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お金ではなくモノを稼ぐ――ニコニコ生放送・伊予柑さんの狙い

2010年04月10日 12時00分更新

文● ノトフ

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リアルとネットが出会うことに興味があった

―― まず、ニコニコ生放送(ニコ生)を始めたのは?

伊予柑 始めたのは2008年の12月で、きっかけはその夏の「ニコニコ大会議2008」です。会場を映した様子がスクリーンに生放送で写し出され、そこに大量のコメントが流れている。そのとき、今までにないインタラクション(双方向通信)的な空間を作っていたことに強く影響を受けたのがキッカケです。

伊予柑氏

―― その大会議から生放送をやりたいと考えてたんですか。

伊予柑 まだ面白そうだなと感じただけで、何かをやろうとは考えてませんでした。

―― それ以前にもネット放送はされてました? ネットラジオとか。

伊予柑 いや、してないんです。

―― とすると、いわゆる「放送」に興味があるわけじゃないんですね。動画作りもされてないですもんね。

ニコニコ生放送

伊予柑 ですね。コンテンツを作ることに興味はないんですが、新しい体験には興味があります。人と人とのリアルタイムな双方向の関係で生まれる、インタラクション、といった感じのやつです。

―― とすると、ネットラジオにはインタラクションは感じませんでしたか。

伊予柑 ちょっとは気になってたんですけど、広がる……つまり普通の人がどんどん聴いていくような感じがしなかったんですよね。

―― そんなニコ生でユーザー生放送が始まったとき、面白さを感じましたか。

伊予柑 顔出ししている人がいるのが面白かったです。自分も見たいと思ったし、見たいと思う人はいるな、と感じました。

ユーザー生放送 : ニコニコ生放送には個人ユーザーが配信する「ユーザー生放送」、ドワンゴがオフィシャルで配信する「公式生放送」、ニコニコ動画にチャンネルという特別枠を持った登録者が配信する「チャンネル生放送」の3種類がある。ユーザー生放送は2008年12月に開始。

―― 「顔を出して放送する」ということに需要があると?

伊予柑 需要があるというか、一目で面白さが伝わるなと。流行るかどうかはともかく、ニコ生の面白さは普通の人でも理解出来ると思ったんです。ネットラジオでは面白さが分かるまで聴かないといけないので、理解してもらえない。

前回にひきつづき、今回もニコニコ生放送で「顔出し」でインタビューした。写真は筆者。女装だ

―― なるほど、その感覚は分かります。では、Ustreamはどうですか? ニコ生は食いつきが早かったですけど、こちらは最近までやってませんでしたよね。

伊予柑 あっちは普通の人がパッと見ても「何これスゴい!」って言わないと思ったんですよ。

―― ぼくは、動画が生放送できるだけですごいと思いましたけど。

伊予柑 うーん。自分でもUstreamは使ってるし、配信者としてはスゴイと思います。でもそれを「楽しんで見る人」は想像できなかったかな。普通の人は「ネットでテレビが見れるようになったのね」と思うだけで、新しいと思ってもらえないかなと。

―― そこは「コメント」が流れるかどうかの違いですか?

伊予柑 Ustream初期にあったのは、勉強会やカンファレンスの中継で、最初に注目されたのは秋葉原の歩行者天国休止の元凶になったあの悲劇の中継だとおもいます。そういう放送には面白さを感じなかった。Ustreamの番組で衝撃を受けたのは「女性が顔出しで画面にむかって朗読をする」という放送でした。Ustreamのチャットに寄せられたコメントを読んで「ここの部分をもう一回読んでほしいのね? 分かりました。他に読んでほしい本はありますか?」と視聴者と話しながら本を朗読するんです。

―― それらは何が違ったんでしょう。

伊予柑 コミュニケーションがあるかどうかです。秋葉原の事件を中継したUstreamもチャットがあったんですが、それはネットの人だけで会話をしていて、これまでと変わらないと思ったんです。朗読ではネットから現実に話しかけて影響を与えられる。それが新しくて、面白いと感じたんですよね。

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