ポイントは「絵づくり」
あとはコメントで視聴者とやりとり
―― ただ、NKHやそらのさんの生放送を見ていると、企業と組んだりすることで段々と放送が「大げさ」なものになっているじゃないですか。それはそれで面白いんですけど、ネットを使って個人がやるから面白かったのに、段々とただの「安いテレビ番組」になっているなと思うこともあって。そういうことは感じますか?
伊予柑 ありますよね。ただ、自分にとって面白いことをやり続ける、ということが守られていれば良いかなと。
―― それでは特に「ネットならでは」を模索したいというわけではなく?
伊予柑 ネットならでの面白さはもちろんあるんだけど、その「ネットならでは」が本当に視聴者にとって面白いの? っていうのがもっとも大事なはずなんです。
―― なるほど。
伊予柑 「ネットならでは」ってあまり理解されてもらえなかったりもしますよ。たとえば去年、ドイツから生放送したんですよ。Netbookとケータイの回線を使って、ひとりで生放送したんです。で、あれが「ネットならでは感」があるねって言われるんだけど、ぼくは特になかったと思ってるんですよ。技術的には面白かったけど、コミュニケーションとかコンテンツの新規性は特になかったと。
―― ドイツの放送がすごいと思ったのは「テレビでやってたことを俺らも出来るんだ」的な面白さだと思います。
伊予柑 そう、再現でしかない。だからあれ、企画段階では、すごくつまらない企画だなーって思ってた。
―― 「テレビで出来るが、自分で出来る」っていうのが当たり前になると、見ている人の価値観も変わってくるかもしれませんね。
伊予柑 でもそのネット放送らしさを気にしている人って実はそんなにいなくて、普通の人にとっては面白ければ良いんです。で、面白さを純粋に求めたらテレビに行き着いて、つまり「テレビって面白いんじゃね?」みたいになりそう(笑)。
―― それはそれで一つの解ではあるとは思いますけど。
伊予柑 でも、ネットの先進的な人たちが見ている夢が「テレビ」っていうのは切ないとも思いますよね。
―― ニコ生に向いているライブコンテンツは何だと思いますか?
伊予柑 ゲーム実況とかですかね? 一番視聴数が多いですし。
―― するとなぜゲーム実況はニコ生に向いてるんでしょう。
伊予柑 ニコ生って、画面の「絵」で視聴者を持たせるんです。とはいえ、飽きない絵を自分で作るのって大変なんですよ。でも、ゲームを流しておけば「絵」はあるんです。さらに視聴者が知っているゲームだったら会話の糸口になるわけですよね。
―― なるほど。
伊予柑 ニコ生はコメントが画面にかぶさってくるので、コメントを読むために画面を見ますよね。だから強制的に絵を意識させる作りになっている。一方、UstreamはTwitterでコメントを読めば良いので、ラジオ的な番組に向いていると思います。
―― あ、視聴者もやってる方も、コメントを見たくて画面を見ちゃうんですね。コメントは邪魔になるとか言われるけど、逆にそれで画面を見ることになる。
伊予柑 なんですよ。あと、女の子なら顔出し。
―― まあかわいい女の子なら、面白くなくても見ちゃいますもんね。かわいいだけで。男は何をすればいいんですか?
伊予柑 男はある程度お金があるんだったら「イケメン放送」。イケメンはお金でつくれるんで、4万円くらいあれば絵になるんじゃないですか。髪型を整えて、服装を整えて、照明を買って。背景に観葉植物があって。そこで顔出しをすればいい。それで毎日同じ時間に放送して。手元に「ネタになるモノ」があればベストです。コンビニで変える新製品でもCDでもゲームでもいい。ちょっと話しかけやすいものがあればオーケー、だと思います。
―― 話す内容は雑談でもオーケーですか、人気は?
伊予柑 人気を求めてやるとつらくなるかもです。最低限の視聴者さんがいてくれたら、十分楽しいと思います。