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次世代を支えるシャープのLED技術(後編)

LED AQUOS──世界の亀山で見た高画質を支える光

2010年04月08日 11時00分更新

文● 遠藤諭、ASCII.jp編集部

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遠藤諭が聞く、LED AQUOS開発の背景

 それでは、白色LEDを使ったAQUOSが登場した背景は何だろうか?

高倉 「(数あるLEDバックライト搭載テレビの中でもXSシリーズは)RGB3色のバックライトに加え、RGB独立にエリアコントロールする技術まで入れた唯一の製品だと思いますが、本当に最高級のモノを求める人向けです。LEDの良さを一般のユーザーのために伝えたい。そう考えて開発したのがLED AQUOSなんです」

 そんな風に話すのは、LED AQUOS開発のシステム設計リーダーを務めたシャープ AVシステム開発本部 商品開発センター 第一開発室 副参事の高倉 英一氏だ。

LED AQUOSのシステム設計リーダー高倉 英一氏

高倉 「XS1はNTSC比で150%という広い色再現範囲を活かして、強烈な赤を出しましたが、白色LEDでも、EBU比でほぼ100%の色域をカバーできています。重要なのは単に色域を広げることではなく、どの部分を広げて記憶色に近付けるかということです」

 LED AQUOSでは、LEDに含まれる蛍光体のバランスとUV2Aパネルのカラーフィルターのマッチングをとり、最適な画質が得られるようにしている。シャープは液晶パネルのメーカーという印象が強いかもしれないが、同時にLEDの製造メーカーでもあることが有利に働いた。

 高倉氏によると、ホワイトLEDを利用したAQUOSを出すと決まったのは、昨年1月とのこと。1年にも満たない短期間で製品を市場投入できた背景には、液晶テレビを作るために必要なデバイスをすべて自社で調達できる点も大きかったという。

高倉 「UV2Aは非常に透過率が高く、バックライトの明るさそのものを低くして、黒を締められるというLEDの特徴と、スペックアップのベクトルがうまく合っていました。AQUOS LX1はエリア制御なしでも200万対1の高コントラストが得られます。UV2Aパネルの持つ特徴をLEDを使って最大限に生かした形ですね」

単にLEDバックライトにすれば高画質化する。話はそんなに単純ではないようだ

 開発に当たっては、まず最初に高い色の純度を得られるLEDの蛍光体を新規に採用。その特性を最大限に生かせるカラーフィルターの仕様をシミュレーションで決めていった。

高倉 「(LEDの蛍光体を先に決めたのは)選べるパラメーターの自由度に制約があるためです。一方液晶パネルのほうは、これまでの技術蓄積があるので、カラーフィルターの材質に何を選択するかでより細かなパラメーター調整が可能です」

 素人考えでは単にバックライトをLEDにすれば、画質が良くなる。そんな風に考えてしまいがちだが、LED、カラーフィルター、これに画像処理を加えた3者が一体となって初めて感動を生む画質が得られる。そんなに簡単な話ではないことが分かる。


敏感に反応し、細かな制御が可能なLED

 LEDバックライトは、主流だったCCFL(冷陰極蛍光ランプ)に対して、余計な波長成分(ノイズ)が少なく、色の純度が高い。短時間で安定した明るさが得られるという特徴もある。

 色の純度の高さがウリのLEDだが、実は表現できる色域自体はCCFLも決して狭くはない。カラーフィルターや画像処理エンジンの追い込みによって、CCFLでも高画質化を目指すことは可能だ。

 光源の設計を担当したAVシステム開発本部の横田 匡史氏は以下のように話す。

光源の開発に携わった横田 匡史氏

横田 「LEDを使うメリットのひとつは、よりコンパクトなサイズが実現できる点にあると思います。CCFLではどうしても回路が大型化してしまいます。これは特に比較的小型のテレビを作る際に利いてきます」

 LED AQUOSでは、明るさセンサー、色センサー、人感センサーを搭載し、環境光に合わせた色合いの選択や、人の動きを感知した省電力機能などに応用している。

 こういった細かな色制御に加え、レスポンスの速さも特徴だ。スリープからのキビキビとした復帰などでもLEDの持ち味は生きる。LEDバックライトは、LED AQUOSの画質はもちろんのこと、製品の使い勝手にもいい影響を与えている。

横田 「色が立ち上がるまでの時間(応答速度)そのものには、大きな差がないのですが、温度特性が違ってきます。(寒い部屋で蛍光灯を付けたときをイメージすると分かりますが)CCFLは点けた直後が暗く不安定になります。また点灯時間を1/10以下に絞ったあたりからチラチラしてくる。LEDは無限に暗くできるんです。シーンに応じて明るさを変え、黒の表現を重視したり、倍速駆動のために細かに点滅させて残像感を減らすと言った制御が容易になります。制御のしやすさという観点では、LEDのほうがベターと言えます」

 また、デジタルサイネージなどテレビの周辺分野で利用する場合のメリットしては縦置き/横置きの両方に対応しやすいというものがある。CCFLは中の水銀が落ちてきてしまうため、縦置きすると、バックライトの寿命は短くなってしまう。

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