マーカーを使った「拡張」広告「テノヒラアド」
博報堂DYメディアパートナーズでは、2通りのAR広告戦略を意識しているそうだ。まずはi-メディア局業務推進部メディアプロデューススーパーバイザーの小林パウロ篤史さんが手がける「テノヒラアド」。
小林さんが住友商事の新聞の一面広告を見せてくれたのだが、広告の左上にマーカーが! このマーカーをPCのWEBカメラにかざすと、なんとカメラの画面上に地球儀と住友商事の海外拠点とその様子が映し出されている。
この広告について小林さんは「ARを使わなくてもよかったかもしれない。しかしARでしか伝えられない広告もあるのでは?」と考え、プランニングしたそうだ。日本では初めてAR技術を活用した新聞広告である。自分が映っている画面に、広告のデータを載せることで、広告に親和性を生み「自分ごと」化させたいという狙いだそうだ。
別のマーカーをWEBカメラにかざしてみたところ、原寸大の携帯電話が表れた。つまり店舗に行かなくても携帯本体を疑似体験することができるし、PCに映るのはデータなので色違いの携帯に変更して、好きな色の携帯を選ぶことができるのだ。
また、エンターテイメントの方向では、「商品を買うと何かが起こる!」というコンセプトで、カップラーメンにシール状のマーカーをつけることで、お湯を注いでから3分間、ブロック崩しができるデモンストレーションを見せてくれた。「買ったらゲームができる」というのはユーザーにとって購入のキッカケになるだろう。既存の広告に+α以上の価値を付帯させる。それがテノヒラアドなのかもしれない。
この広告の技術はIMJと、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科デジタルライフプロジェクト、そして博報堂DYメディアパートナーズが共同開発して作った技術である。小林さんにとってのARは「自分の身の回りでありえないことが起こる。それが新商品の体感だったり、ゲームだったり、ストーリーだったりを、自分も一緒に映りながら体感していくのが、僕のやり方だと思っています」という。
今はマーカーをWEBカメラで読み込ませているが、今後、はマーカーレスでモバイル機器に読み込ませるよう、テノヒラアドを進化させていきたいとのことだった。
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