Googleは朝食バイキング、Twitterは回転寿司
セミナーの口火を切ったのはモデリストでもある神田敏晶さん。基調講演として、これまでの「メディア」の歴史そのものを振り返った。古くはクロマニヨン人の壁画に始まる「メディア」をビジネス化した、重要な事業として紹介したのが百科事典の「ブリタニカ」だ。
「ブリタニカは毎週毎週届くシステムで、最終的に3巻が出来るというもの。今のディアゴスティーニのような形に近い。そのあとに情報を10倍にした30巻の全集が出たが、そのままでは高すぎるので誰も買えない。そこから(情報を)ローンで買うという考えが出来た」
とはいえ、百科事典は高価なもの。日本国内でそれを買えたのは、伊藤博文や新渡戸稲造といった「文化人」だけだった。彼らはそれを書斎に置き、知識を保持・披歴するためのツールにすることで、みずから知らず「宣伝」をすることになった。
そこから時代は移り、やがてデジタルの時代が訪れる。「辞書」メディアは「電子辞典」のようなデジタルメディアに移り、やがて「ウィキペディア」のようなソーシャルメディアに場を移していく。そこで変わるのは「ユーザー」そして「宣伝」の感覚だ。
「Twitter、Ustreamは2つとも『ユーザーが使い方を考えたもの』だった。ユーザーにすべてをゆだねてしまうというのが、これから必要になる考え」と話した上で、Googleを「朝食バイキング」、Twitterを「回転寿司」にたとえたユニークな説を展開した。
「『自分をGoogle化して効率化する』というのは、朝食バイキングのような考え。必要なもの(情報)だけを集めれば豪華な朝食になるが、取りに行かなければ何も手に入らない。一方の『Twitterのタイムライン』というのは回転寿司のようなもの。たまたま見た情報の中から、知りたいものを取りに行けばいい」
また、これまでのウェブメディアの進化を「親殺しの歴史」と表現する神田さんは、今は「TwitterがGoogleを殺そうとしている」時代だと話す。RSSフィードや「検索」というGoogle的な考え方はTwitterなどのソーシャルメディアに還元されていくと語った。
そうしてこれから、メディアをユーザー自身が作りはじめるようになると、企業もユーザーと同じ目線を持つ「宣伝」をする。そこで重要なのは「みなさん」ではなく、「あなた」と語れる真摯な姿勢なのだと神田さんは話す。そのとき担当者に必要なのは「人としてのポジティブな姿勢」。良い企業は「正直な人」から生まれる時代だとして、講演を終えた。
