「所有」「読み返し」を超えたニーズを掘り起こす
顧客心理を見極めれば、ニーズに合わせた販売展開が可能になります。『漫画全巻ドットコム』の場合、それが全巻のセット売りでしたが、安藤さんは「所有したい、読み返したい」というニーズをもう一歩進め、さまざまな販売方法を模索しています。
「たとえば、『藤子・F・不二雄セット』や『ドカベンセット』『島耕作セット』など、漫画家ごと、人気作ごとの全巻セット。出版社の編んだ全集とは違う視点でまとめ読みができる組み合わせとして、評判は上々です。同様に『野球漫画が好き』『歴史漫画が好き』など、ある特定のジャンルの漫画が好きな方もいらっしゃいます。こうしたお客様のニーズに応えるため、商品カテゴリの中に、『野球』『歴史モノ』『グルメ』『ヤンキー系』など、テーマごとに分けるコーナーも設置していきました」
Amazonなど、ネットの大手書店は単品買いが基本。セット売りという、大手とは一線を画す“強み”を見つけたら、その強みをさらに確固たるものにするため、さまざまなセット商品を考案し、提案し続ける。差異化を図るポイントを見つけたら、いかに自店の強みとして打ち出せるか考え、サイトに反映していく。こうした流れが、大手にはできないサービスを生み出すことにつながっていきます。
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自店の強みをより一層アピールしていくためには、大手にはできない集客方法を考えることも重要です。次回は漫画全巻ドットコムの販促活動について紹介します。
――ネットショップのエキスパートが斬る!――
ショップ構築、集客、決済などネットショップ運営に必要な機能がすべて標準装備された「ショップサーブ2」を提供するEストアー。カスタマー本部でさまざまあなネットショップに指南する役割りを担う山中洋一さんに、顧客心理を踏まえたショップ戦略について伺いました。
不況だからといって、中小規模のネットショップが一概に打撃を受けるとは限りません。反対に、不況になって家からあまり出かけなくなる傾向が強まることで、ゲームや雑貨など、一部の商材はむしろ売り上げが伸びているケースもあります。ただしどんな商材であっても、大手といかに差異化を図るかという点は常に考えるべきこと。「大手ゆえにできること」「大手ゆえにできないこと」が必ずあるので、そこを見極めるのが第一歩といえるでしょう。
異業種チェックは顧客心理の把握に効果大
大規模なネットショップの中には、商品点数が膨大ゆえにお客様を迷わせるサイトが少なからず存在します。あるキーワードで検索したら大企業のネットショップが上位に表示されたものの、サイトに飛んだら目的の商品がどこにあるか分からない。これでは、お客様のストレスもたまりますよね。
中小規模のショップだからこそ、お客様が何を求めているのか、その心理を読みながら、LPO(ランディングページ最適化)などを適宜実施して“求められているサイト”に改善していくことができるはず。それが差異化にもつながっていきますし、改善しようと思ったその日に変更できるのも中小ならではの強みです。
中小規模のネットショップなら、専門店化を考えましょう。たとえば、スポーツ用品全般を扱うネットショップがあるとしたら、客層や商品点数などを見極めたうえで、バスケットシューズだけを扱うお店だけをオープンする。軌道に乗ったら、ランニングシューズだけを扱うお店だけをオープンするなど、商材を絞る、あるいは、メーカーを絞るなどして専門店として特化していくわけです。すると、自分の売りたい商品が、お客様に明確に提示できるようになります。お客様がキーワード検索してきた際、求めていた商品をダイレクトに提供できるお店となれる点で、非常に有利です。
お客様は店に何を望んでいるのか、その心理を把握しておくためにも、自分自身が日頃からさまざまなサイトでモノを購入しながら研究する姿勢も必要です。特に、異業種のサイトをチェックしたり、実際に購入してみたりするのは有益です。同業種同士では「似たり寄ったりのことしかしていなかった」ということがよくありますが、異業種を見て初めて、取り入れるべきヒントが隠れています。
山中洋一:Eストアービジネス支援部マネージャー。アパレル、スポーツ用品店など、300店舗以上の店舗にコンサルティングを行なう。自身の卸売業や実店舗で仕事をした経験をもとに、商売人としてより高い意識を持って店舗運営を行なってもらえるよう、日々アドバイスに励んでいる。