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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第9回

パナソニックリチウムイオン工場~展望と課題

2010年04月20日 09時30分更新

文● 大河原克行

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第3世代という新たな領域へ踏み出す

 パナソニックは、18650サイズのリチウムイオン電池において、2.2Ahおよび2.9Ahの製品を投入していたが、2009年12月から、業界最高容量となる3.1Ahを実現したリチウムイオン電池を投入した。

 3.1Ahの新製品は、ニッケル正極の改良と、HRL(耐熱層)という独自の安全技術の改良によって実現したものだ。エネルギー密度を高めたことで、長時間駆動だけでなく、小型化、軽量化にも寄与できるようになる。

住之江工場で生産されるリチウムイオン電池

 さらに同社では、これまでの技術を進化させた3.4Ahリチウムイオン電池と、次世代の技術を採用した4.0Ahの高容量化を実現するリチウムイオン電池の技術を開発したことも明らかにしている。

 3.4Ahリチウムイオン電池は2011年度から量産する計画で、4.0Ahのリチウムイオン電池は2012年度から量産化する計画だ。

 とくに注目されるのは、4.0Ahのリチウムイオン電池の方である。

 現在、ノートパソコンなどに搭載されているのは、2.2Ahリチウムイオン電池が主流。これは、第1世代と呼ばれるもので、正極にコバルト系材料を活用しており、コストメリットが大きいのが特徴だ。また、2.9Ah電池や3.1Ah電池およびパナソニックが技術発表した3.4Ah電池は、第2世代と呼ばれるもので、正極にニッケル系材料を採用し、負極には炭素を使用している。

 これに対して、パナソニックが開発した4.0Ah電池は、正極に高密度化したニッケル系材料を使用し、負極には合金系材料を新たに採用。これを第3世代と呼んでいる。

パナソニックは第3世代と呼ばれる新たな領域に踏み出した

 「第2世代の技術では、3.4Ahまでが限界とされており、さらなる高容量化を実現するには新たな技術の採用が求められていた。負極に合金系材料を採用した場合、充放電の繰り返しによる膨張、収縮の影響によって、極板が破壊し、性能が劣化することが課題となっていた。だが、シリコン系材料の開発とプロセス技術を活用することで、電極群の変形を解決。極板内での体積変化を吸収することができたことで、4.0Ah電池の開発に目処をつけることができた」

と、野口社長は語る。

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