初のARゲーム「THE EYE OF JUDGMENT」
暦本さんの研究室をうかがったところ、まず見せていただいたのがなんとPS3のゲーム!「THE EYE OF JUDGMENT」という2007年に出たタイトルで、ゲーム好きの読者なら知っているかもしれない。ソニーコンピュータサイエンス研究所においてもARを研究していた暦本さんの成果がベースとなって開発されたゲームだ。
この「THE EYE OF JUDGMENT」では、黒く太いバーコードのような模様(マーカー)を印刷されたカードを手に乗せて、センサーカメラにかざすと、モニターでは手の上にモンスターが乗っている映像が浮かぶのだ。このモニターに表れたモンスター同士を戦わせるのだが、カードとセンサーは三次元を認識しているので、カードの向きが変わるとモンスターの向きも変わったり、現実の指がモンスターをコントロールできるのが印象深い。「手」という現実とモンスターというデータがモニターで組み合わさるところなど、まさしくARの世界そのものだ!
実はAR研究は40年以上前から始まっていた!
2007年にすでにARのゲームがあった事実は驚きだった。しかし、暦本さんによるとAR技術そのものはかなり昔から研究が行なわれていたとのこと。AR研究の歴史をたどっていくと、1965年のハーバード大学のアイヴァン・サザーランド准教授がVR(仮想現実)の研究をする際、シースルーのヘッドマウントディスプレーを使い、現実世界上にCGの画像を重ねて見たのが、VRとARの研究の始まりだったという。現実世界をシャットアウトしてCGだけを見ればVRに。ヘッドマウントディスプレーをシースルーにするとARの世界になるのだ。
そう、ARは去年、今年に始まったことではなく、40年以上前からすでに研究されていたのだ。
ARは決して最近になって突如として現れた技術ではない。VRの研究と交わるようにして発展してきたという経緯がある。さて、次ページでARの歴史を紐解いていこう。
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