ネット放送でいちばん面白いのは
それをやっている「自分」の変化
―― ネット放送をやっていて何か自分の想い、メッセージを届けたいという思いがあるんですか。
伊予柑 あー、それは全然ない。前に日本放送協会(NHK)の人に「君たちは放送を通してどんなメッセージを発しているのか?」って聞かれたときに、メンバー全員ぽかーんとしちゃいました。「考えたことなかった!」って(笑)。
―― 長くやってくると、伝えたいこととかは出てこないものですか。
伊予柑 「放送に映っている人が楽しそう」というのは意識してます。楽しいことを伝えたいので。
―― なるほど。生放送をすることで予期せぬことというか、自分が想像してた以上の楽しみなんかはありましたか。
伊予柑 割と予想どおりです。一応企画をする人なので、どういう面白さがあるのかは事前に大体考えつくし、それから外れることのないように企画をしています……あっ、一番変わったのは、自分がこんなにアクティブになる予定じゃなかったことかな。
―― でも、昔から色んな活動をされてると聞きますよ。同人誌を作ったり、ゲームを作ったり。サイト運営もされてますし。
伊予柑 でも、それはスパンが長いんですよ。こんなに毎日毎日ずっと新しいことをやり続けるような人ではないんです、俺は。
―― 新しい自分の発見。
伊予柑 うん。面倒くさがり屋で何もしないタイプなんですけど放送をやりはじめてから、それがかなり変わった感がある。それは生放送をやっている人は割と言ってます。
―― それはやっぱりやってて、楽しいから?
伊予柑 すぐ結果がでるからですね。
―― なるほど。スピードですね。
伊予柑 放送仲間の一人が「ユーザ反応の速度はブログが『日』単位、Twitterが『分』単位、ニコ生が『秒』単位という感覚。UstはコメントインフラがTwitter(だけじゃないけどね)なのでニコ生よりもレスポンスがちょっと遅い」とTwitterで発言していて。そんな感じの差がありますね。早いので、格好良く言えばフロー状態、普通に言えば配信中毒になります(笑)。
―― そんな伊予柑さんが今後やっていきたいことは。
伊予柑 「ネット放送は誰にとって必要なメディアか?」という疑問に答えを出すために手当たり次第実験していこうと思ってます。その中でやりたくてできてないのが、企業と組む部分です。企業とじゃなければ出来ないことってあるので。
―― 入れないところに入るとか?
伊予柑 「生放送でなければ伝わらないこと」に放送の価値があるとおもってます。東京の四ツ谷にある女装スタジオに「放送させてください!」ってお願いして、自分が女装する様子を放送したことがあります。化粧も衣装選びも全部中継して遊びました。その結果、放送を見て、お店に何人も来てくれたって言われたんですよ。女装ってどうしても敷居が高いので、プロセスやお店の人たちの様子を伝えたことでその敷居を下げられたのかなって思ってます。
―― なるほど。モノタイズもそうだし、企業のみなさんにPRをしなきゃ、ですね。広報活動はしてますか?
伊予柑 まだ全くしてません(笑)。徐々にしていきます。
―― 自分たちから売り込むというのは?
伊予柑 つまんないものは放送してもつまんないので、「実は放送したら面白い!」ものを見つけて組みたいです。商品のPRという題目でこの道40年の京都の漆職人さんを取材放送したことがあって、あれは面白かったです。あとは、うーん……ただ放送するだけなら本人がやるのが一番なんですよね。自分たちが得意な部分って言うとネット放送の経験値や、ネットユーザーの空気感や、双方向番組を荒れずに上手くやる工夫、みたいなとこかなと。
―― では、最後になにかあれば!
伊予柑 ということで企業さん待ってまーす!
著者紹介――ノトフ
老舗ニュースサイト「かーずSP」かーず氏の弟子としてライター活動を始める。ブログは「はつゆきエンタテインメント」。
自主制作番組「はつゆきラジオ」や、ニコニコ生放送などで主に活動中。最近は女装をして、ネットで顔出しをすることで一部の人に面白がられている。