せていただいたのがなんとPS3のゲーム!「THE EYE OF JUDGMENT」という2007年に出たタイトルで、ゲーム好きの読者なら知っているかもしれない。ソニーコンピュータサイエンス研究所においてもARを研究していた暦本さんの成果がベースとなって開発されたゲームだ。

暦本純一教授。東京大学大学院情報学環やソニーコンピュータサイエンス研究所でARを研究し、また企業とともにARの製品研究を行なっている

「THE EYE OF JUDGMENT」の画面。まるで普通のトレーディングカードゲームのようだが、カードを手のひらに載せてセンサーカメラにかざすと、モニター上でモンスターが手に乗っている(提供:東京大学大学院情報学環 暦本研究室)

 この「THE EYE OF JUDGMENT」では、黒く太いバーコードのような模様(マーカー)を印刷されたカードを手に乗せて、センサーカメラにかざすと、モニターでは手の上にモンスターが乗っている映像が浮かぶのだ。このモニターに表れたモンスター同士を戦わせるのだが、カードとセンサーは三次元を認識しているので、カードの向きが変わるとモンスターの向きも変わったり、現実の指がモンスターをコントロールできるのが印象深い。「手」という現実とモンスターというデータがモニターで組み合わさるところなど、まさしくARの世界そのものだ!

実はAR研究は40年以上前から始まっていた!

 2007年にすでにARのゲームがあった事実は驚きだった。しかし、暦本さんによるとAR技術そのものはかなり昔から研究が行なわれていたとのこと。AR研究の歴史をたどっていくと、1965年のハーバード大学のアイヴァン・サザーランド准教授がVR(仮想現実)の研究をする際、シースルーのヘッドマウントディスプレーを使い、現実世界上にCGの画像を重ねて見たのが、VRとARの研究の始まりだったという。現実世界をシャットアウトしてCGだけを見ればVRに。ヘッドマウントディスプレーをシースルーにするとARの世界になるのだ。

 そう、ARは去年、今年に始まったことではなく、40年以上前からすでに研究されていたのだ。

1965年に発表されたアイヴァン・サザーランド准教授のヘッドマウントディスプレー。当時はVRとARが同時に研究されていた時代だった。(提供:東京大学大学院情報学環 暦本研究室)

 ARは決して最近になって突如として現れた技術ではない。VRの研究と交わるようにして発展してきたという経緯がある。さて、次ページでARの歴史を紐解いていこう。

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(次ページへ続く)

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