およそ半年以上前、2009年8月4日のことは、今でも鮮明に覚えている。この日は、ニコンのプロジェクター・デジカメ「COOLPIX S1000pj」の発表日だった。出荷は翌月の9月中と言うことで、ありきたりのデジカメに飽き飽きしていた筆者のガジェット・マインドは大きく刺激され、衝動買いの虫はいやがおうにもムクムクと頭をもたげてきた。
一般のデジカメから見れば極めて特異なスペックを持ったS1000pjはウェブ上でも大きく注目を集めた。それが理由で多くの予約が入り過ぎたからか、本当の理由は定かではないが、実際の出荷が当初の9月から1ヵ月遅れの10月にずれ込んだ。
予約こそしなかったが、店頭に並んだ瞬間に「速攻買い」を狙っていた筆者は大きく肩透かしをくらい、衝動買いの虫がへなへなと倒れ込んでいった記憶がある。出荷後すぐの品薄感はアッと言う間になくなり、その後、数ヵ月、店頭やウェブショップには、潤沢な在庫があるにも関わらず、鳴かず飛ばずになってしまったという。
明らかに「パーティー&合コン・デジカメ」
筆者が気になったのは、ウェブサイトの商品説明だ。発表直後、メーカーの商品説明には「撮影した画像をプロジェクター機能を使って外出先でもその場で壁などに投映し、友人や家族などと一緒に観賞し、共有する」という説明があった。これが分かりそうで実はよく分からない。「観賞」や「共有」という言葉は、記者発表の資料には最適だが、S1000pjの楽しさは何も伝わってこないのだ。
ウェブ上の動画サイトに掲載されている日本のプロモーション動画も同様だ。プロダクトアウト※で、開発物語かハードウエア解説ビデオのようだ。対する海外版では、S1000pjがパーティで大活躍する様子が柔らかく表現されている。
間違いなくS1000pjは、「パーティー&合コン・デジカメ」なのだ。もちろん小会場での学術的な論文発表の助っ人としても、ビジネスプレゼンで使うセカンド・プロジェクター的価値も分かるが、それらはあくまで2番目以降の用途だろう。
※プロダクトアウト マーケティング用語で、企業側が主導で製品を企画して市場に投入するというやり方を指す。反対に消費者のニーズをくみ上げて商品を作るやり方を「マーケットイン」という。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである。
(次ページに続く)
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