縦画面利用では色変化が気になる
ビュワーとしてでなく「作成用」としてお勧め
タブレットといえば、最近は電子ブック端末が話題だ。今回はせっかくなので、米Amazon.comが公開している「Kindle for PC」をインストールして、eBookを読んでみた。このソフトはWindows 7のマルチタッチに完全対応しており、指先だけですべてが使える。Amazon.comから購入した本しか読めないが、その代わりソフトは無料で配布されている。
Windows版やMac OS版のKindleは、もちろん使ったことがあるし、iPhone版も日常的に利用している。だが、X201 Tabletでのマルチタッチでの操作感は、それら以上にいい。特にページ送りや文字拡大のスムーズさと、画面の広さにともなう読みやすさはなかなかだ。パワフルなマシンを使っているがゆえの「余裕」が感じられる。
他方で、パソコンとして使っている時は感じられない「クオリティー」の問題も、こういった使い方をすると見えてきてしまう。例えばタブレットモードにして使っていると、このディスプレーは視野角による色の変化が、思いのほか大きいようだ。特にディスプレーを縦に持って使う際に、左右にディスプレーを動かした場合に、色変化を強く感じる。
クラムシェル型では「横」にして使う上に、視線の角度はそれほど変化しない。だからあまり気にならないのだが、手に持ってタブレットモードで使う場合、角度が変わりやすく、色変化がとても気になる。
元々液晶パネルは、電子ペーパーに比べて目が疲れやすい。そこにさらに色変化があると、目に厳しく感じてしまう。この色変化はおそらく、タッチセンサーを内蔵したためのものだろう。X201 Tabletのタッチセンサーは感圧式で、iPhoneなどで利用されている「静電容量式」に比べて透過度の点で不利だ。かといって静電容量式では、タッチペンに使う電磁誘導式との棲み分けが難しい。
文字や図版を書くというビジネス面での実用性を考えると、精度の高いペンが使える電磁誘導式は必要なものだろう。とすると、現状ではこの制約はしょうがないところなのかも知れない。そういう点を考えても、X201 Tabletはコンテンツビュワー的な製品ではなく、文書作成向きの「タッチ対応パソコン」ということになるだろう。
Windows 7の手書き入力システムは、巷で思われているほど悪いものではない。また、紙に書くようなアイデアメモをタブレットモードで書いて残しておくのは、非常に便利な機能だ。これらの機能は小さな「マルチタッチ対応タッチパッド」では本質がわからない。X201 Tabletでならば、そういった良さを感じられる。
パソコンを「コンテンツビュワー」として使う比率の多い人には、X201 Tabletは単なる「高いノートパソコン」だろう。だが、文書やアイデアを処理するための機器として考えると、X201 Tabletは十分お勧めできる製品だ。少々重いし、バッテリー持続時間も長くはないので、純粋なモバイルノートとしてはつらいのが難点だろうか。
- オススメする人
- ・ノートパソコンとしての性能にこだわる人
- ・メモや文書作成向けに「タブレット機能」が欲しい人
ThinkPad X201 Tablet の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-640LM(2.13GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 12.1型 1280×800ドット |
ストレージ | HDD 320GB |
無線通信機能 | WiMAX、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 2.1 |
インターフェース | USB 2.0×3、アナログRGB出力、モデム、10/100BASE-TX LANなど |
サイズ | 幅295×奥行き228×高さ26.5~33.3mm |
質量 | 約1.67kg |
バッテリー駆動時間 | 約3.8時間 |
OS | Windows 7 Professional 32bit |
価格 | 27万900円(本稿執筆時点の直販価格 24万6120円から) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)。
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