アウトドア志向アプリのARツール「Rocket Box」

i-ビジネス推進部メディアプロデューススーパーバイザーの上路健介さん
小林さんがテノヒラアドを作るいっぽうで、i-メディアソリューション局i-テクノロジービジネス部メディアプロデューススーパーバイザーの上路健介さんは「Rocket Box」を手がけている。Rocket Boxとは動画に位置情報を付加して保存し、様々なフォーマットに対応して配信できるというツールだ。
上路さんは以前放送局にいた経験を生かして、このツールを作成したという。ARやGPSを使った位置情報サービスは多いが、それをツール化して動画で紹介するだけでも画期的だ。加えて位置と連動し、例えば「昨日テレビで紹介されたお店」などの近くに行くと、番組映像がその場で観られるサービスも付加できるのだ。
このRocket Boxで作られたアプリの主なところを挙げると、ひとつは先日惜しまれながらも終了した人気テレビ番組「ブラタモリ」のコンテンツを利用した「ブラタモリ提供ブラアプリ」。そしてもうひとつは、北海道放送が協力し、さっぽろ雪まつりで観光客をナビゲートする「さっぽろ雪まつりなう」だ。どちらも動画と地磁気センサーを使った作りとなっていて、目的地に到着するとそこでしか撮れない写真を撮ることができるシステムになっている。
Rocket Boxで作ったアプリは、どれも外に出て探索したくなるアプリだ。上路さんは
「ひとつ動画をアップロードすると全てのフォーマットに対応できるようなマルチプラットホームの展開をしましたけど、全国のメディア・コンテンツホルダーの方々にもご協力いただいて、地方の活性化につながるようにしていきたい」
と言う。アプリの中の動画を見て、その場所に行きたくなるようになる。ARの新しい使い方、アプローチを感じさせる。こういうARもあるのだと思わずにはいられない。
さて、広告におけるARについて書いてきたが、博報堂DYメディアパートナーズの取材の中で興味深いことが聞けた。「今までは広告は“メディア+クリエイティブ”だったが、今はメディアによって生活者との接触が違うので、メディアにあわせてクリエイティブや仕組みを変えていかなきゃいけない。だから今はメディア×クリエイティブ×テクノロジーになっていますね」と。
広告の世界はまさしくメディア×クリエイティブ×テクノロジーの時代に入っている。その中で、AR広告は時間軸や空間を含めた、“ユーザーの経験”そのものまでデザインしているのだ。もしかしたらARは広告表現を根底から変えることができる技術なのかもしれない。

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