一聴してハッとする、そして「やるな」とつぶやく
それでは期待感を持ちつつ、じっくりと視聴してみる。最も手軽な使い方はパソコンのサウンドカードにアナログで直に差す方法だろうが、当然のようにあまりいい環境とは言えない。そこで今回は変則的だが、まず最初にiPodや単品のCDプレーヤーとも接続してみた。
一聴して「やるな」と感じさせる。先代のPM0.4も市場の高評価を得ていたと聞いているが、この音なら確かにそれにもうなずけると感じた。
まず、情報量がとても豊富だ。最初にかけたのは男性のオペラの独唱だったが、豊かな低域に支えられた朗々とした雰囲気に、歌い手の込めたニュアンスが載る。それは、ブレスする際の息遣いだったり、子音を発するときに動く口が発する付帯音だったり、ホール全体に広がる残響の表現だったりするが、とても臨場感があって生々しい。
いろいろなソースを掛けてきくが、音には透明感があり、全体に一皮むけた様な明瞭感がある。バランスとしてはやや低域に寄った印象で、高域はそれほどキツク鳴らない。ウォームな印象を持つのはそのためだろう。
手軽な小型機でもモニターを謳うだけあって、プレーヤー側の音質にはかなり敏感に反応する。パソコン、iPod、単品のCDプレーヤーなどいろいろな機器と接続してみたが、出てくる音には明確な差があった。
逆に言えば、パソコンで再生する場合には、サウンドカードも相応にクオリティーを持ったものでないと、PM 0.4n本来の性能を発揮できないということだ。実際そう感じる部分は多々あった。
USB DACを追加して、音質強化を図ってみる
それならと用意してもらったのが、同じFOSTEXの「HP-A3 32bit DAC」(価格3万8850円)だ。昨年12月に発表されて、1月に発売になったばかりの製品で、かなり売れているらしい。
HP-A3 32bit DACは、カテゴリーとしては昔からある「USBオーディオデバイス」に相当する。しかしながら、単なるパソコンの周辺機器と片付けてしまうよりは、新しいタイプのオーディオ機器として考えたほうがいいぐらいの製品である。
重厚感ある金属筐体で、質感も上々。旭化成エレクトロニクス(AKM)製の「AK4390」という32bit DACやPLL専用電源を搭載しており、内部のコンデンサーやオペアンプもオーディオ用のパーツを厳選して使用しているという触れ込み。24bit/96kHzのデータも扱えるので、最近の高音質ソースにも対応出来る。ヘッドホンアンプ内蔵で、深夜のリスニングに便利だったり、バスパワーで動作してしまうというのも嬉しい。
結果は大当たり。これはいい。透明度、定位、低音から高音のつながり、どれをとっても大きく改善する印象だ。
これはデスクトップだけで聴くのはもったいない。そんな欲が出てきた。PCオーディオといっても必ずスピーカーをデスクトップに置く必要はない。ノートパソコンをソース機にして、リビングや寝室に置いてもいい。むしろパソコンの手軽さをそのままに、専用機に迫る音の良さを実現していくことこそ醍醐味なのだ。
寝室にある棚に少し距離をとって設置してみると、上に書いたような要素に加え、奥行きと広がりのある空間が現れた。この3次元的な空間表現こそ、ヘッドホンにはないオーディオの楽しみではないだろうか?
いずれにしてもいろいろ試せば、試した分だけの結果が出てくる。そんな楽しさがある。そんな風に素直に感じることができた。